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Cahier 2020.11.08-1

元気と健康だけが取り柄なのに、この週末は眼精疲労と慢性的な肩こりをこじらせて急遽ヘッドマッサージに駆け込みました。散歩やランニング、ストレッチにヨガ…人並みの運動は心がけているつもりなのに、疲労はいつの間にか積もり積もるらしいのです。それがある日突然キャパオーバーになって、ガーンと症状が出てくるあたり、寄る年波には敵わぬよ…喫緊で見つけるべきは旦那じゃなくて主治医か?!と、急にしょぼしょぼした気持ちになってきます。

ジェーン・スーさんの『今夜もカネで解決だ』、AERA連載時から毎回楽しみにしていたコラムですが、なるほど、マッサージ店というのは癒しの場であると同時に社会の写し絵のようです。時々お世話になっているこのお店はヘッドマッサージ専門店で、新橋という場所柄、サラリーマンのおじさん客も多いとのこと。決してスペースが広いわけではないけれど、タイムシフトを上手に組んでいるのか、待合室で他のお客さんと顔を合わせたことはほとんどありません。ヘッドマッサージとは髪はもちろんメイクも崩れるものなので、人目を気にしなくていいようにとの配慮は女性客はもちろん、疲れて弱り切った人間にはありがたい限りです。

施術者も全員女性で、おそらく男性はいないんじゃないかと思われます。ヘッド専門なので指圧や全身マッサージのように力は要らないし、男性よりも女性の細く柔らかな指の方が向いているからかもしれません。特に頭や首は細かい神経が集中する箇所なので、あまり力が強いと揉み返しが来ますが、ここでそのような憂き目に遭ったことは一度もありません。マッサージ店を謳ってはいるものの、技術としては相当繊細で鍼灸に近いからなのか、施術者が女性でかつ日本の方しかいないのも特筆的と言えばそうかな。マッサージで疲れを癒すというより治療を施してもらっているような、まるでクリニックのような雰囲気です。

今回お願いしたのは、ヘッドマッサージ&小顔マッサージ75分コース、9000円弱。決してお安くはないものの、技術力はたしかなので納得のお値段です。類似したものに眼精疲労改善コースがあります。一見こちらの方が合目的的な気がしますが、内容を聞くと、小顔コースの方はクリームをつけて顔周りも合わせてほぐすので、眼精疲労から表情筋の強ばりまで症状がある場合はこちらがおすすめとのこと。よって、こちらにしました。別に小顔になりたかったわけじゃありませんが、良い判断だったと思います。目の奥の鈍痛が和らぎ、ちゃんと眼球が動き、呼吸もしやすくなるという快挙!帰り際、温かいウーロン茶をいただきながら、ここまでひどくなる前に来た方がより高い効果が得られますよ、と諭されました。ごもっともなことですが、ほんとに急にガクッとダメになるときもあるんですよね、おそろしいことに。30代も半ば近くに差しかかり、もう若くはないんだなぁと初めて身をもって知りました。ぴえん。

施術してもらいながら夢うつつに、パスカルの言葉が思い返されました。

彼らは大まじめに休息を求めていると思っているが、本当は奔走することしか求めていない。彼らには、ある密かな本能があり、それが彼らを促して、外部に気晴らしと活動を求めさせるが、それは彼らが絶えず不幸の感覚にさいなまれているからだ。―パスカル『パンセ(上)』塩川徹也訳、岩波書店

たしかにコロナ以降、色々な変化が体感としてありましたが、パスカルが言うように「人間の不幸は、部屋の中で一人で静かに座っていられないことに由来する」ということ、ほんとこれに尽きると思います。健やかでご機嫌良くおうちにいる、ただそれだけのことがなぜこんなにもミッション・インポッシブルなのか。とはいえ、たった一つのこの不幸な真実のために、ニューノーマルとかウィズコロナとか、忙しなく変化し続けなければいけないことに対して、そろそろ疲れた!と言ってもいいのかもしれません。TSU・KA・RE・TA!!

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