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#9 「麻薬の売人の見分け方講座」

どうも。ペンゼルと申します。
今回は、自作のドラマ脚本「人生の絶対解」の第9話を投稿します。

〈登場人物〉

水梨祐菜(25) キャピュレット高校の英語教師。
森波良太(25) モンタギュー高校の体育教師。
日神準一(28) モンタギュー高校の数学教師。
香倉和希(25) キャピュレット高校の生物教師。
有明正範(26) モンタギュー高校の化学教師。「マサ」と呼ばれている。

東山(45)警察官。
西森(24)警察官。東山の部下。

日奈(24)

店主

〈本編〉

T「麻薬の売人の見分け方講座」

◯ニコニコクリーニング・中(朝)
良太、長袖シャツを手に、入店。
カウンターに、店主が一人。金正恩に顔や髪型がそっくり。
良太「あ、どうも。このシャツのシミ抜きをお願いしたくて…」
と、店主にシャツを渡す。
店主、シャツを確認して
店主「ああ、これくらいのシミなら、この場ですぐに取れますよ。良ければ今、お取りしますけど…」
良太「じゃあ、お願いします」
店主「そこの席でお待ち下さい」
店主、その場でシミ抜きを始める。
良太、店内のイスに腰掛ける。
すると、一人の客が入店。
客「(店主に)おいっすー」
店主「奥さん、帰ってきたか?」
客「帰ってきてたら、こんなシワシワのシャツなんか着てないだろ」
店主「まあ、そうだな」
客「ところで、あっちの商売はどうだ?」
店主「まあまあってとこだな。今日の3時にも取引があるんだ。例のブツのな」
良太M「例のブツ? 例のブツって何?」
客「取引相手はどんな奴なんだ?」 
店主「ネットの掲示板で知り合った男でさ、ソイツとは今回で2回目の取引だ」
良太「?」
店主「ソイツさ、やけに気前良くて、今回は8キロも買いたいと連絡してきた」
客「8キロも? そんなに? すっかり、あれの虜になってるやがるな」
良太M「虜になる?」
店主「こっちは儲かるばっかりさ」
客「色んな意味で魔法の粉だな」
良太M「魔法の粉?」
客「ま、あのブツを一回でも使えば、病みつきになるからな」
良太M「病みつきになる? あ! もしかして!」
店主「(良太に)お客さん、シミ抜きできましたよ」
店内に、良太の姿はない。

◯正範の部屋・リビング(朝)
玄関チャイムが鳴る。
正範、ドアを開ける。
訪問者は、良太。落ち着きがない様子。
良太「僕の人生、もう終わりだ」

◯同・同(朝)
リビングには、良太と正範の二人。
正範「何? 麻薬の売人?」
良太「さっき、ニコニコクリーニングっていうクリーニング店に行ったんだ」
正範「ニコニコクリーニング? ああ、あの金正恩が切り盛りしてる店か?」
良太「あの金正恩、麻薬の売人なんだ!」
正範「何でそう思う?」
良太「だって、例のブツとか、魔法の粉とか、病みつきになるとか言ってたんだよ! 絶対、麻薬のことだよ!」
正範「考え過ぎだ」
良太「いいや、僕は知ってしまったんだよ、知ってはいけない真実を」
正範「それで、俺にどうして欲しいんだ?」
良太「このこと、警察に話したほうがいいかな?」
正範「警察は動いてくれないだろ」
良太「いや、きっと動いてくれるよ。だって、麻薬の売人だよ」
正範「…ムリだな」

