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短編小説(未完成)

このnoteには未完成の短編小説を掲載している

#2000字のドラマ という、若者をテーマにした短編小説を投稿する企画に、参加してみようと思い、短編小説を書き始めた。完成する前に企画の締め切りは過ぎてしまったので、一旦完成を保留している。このnoteは、現時点で未完成の短編小説を掲載したものである。

未完成のまま掲載しているのは、
 ・未完成の小説の掲載も意外と面白いのではないか
 ・完成させるモチベーションになるのではないか
と考えたからである。そのうち完成させようと考えている。

以下、本編である。

本編

拓也編

今日は久しぶりに羽を伸ばせる日だと、朝起きた時感じた。両家挨拶や新居への引っ越しなど、結婚準備にここのところ追われていたが、今日はそういった用事がない上、高校時代の友達である、鈴木と聡志と飲みに行くからである。

「俺、結婚するわ。」

飲み会の第一声で二人にそう告げる。

「明後日入籍する。入籍前に伝えようと思って今日飲み会開いた。」

予想通り二人とも驚いている。ここのところ何度も経験したリアクションであるが、何度経験してもどこか気分のよいものである。
その後、例によって、なんで結婚したのか、いつ結婚を決めたのか、などの質問が飛んできた。

「28歳までには子供欲しいなと思ってるんだよね。そうすると、27歳までには結婚する計算になるじゃん。結婚するまでに2年くらいは付き合うって考えると、今の彼女と結婚するか、次の彼女と結婚するかの二択になるのかなって気づいたんだよね。それなら、今の彼女と結婚しようかなと思った。」

何度も考え、自分なりに結論づけた結婚の理由を説明する。その他、矢継ぎ早に飛んでくる質問にも次々と答える。聞かれる事は毎度大体同じなので、すっかり答えは出来上がってしまっている。

「でも、やっぱり早いよなぁ。」

これまた何度も見てきたリアクションを2人ともする。言い返したい事がある気がするが、何を言い返したいのかも分からず、そうかもなと言う。これも毎度お馴染みだ。

「じゃあね、ほんと結婚おめでとう。」

そう言ってくれた二人と別れた後、帰り道の途中にある公園のベンチに腰掛け、「やっぱり早いよなぁ」と言われた事について考える。早いよなと言われると、心がざわっとするのは何故なんだろう。結婚の理由を答えるたびに、どこかしっくりきてない理由だよなと、自分でも感じるのは何故なんだろう。

結婚に後悔があるわけではない。自分の中で結婚への区切りはついている。そう、区切りなのだ。今の彼女と結婚したかったという理由以上に、独身者としての自分に区切りがついたから結婚したのだ。

そんなもんだぜ結婚なんて。早いよなぁと言う人全員に対して心の中で呟き、未来の奥さんが待つ新居へと地面を踏みしめるようにして歩き出す。

鈴木編

今日は早く帰れるだろうかと、少し心配していた。高校時代の友達である、拓也と聡志との久しぶりの飲み会の予定が夜にあるが、あまり帰りが遅くなるわけにはいかなかった。先日飲み会から帰った後に体調が悪くなり、救急車で搬送され、その後一週間入院する、という事があって以来、同居中の彼女から夜遊び禁止令を食らっていたからである。

「え、まじ?」

拓也の結婚報告を聞き驚く。結婚報告がしたくて今日飲み会を開いたようだ。

「彼女妊娠したとか?」

悪いかなと少し思いながら、ストレートに聞いてしまう。

「いや、そういうわけじゃないんだけど。」

もちろん、そういうわけじゃなくても結婚する人が出てくる年頃である事は理解しているつもりだ。自分も今の彼女と結婚する可能性について考えた事はある。

「結婚早いなぁ。」

正直な感想を言う。

「じゃあね、ほんと結婚おめでとう。」

そう言って別れた後、最寄駅で時計を見ると10時である。早歩きで家に向かう。彼女が文句を言うか、ぎりぎりのラインだろう。結婚報告があったために、早めに帰る事ができなかったにしては、遅くならずに済んでよかったとも言える。

正直、今の彼女と結婚する気はしている。もう3年も付き合っているし、同居して1年経つが大きな喧嘩もない。この前飲み過ぎで倒れた事もあり、夜遊びができなくなる年齢へと着実に近づいていると感じている事も結婚を考えさせる一つの要因だ。

しかし、いざ結婚すると考えると踏み切れないし、踏み切りたいとも思わない。家で奥さんが待っているから早く帰らないといけない、などと言っている自分の未来に魅力を感じないのだ。夜遊び禁止令を食らってから、ますますそう思うようになった。

いつもどおり考えがまとまらないまま家に到着したので、考えを止め、玄関を開ける。

聡志編

今日の飲み会を前から楽しみにしていた。最近友達と遊ぶ機会がめっきり減っていたが、今日は久しぶりに友達との飲み会があるからである。社会人になり、

「まじか!」

もしかしたらと思っていたが、改めて結婚報告を聞き驚く。

「プロポーズ緊張した?」

気になって聞いてみる。

「めちゃくちゃしたよ。」

それから根掘り葉掘りプロポーズのエピソードを聞いてしまう。昔から事細かに聞いてしまう方だ。

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