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インターネットで全部分かるようには絶対にしません

カミーノなう。
(スペイン巡礼旅。サンディアゴ大聖堂までの300キロを2週間で延々歩く)

今日はこんな街に泊まってます。


初日の、ダリ感ある景色

からの、お台場ヴィーナスフォートの元ネタ感のある街

からの、アイダホかメキシコ感あるハイウェイサイド

からの、なんかやけくそみたいに青い空

からの、ハイジ感ある村

など、景色の移り変わりがすごい。まだ1週間だぞ。
昨日は、2日目に道中で出会って以来なんとなく行動をともにしている韓国の男の子と二人で、「お城みたいなホテル」に泊まったが、なにもなかった。

ほらお城みたいなホテル。お城みたいなホテル。

で、写真ですよ。
「インターネットで全部分かるようには絶対にしません」という言葉が先日TLに流れてきたのだが、今Wi-Fiが得られないからどんな文脈の誰の言葉か分からないのだけれど、安心しよう、インターネットで全部分かるようには絶対にならない。

しかし、「ネットじゃ何も分からない。やっぱ実際に体験してみないと」と、何でも安易に言う奴は大嫌いだ。(そういや「ネットで知り会った人なんて信用できない」とか言ってた人はオフ会やペアーズが普通になった今どうしてるんすかね?)
「写真じゃ分からない。実際に行ってみないと、その場の匂いとか、空気とか」と言う人は、写真の画質が良くなって、あるいはVRが発達してその場の匂いとか空気まで再現出来るようになってしかもそれがネットで手軽に体験できるようになった時にはどういう意見を持つんだろうか。匂いつき、温度つき、湿度つきGoogleマップみたいな、そういうものが。(そういやVR失禁体験て数週間前に話題になってましたよね)

ネットや、それに付随する技術がいくら発達しても、実際の体験じゃないと絶対に得られないものって何だと思いますか。

私は、「『自分の身体に危害が及ぶかもしれない』という感覚」だと思います。

カミーノの道中、人気の無い山道を歩くことが結構あるんだけど、道が細くて、しかも片側が崖になっていることがままある。それで、前にも後ろにも巡礼仲間が見当たらない時は「万が一この崖に落ちて、死ぬか気を失ったら、誰にも見つけてもらえず終わるかもしれない」とガチでビビる。VR体験でヒヤヒヤするんじゃなくて、マジで異国の地で遺体も見つけてもらえずに終わるかもしれない、という、それなりの可能性をもった予測からくる怖れだ。
テレビで旨そうにグルメリポートする芸能人を見て自分も同じものを食べたくなったり、あるいは食べた気になったりすることがあるけど、たとえテレビから匂いや温度が出力されたり、あるいはVRでマジでラーメンを食べる感覚を再現できたとしても「ああスープまで飲んでしまった、マジ太るよな」とか「明日絶対胃もたれするよな」という甘美な後悔は絶対に味わえない。VRは所詮ジェットコースターで、本当に壊れた車に乗る方が、たとえ時速30キロでも怖いのだ。
なんか、SFとかで、いろんなものがヴァーチャルで体験できるようになって庶民は狭い部屋でヘッドギアして椅子に座ってるだけで大満足、みたいな光景ってよく描かれると思うんだけど(いつでもiPhoneばかり見てる21世紀人も割と似たようになってきてると思う)、
それでも、食とセックスと死は最後の砦だ。人間には身体があるから。
ヴァーチャルセックスが発達しても、「妊娠する(してしまう)かも」という怯えなり期待なり自暴自棄なり陶酔なりは、絶対に得られないよ。

さて、写真ですよ。
「ライヴや旅先で写真撮りまくる奴が嫌い」という話は常々しているので渋澤ファンにとってはもう耳タコだと と思う、しかし、彼らには「少し先の未来に劣化コピーのお土産を持ち帰るために今を少し削ってる」という自覚があるんだろうか(そしてついでに言うと周りの人間にもそれを伝播させてるという自覚はあるんだろうか)。
何のためにライヴに、旅に来てるんだ? インターネットで無数の劣化コピーが得られる時代に。写真撮りに来てるのか? それって、目の前に裸の女がいるのに「下着ください」って言うのと一緒だぞ。何言ってるか分からん奴は老後のために5000万円貯めて55歳で死ね。

とにかく旅先ではアホみたいに写真撮りまくる奴がいてうんざりするんだけど、「写真に撮って後で見返そう」という思いが先走るあまり、今目の前にあるものをちゃんと見ないということがあまりに多くてうんざりする。これは自分の話。まだ我々の写真の技術は遠近感や匂いや温度を写し取ることが出来ないんだから現場ではそれをちゃんと味わえばいいし、もし近い将来写真の技術が発達して匂いや温度や遠近感が写し取れたとしても、現地にいるときは「ここで最悪死ぬかもしれない」という感覚をちゃんと味わえば?

そういうこと考えてから、「ネットじゃ分からない。やっぱり実際に行って実物を体験してみないと」って言えば? 何言ってるか分からん奴は、山を写真に収めるために後ろを見ずに山道を後ずさりして崖から落ちて死ね。

あ、補足。「(たとえ絵ハガキと同じ光景でも)自分で写真を撮るという「行為」自体に意味がある」みたいな論点は今回は割愛します。あとちゃんと写真の道を志してる人にとっては、ファインダー越しの方が真に「見る」ということを体現してる(ことがある、と思う)ので、プロの写真家にも今回の話はあてはまらないと思います。私も、写真は撮らないけどライヴ中はよくメモをとります。文字で。

さあ〜て、「実際に行ってみて生で体験してみないと」分からないライヴの告知ですよ〜〜!

2016年11月24日(木)
下北沢BASEMENT BAR『Beat Happening !AcousticBOYS&GIRLS!』
【出演】
衿衣
渋澤怜
工藤ちゃん
ド真ん中ズン
岬たん
【時間】OPEN:19:00&START:19:20
【価格】前売:¥2,000/当日:¥2,500(+1D)

ちゃんとヒヤヒヤしてくださいね。別に「マジで死ぬかもしれない」と思わせることは無いと思うけど、自尊心がズタズタになる怖れは結構あります、というか私が、自分の自尊心をズタズタにしながらライヴしてるのです(前回のライヴで複数名に「気持ち悪い」といわれたことをまだ微妙に引きずってる)
せっかく客と演者がこんなに近いんだから、絡まれたそうな顔してるやつにはどんどん絡んでいくからな〜壁ドンとかコールアンドレスポンスとかしてくからな〜(されたくなさそうな人にはしません)

そういうドキドキ感てやっぱYouTube観てても絶対味わえないと思うけど、テスターとして動画も貼っときますね。わたしまだ観てないけど(すぐスペイン行っちゃったから)
https://youtu.be/ModjTUSpOPY

んじゃまた、Wi-Fiが取れた時にお会いしましょう。ガリシアより愛を込めて。

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