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〜最後の表現グマ〜 ラショウグマ物語2

二 '生ける本グマ 似せるラグマを走らす'


「ああー沈む、沈むよぉー、、、沈んだっ!」

しかし沈みません、、、??
どうした事でしょう!?

なんと浜に打ち寄せられていたではありませんか!
ちょっとバツが悪くなってラショウグマは大きく吠えてみます。

「グオー、ここは無人島かーー!?」

見れば確かに
『無人島』
と立て札が立っていました。

「やりにくいなー!」

しかしただの無人島ではないようです。
なんと自動販売機があるのでした。

もちろんラショウグマとはいえ、この事態の
いくつかの矛盾に疑問がわかなかったわけではありません。

しかし、その魅力的な商品陳列に、
理性を失ってしまったのでした。
「シャケ缶」「柿とあけびのアラモード」
「はちみつジュース」などなど。
それらは明らかにクマ向け。

「グフォーーっ!小銭!小銭!」
ラショウグマは小銭を求めて島を走りまわるのでした。 
「小銭はないかーーっ!グフォー!」

それほど大きくない島とはいえ、
もう何周走ったでしょう。

無人島で小銭を探すことの難しさ。

ラショウグマはさすがに少し疲れ、
呼吸を整え、ようやくやや冷静になりますと、
その時、ある考えが浮かびました。

『クマ向けの自販機が、
そもそも小銭を求めているものだろうか』

「グフォー!クマ的な小銭がこの島に、、、あるはずだ!」

ラショウグマは確信しました。
「はず」の根拠は何もありませんでしたが。 

「グフゥー、クマ的な小銭、クマ的な小銭、、、」

ラショウグマは草むらをクンクンと嗅ぎ分けていました。
そうしないとさっきの普通の小銭を探すシチュエーションと、
あまり差が出ないからでした。

というより小銭にクマ的がついた分、
むしろお題が難しくなったような気さえするのでした。

「グフゥー、、、自販機で売ってる
シャケ、柿、あけび、はちみつは
すでに封じられているしな、、、」

ラショウグマは頭を抱え込んでしまいました。

その時です。
何の音でしょう!?
ガサ、ガササと草が激しく揺さぶられる音がします!
「グフォ?」
突然、黒い大きな物が目の前に立ちはだかりました!

「グフォーーっ!クマだああああああ!! 

クマだっ!クマだっ!クマが出たーー!」

夢中で走り、逃げたのでした。

島を半周ほど逃げて来たところでようやく、

「オレもクマじゃねーか!」

思い出し、立ち止まったのでした。
相手は追いかけては来なかったようです。

「まあ、しょせん付け焼き刃のラショウグマ。
本グマにかなうわけあるまい、、、しかし、、、」

そう。しかしでした。

「おそらく高い確率でヤツはあの自販機を使う。
それでクマ的小銭の正体がわかるぞ、、、」

不敵にラショウグマはグフォフォとほくそ笑むのでした。 

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