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「下弦の調べ」

夕暮れ
ゴンドワナのような
空の色とその下の黒い森の色
行ったことも
見たこともない
ゴンドワナだけれど
その夕暮れは
なぜか
小さい頃手にした
グリコキャラメルの箱を彷彿とさせる
ほぼ連想のセットとして
ボンタン飴の箱をも
ふいにすれ違うその時
校舎のチャイムが鳴り響き
読み過ぎた漫画のように怯える
知らない通りの
宵の近づきにまるで鎮魂の鐘
休日の夕暮れに校舎のチャイムが鳴る
生徒はいなくても、鳴る
そうだ、鳴ったとしてもおかしくはない
校舎にしたら
なにも驚く必要などないシステム機能
そういえば
目の前の小学校は休日にチャイム鳴ったりしたかしら
聴こえたためしがない
三日月が二重底に黄色に輝く
坂の小上がりに
丸い輪郭がくっきりと見えた
下弦の三日月
琵琶の音か
月琴の音か
邪を破る音
低く浮かんでいる
今宵は高く昇る気もなく
もう沈む気か
見つめていると
ずんずんと沈んでゆくようにブレる
右側にいた月は
左側でしたり顔
怪しく濃い山吹色の光を増していた
月が早仕舞いの夜は
星屑か宝石の結晶のように
黒の天鵞絨に縫い付けられていた
やあ、オリオン
一昨日も会ったばかりだね
ああ、オリオン
明るい街の空に君は
見えない君はいないのと同じだ


 

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