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日常


「見惚れてしまいました」



そう声をかけられたところから、私の休日は始まった。


私は駅のホームに座り、新書を読んでいた。右手にペンを握りしめながら。

敬愛する先生と先輩に「本は3度読め」と立て続けに言われたため、最近はそうするようにしている。線を引きながら、ページを捲る。


視界の隅で、誰かの視線を感じた。体勢を変えるふりをして視線の方をちらりと見た。60代くらいの女性が、こちらを見ていた。


「ごめんなさいね。私の若い頃みたいだなぁと思って。あまりにも熱心に読んでいたから、見惚れてしまいました。」


最近は老眼で上手く本が読めないのよ。とお茶目に自虐しながら、彼女は若き頃の親友の話をし始めた。


「よく本の交換をしたなぁ。今は宮崎に住んでいて、なかなか会えないのよ。」


その場に偶然居合わせた人と、なんでもない話をする。私はその行為に意味を見出さずにはいられない。


同じ時間に駅にいた。
同じ電車を待っていた。
同じベンチに座っていた。
同じように、本が好きだった。


「群衆」と一括りにしては勿体無い。そのなかにも、きっと仲間がいる。味方がいる。そう思える人に出会えたこと、きっとそれが救いになる。


_____

最近のnoteがあまりに暗すぎて、友人(主にゼミ仲間)に心配されていた。


農村研究をしている先輩は、「最近は、どうですか。悩みとか、ないですか」と徐に私に声をかけてくれた。もうすぐ帰国するらしい先輩は、猫の写真を送り宥めてくださった。前世からの縁を感じているカントくんは、「なんか2個手にくっついてきたから」とチョコボールをくれた。村上春樹、マレーシアの研究をしている同期と食い意地の張り合いをして、深夜まで公園で語らった。


研究が楽しい。音楽も、楽しい。


そう思える日々が、戻ってきました。いろいろとありがとう。そのうち何かでお返しするね。

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