◯和希の家・庭(朝)
和希と正範、バーベキューコンロを組み立てている。
そこへ、祐菜がやって来る。
祐菜「あれ? 良太は来てないの?」
正範「用事があるとか言って、どっか行ったよ」
和希「それより見てくれ、このバーベキューコンロ買ったんだ。どう思う?」
祐菜、何か別のものを見つけて
祐菜「きゃー! 可愛い!」
と、花壇へ向かう。
和希「可愛い? 見てみろ、この完璧なステンレスのボディ。どう考えてもカッコイイだろ」
一匹の子犬が花壇に穴を掘っている。首輪と服を身につけている。
祐菜、その子犬を抱き抱える。
祐菜「違うわ。この子犬ちゃんよ」
和希「何だ、その犬?」
正範「服を着てるから、きっと飼い主がいる。多分、迷子になったんだ」
和希「ちょっと待て」
と、子犬の首輪を調べる。
和希「首輪に住所が書いてある」
正範「なら、そこに届けてあげよう」
祐菜「待って。その前に、この子の名前を決めましょ」
和希「名前? 何で?」
祐菜「(子犬に)そうねえ、あなたのお名前は…フランボワーズちゃん!」
正範「メスっぽい名前だな」
和希、子犬のアソコを確認する。
和希「コイツ、オスだぞ」
祐菜「イイじゃん、フランボワーズで」
和希「もっとカッコイイ名前にしろ」
正範「例えば?」
和希「さあ、バーベキューコンロとか」

◯警察署・オフィス 
良太、オフィスにやって来る。
東山(45)、デスクで書類の整理をしている。
良太「あの、すみません。ちょっと、お話いいですか?」
東山「どうぞ」
良太「実は僕…麻薬の売人を見たんです」
東山「(平然と)なるほど」
良太「あれ? 驚かないんですか?」
東山「もう慣れっこだよ。この間も、宇宙人を見たっていう通報があった」
良太「多分それ、僕です」
東山「あれ、君だったのか?」
良太「それで、麻薬の売人のほうは捜査してくれます?」
東山「捜査するのは無理だ」
良太「どうして?」
東山「正直言って、君の話は…その…信用できない」
良太「そんなぁ。警察は市民の味方じゃないんですか?」
東山「宇宙人に助けてもらえ」
そこへ、西森(24)がやって来る。
西森「東山さん、聞いてくださいよ」
東山「どうした、西森」
西森「今朝、ユニコーンを見たんですよ!」
東山「彼(良太)と気が合いそうだな」
西森「(良太を見て)こちらは?」
良太「実は僕、麻薬の売人を見たんだ」
西森「麻薬の売人?」
東山「ほら、覚えてるか? 宇宙人を見たっていう通報あったろ。彼なんだ」
西森「…彼、宇宙人なんですか?」
東山「違う、そうじゃない」
良太「僕の話が信用できないらしい」
西森「(東山に)何で信用できないんですか?」
東山「俺がオカシイのか⁉︎」
西森「(良太に)それで、その麻薬の売人っていうのは、どんな奴なの?」
良太「ニコニコクリーニングっていう店を知ってる?」
西森「ああ! まさか、あの金正恩? 前から何か怪しいと思ってたんだ!」
東山「おい、ちょっと待て。彼のこと信用するのか?」
西森「もちろんですよ!」
東山、唖然。
良太「市民の味方、見つけました」

◯公園 
祐菜、ボールを持ってしゃがみ込んでいる。その対面には、例の子犬。
祐菜「いい? 今から、このボールを投げるから取って来るのよ」
祐菜、立ち上がり、ボールを投げる。
子犬、走っていく。
そして、空き缶を咥えて戻ってきて、祐菜の前に置く。
祐菜「それじゃないわ。でも、可愛いから許す!」
そこへ、和希がやって来る。
和希「おい、祐菜! 何やってる?」
祐菜「フランボワーズちゃんと遊んでるの」
和希「なに呑気に遊んでるんだ。飼い主に届けなきゃいけないだろ」
祐菜「もう少しだけ遊ばせて」
和希「ダメだ。今すぐ行くぞ」
祐菜「…分かったわ。ボール拾ってくるから、ちょっと待ってて」
和希「早く行ってこい」
祐菜「ボールを取りに行くなんて、私が犬みたいね」
と、ボールを拾いに行く。
日奈(24)、子犬の前に現れ、しゃがみ込む。
日奈「きゃあー! 可愛い!」
と、子犬を撫でる。
日奈「(和希に)抱っこしてもいい?」
和希「え? ああ…良いけど」
日奈、嬉しいそうに子犬を抱き抱える。
和希「君、犬が好きなの?」
日奈「ええ、もう大好きよ」
和希「…」
日奈の前にしゃがみ込む和希。
和希「良かったら、一緒にコーヒーでもどう?」
×××
祐菜、ボールを持って戻ってくる。
辺りを見回すも、誰もいない。
祐菜「フランボワーズちゃんは?」

