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身一つフェリーのすすめ

旅の情緒

「藤本さん最近なにかはまってることあります?」
そんな質問をうけたときに僕はこう答える。

「身一つで乗るフェリー」

そもそも僕にとってのフェリーのイメージはカーフェリーで、つまり、車ごと乗せて移動できるありがたい乗り物だった。

もっともフェリーをよく使っていたのは15年〜10年くらい前だろうか。特に、京都の舞鶴港から秋田の土崎港や、北海道の小樽港に向かう #新日本海フェリー が大好きだった。夜中0時頃の出航ゆえ、乗船してすぐに眠りについて朝起きたら海の上という状況のファンタジーさにときめいた。そのまま船上で1日をゆったりすごし、夜の8時頃に北海道に着いて、閉店前の寿司屋に飛び込む。なんてのが、旅の気分をずいぶん盛り上げてくれたものだ。携帯の電波も届かない18時間くらいの乗船時間が、あらゆるものから僕を遠ざけ、ひたすら広がる海にたゆたうような時間に心が満たされた。

そんな大好きなフェリーを使わなくなったのは、シンプルに車移動が減ったからだ。当時は、どこに行くのも大抵、車で移動していた。今思えばガソリンもまだ安かったなと思う。何より、いまは車で移動できるほどの時間がなく、ついつい飛行機でバビュンと移動してしまうから、情緒がないものだ。

だから僕にとってフェリーは旅の情緒そのもの。それでいて独特の高揚感もある。未開の地へと突き進むフェリーは、ちっぽけな僕の小さくも豊かな大航海。大きな船で海をすすむ船の揺れが、僕の心の器に満ちた好奇心の水面をもゆらゆらと刺激する。

フェリー再発見

車ごと乗り込む大型船というイメージだったフェリーが変化したのは、去年のこと。大分県別府で取材のお仕事があり、その際に「弾丸フェリー」と書かれた広告を見つけて、その安さに驚いた。

神戸ー九州をフェリー内2泊、現地0泊。往復1万円で旅できちゃうという弾丸フェリー。さすがに弾丸で行って帰るのはもったいないけれど、僕はそれを見てようやく気づいたのだ。そうか……身一つで乗っちゃえばいいのか!と。

そこで、神戸ー大分航路を身一つで使ってみたことから、僕は久しぶりのフェリー旅にハマった! とにかく最高なのだ。だから今回お届けするのは僕なりのフェリー旅のすすめ。しかしそれもこれも僕が兵庫県の西宮に住み、神戸の港湾地区にあるうちの事務所のすぐ前にフェリー乗り場があるという立地的利便性ゆえの贔屓目もあるかもしれない(ならばもっと早く気づけって話なんだけど)。なので、そのあたりは皆さんがお住まいの地域の近くだと、どんなフェリー航路があるかを調べてもらうところから始めてもらえるとよい。

寝台列車のころ

さて、僕がとにかくフェリーをお勧めするのはなぜか。その最もシンプルな理由は、夜に出航して朝起きたら着いてるからだ。かつてそれを叶えてくれた身近な交通は寝台列車だった。それこそ大阪ー青森をつないでいた寝台特急「あけぼの」など、何度乗ったかわかんない。秋田からの乗車時間21時ギリギリまで駅前の永楽食堂で飲んで、そのまま乗車。寝台列車で眠って起きたら大阪駅。ってもう最高だった。

しかし近年のJRはそういった寝台列車を全部廃止して、超高級路線に変更。とにかくアッパーな人たちむけの豪華列車に入れ替えてしまって、以前のような使い方は出来なくなってしまった。寝台列車の良さというのは、ただこの身を運んでくれるというその無垢な機能性にこそあって、僕は寝台列車を冗談まじりに、交通界の民藝だと言っていた。

これは高速道路におけるサービスエリアとかにも言えるんだけど、10年前にNEXCOの社長のインタビューをみて、「目的地になるようなサービスエリアを目指す」とおっしゃっていて、僕のなかの高速道路、僕のなかのサービスエリアは終わりを告げた。サービスエリアの良さは、とにかく移動中の腹を満たしてくれるだけという潔さにあった。それでよかったのに、と僕などは思う。そう考えれば僕が車を使わなくなったのは、そういう味わい深いパーキングエリアが消えていったことも大きな一因な気がしてきた。

とにかくそんな僕にとって、フェリーはまるで救世主のような存在。僕の旅にとって必要な機能と楽しさと情緒がすべて詰まっている。

いまここ

実はいま僕は、昨日の夜にフェリーさんふらわあに乗って大分港を出発、朝6時半に神戸港につき、その足でそのまま阪神御影駅のカフェに入り、この原稿を書いている。ということでここ数日の僕の旅路を整理する。

2/1 札幌パルコでの展覧会の搬入立ち合いとRe:Schoolメンバーとのウェビナーイベント開催のために伊丹空港から新千歳空港へ。札幌滞在。

2/3 無事展覧会初日を迎え、午後の飛行機で伊丹空港へ。伊丹からそのまま電車で神戸へ向かい、夜7時に出航する宮崎行きのフェリーに乗船。

2/4 宮崎県新富町で講演。久しぶりの宮崎を満喫。

2/5 電車に揺られて由布院へ。

2/6 由布院で友人とあたらしい仕事をつくるべく打ち合わせ&束ノ間の休息。

2/7 数年ぶりに会う友人と別府で待ち合わせ。特急ゆふいんの森に初乗車。

別府駅から電車で西大分駅へ。そこから徒歩10分の大分港から夜7時出航のフェリーに乗船。神戸へ。

2/8 朝6時35分神戸港着。バスで阪神御影駅へ。駅前の早朝から空いてるカフェで原稿書き。←いまここ。

という感じで、行きは神戸→宮崎、帰りは大分→神戸、というルートでフェリーを楽しんだ。

宮崎カーフェリー

往路に活用した #宮崎カーフェリー 。神戸ー宮崎間を毎日運行するこのフェリーの存在が視界に入っていなかったのは、まさにこのネーミングにも一因があるなと思ってしまった。『カーフェリー』とは言うものの、人だけでももちろん乗船できる。

僕が泊まったのはシングルという客室。鍵もかけられてベッドと机もある。もう十分すぎるこの部屋は14,200円。東京行く新幹線より安い。しかも一泊出来て目的地に着いちゃうのだ。ここめちゃ大事。

乗船してすぐに向かうはお風呂!
シングルルーム じゅうぶんだよね?

最近、フェリー慣れしてきた僕は、お気に入りのドリップバッグ持参してマイStojoでカフェタイム。Wi-Fiも携帯電波も届かないから、仕事も捗るし、ほんと最高。

カップラーメンとかつくる熱湯がチョロチョロと珈琲淹れるのにピッタリなのだ。
珈琲のお供は札幌で買った #六花亭の #大平原 ほんと美味いんだよな〜大好き。

僕は出来る限りその土地のお店でご飯食べたいタイプなので、船内レストランはあまり利用しないんだけど、バイキング形式のご飯がなかなか良さそうだったから、たまには使ってみてもいいかも。スマホにダウンロード済みのネトフリ動画見たり、本を読んだりしながら、ゆったり時間を過ごし、いつもより早めに寝床について、目が覚めれば、日の出の時間。

日の出は何度見てもいいものだよね。
あたらしい1日のはじまり。

フェリーさんふらわあ

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