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UE:ハウリング・ロア ep-3

「なんで俺に依頼したんだ?」
「あー……」

 見渡す限りの岩山の断崖。その頂点に三つ首狼をその身にあしらった冥王と大太刀を佩いた黒武者は居た。黒武者の騎手、ハガネの問いに答えを濁すクライアントであるロッカー、リキヤ。

「どいつもこいつもスカウトばっかりでよ、こっちの話なんか聞きやしねぇんだ」
「人気者だな。で?」
「強くてそういうのに興味なさそうなのアンタしかいなかったんだ」
「ふうん、ま、英断だな。実際興味はない」
「即答ありがてぇが全く興味ねえのもミュージシャンとしてのなんかにかかわるぜ」
「いい歌だったら報酬でデータ買うさ」
「そいつはどうもありがとさん」

 とりとめのないやり取りを続ける二人。ミッションの打ち合わせはとうに済んでいる。リキヤはここでライブ配信を行い、ライブの間ハガネは邪魔者を全て斬る、それだけだ。実にシンプルな話だ。

 問題は相手の物量である。リキヤの語るところによるとライブの度にスカウトを称する強襲は激しさをまし、複数クランの競合と相まって無数の敵機が来襲するような状況となっていた。

「スカウトに応じなきゃいつまでも続くって訳か」
「おう、そうだぜ。もっともそんな脅しにホイホイ応じてたら男が廃るってもんだがな!」

 威勢のいい返しに苦笑するハガネとカナメ。二人は乗騎のコクピットを複座に変更し、同乗していた。支援AIであるタタラによる補助は生命維持と搭乗員保護を最優先で行われるため、別途分析要員としてパートナーが搭乗する事は珍しくはない。

「悪い人じゃなさそうですね」
「そうだな」

 実際気前も気風もいい。大絶賛人気のロッカーとのことだが、リキヤはハガネ達に対しておごった素振りさえ見せなかった。

 ひたすらに歌に情熱を込める。その一本筋の通った男気にハガネもまた共感する。お互いの求める道こそ違えど、その頂点を目指して生きているのは共通している。そう感じたのだ。

「……っ!」

 不意に会話を打ち切ると黒武者は居合にて抜刀、斬撃が真空めいて遠く離れた岩ごと隠れた敵機、岩山迷彩装甲巨人を両断した。

「来やがったぞ!ライブ開始まであとどれくらいだ!」
「もう間もなくだ!頼んだぜランカーさんよ!」
「任されて!」

 獣めいた直感で黒武者はその身に搭載したクナイ・ダートを掴むと忍者めいて投擲、三本まとめて投げ放たれたそれはステルスで岩山に擬態していた灰色迷彩装甲巨人の頭部を粉砕、擱座させた。

 着弾を確認する事なく黒武者は跳躍、空中で身をひねりながら冥王を跳び越すと着地様に忍び寄ってきた一機を縦一文字に両断。返す太刀で間近なもう一機を胴薙ぎに刎ねるとそのまま踏み込んで切り上げ、三機目をハエを払うように切り裂く。

 瞬く間に七機が撃墜、光の粒子となって拡散していく。
黒武者の奮闘を気に掛ける事無く地獄の冥王は紫電の雷光まとうエレキギターを構え、咆哮をあげた。

 戦いが、始まった。

【UE:ハウリング・ロア:ep-3 終わり ep-4へ続く

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