◯市街地 
良太と西森、警察署から出てくる。
そこで、正範とバッタリ出会う。
正範「おお、良太」
西森「(良太に)知り合い?」
良太「友達なんだ」
正範「それで、警察に話したのか? その…例の件について」
良太「あの金正恩が麻薬の売人ってことなら、もう話したよ」
西森「(良太に)彼も、このこと知ってるの?」
良太「ああ」
西森「(正範に)安心してくれ! これから早速、ニコニコクリーニングに突撃するんだ! もし本当に麻薬の売人なら、絶対逮捕してやる!」
正範「そ、そうか…」
良太「僕たち、もう行かないと」
西森「では、良い一日を」
西森、パトカーのモノマネをしながら去って行く。
良太「ホント頼もしいよ」

◯カフェ・外 
テラス席。
和希と日奈、向かい合って座っている。和希は子犬を抱いている。
和希「へえ〜、君、介護士なんだ」
日奈「すぐそこの老人ホームで働いているの」
和希「そこのジジイたちは、さぞかし、しぶとく生きてるんだろうね」
日奈「私の話より、あなたのワンちゃんの話がしたいわ」
和希「ああ、コイツのこと? 何でも聞いて」
日奈「いつから飼い始めたの?」
和希「えっと…3ヶ月くらい前かな」
日奈「名前は何ていうの?」
和希「え、名前? ああ…えっと…コイツの名前は…バーベキューコンロ」
日奈「バーベキューコンロ?」
和希「カッコイイ名前でしょ?」
そこへ、祐菜がやって来る。
祐菜「やっと見つけた! あちこち探し回ったのよ!」
日奈「どなた?」
和希「職場の同僚だ」
祐菜「何で勝手にフランボワーズちゃんを連れて行くのよ?」
日奈「フランボワーズちゃんって何?」
祐菜「この子(子犬)の名前よ」
日奈「この子の名前、バーベキューコンロじゃないの?」
祐菜「バーベキューコンロ?」
和希「(日奈に)フランボワーズっていうのは、彼女(祐菜)が勝手に付けた名前なんだ」
祐菜「フランボワーズちゃんを飼い主に届けに行くんじゃなかったの?」
日奈「飼い主に届けるって、どういうこと? (和希に)あなたが飼い主じゃないの?」
祐菜「彼は飼い主じゃない」
日奈「(和希に)私を騙したの?」
和希「ちなみに、彼女(祐菜)も飼い主じゃない」
日奈、呆れて、その場を去っていく。
祐菜「何で、あなたが飼い主ってことになってるの?」
和希「彼女は犬が好きなんだ。そして、俺の足元に子犬がいた。それが理由だ」
祐菜「ナンパするために飼い主のフリしたってこと?」
和希「誰だってそうする」
祐菜「あなたの場合は偽善者よ」
子犬、祐菜が喋っている最中に何処へ去っていく。
祐菜「私がフランボワーズちゃんと遊んでる時は、飼い主に届けなきゃいけないとか言うくせに、自分はフランボワーズちゃんをナンパの道具として利用してるじゃない!」
祐菜と和希、子犬が居なくなっている事に気づいていない。
和希「分かった、俺が悪かったよ。今から飼い主の所に届けに行こう」
祐菜、子犬を探し始める。
祐菜「? あれ? フランボワーズちゃんは?」
和希も探し始める。
祐菜「フランボワーズちゃんがいない!」
和希「…マズイな」

◯ニコニコクリーニング・中 
店内には、店主が一人。カウンターで新聞を読んでいる。
そこへ、西森と良太が入店。
店主「いらっしゃい」
と、新聞を片付ける。
西森「客として、ここに来たわけじゃないんです。あなた、こちらのクリーニング店の店主だそうで?」
店主「そうだが」
西森「でも実は、あなたには、裏の顔があるんじゃないんですか?」
店主「裏の顔?」
西森「あなたはクリーニング店の店主の他に、別の顔を持ってるはずです」
店主「(察して)ああ! ハハハ! そういうことか」
西森「白状するんですね?」
店主「一応言っておくが、俺は北朝鮮の最高指導者ではない」
西森「なるほど、そうやって誤魔化すつもりですね。それでは、彼(良太)のことは覚えていますか?」
店主「(良太を見て)ああ! 覚えてるよ。ちょっと待ってろ」
と、カウンターの下から物を取り出そうとする。
ビクッと身構える西森と良太。
店主、一枚のシャツを取り出す。
店主「このシャツ、兄ちゃんのだろ? シミ抜き、できてるよ」

◯同・同(回想)
良太「あ、どうも。このシャツのシミ抜きをお願いしたくて…」
と、店主にシャツを渡す。

◯同・同(回想終わり)
良太「(思い出して)あ、どうも…」
と、シャツを受け取る。
店主「兄ちゃんも、警察なの?」
西森「彼は、あなたの本当の正体を見破った男です」
店主「俺の正体? ぜひ知りたいね」
西森「では、申し上げます。我々は知っているんですよ。あなたが、麻薬の売人であることを」
店主「…ナニ?」
西森「あなたは麻薬を売っている、そうでしょ?」
店主「麻薬って何のことだ?」
そこへ、日神が入店。
日神「何で警察がいるんだ?」
良太「日神」
西森「また知り合い?」
良太「同僚なんだ」
店主「(西森と良太に)ちょっと、どいてくれるか。これから取引なんだ」
西森・良太「取引⁉︎」
日神、カウンターの前に来て
日神「例のアレを」
店主「あいよ」
と、カウンターの下から、白い粉の入った袋を取り出す。
西森・良太「⁉︎」
日神、店主に金を渡す。
良太「やっぱり! 麻薬の売人だ!」
西森「現行犯で逮捕する!」
日神「逮捕?」
店主「一体何なんだ?」
西森「これはどう見ても麻薬だろ」
日神「? これは洗剤だ」
西森・良太「せ、洗剤?」
店主「この店で使ってる洗剤を一般の客に販売しているんだ」
日神、袋を開けて
日神「ほら、匂いを嗅いでみろ。洗剤の匂いがするはずだ」
西森、袋の中の匂いを嗅ぐ。
良太「どう?」
西森「…洗剤だ」

◯大通り(夕方)
店が立ち並ぶ歩道を歩く良太と西森。良太、シャツを持っている。
西森「そのシャツ、シミ抜きしてもらったの?」
良太「ああ、そうなんだ」
西森「仕上がりは?」
良太、シャツを確認する。
良太「新品同様」
西森「やるな、ニコニコクリーニング」
良太、すぐ近くにいる子犬を見つける。
良太「うわ、見て! そこに可愛い子犬がいる!」
西森「! おい、嘘だろ! ケルベロスじゃないか!」
子犬を抱き抱える西森。
西森「(子犬に)何でこんな所にいるんだ、ケルベロス」
良太「ケルベロス?」
西森「この子、俺が飼ってる犬なんだ」

◯同(夜)
和希、歩道で子犬を探している様子。
そこへ、祐菜が駆け寄ってくる。
祐菜「フランボワーズちゃんいた?」
和希「ダメだ、いない」
祐菜「私、今度はあっちを探してみるから、あなたは、そっちを探してみて」
和希「分かった」
二手に別れる祐菜と和希。

#10に続く

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