「いちじくいち」というチャレンジ


 怒涛の出版記念ツアーの最中、10月7日、8日の二日間にわって開催された「いちじくいち」。
 自分で企画したイベントながら「開催された」なんて少し他人事なのは、今年は準備と運営のほとんどを、のんびり秋田チームにお任せしたから。

 任せるってことがいくつになっても苦手な僕は「あっちのフォローは大丈夫?」「こうしなきゃヤバいんじゃないの?」「こんな風にやればうまくいくんじゃない?」なんてことを言いたくて言いたくて仕方がなかったけれど、大筋からはずれなければ口は出さないと決めていて、だからこそ、なんというか一年目以上に今年は胃にキタ(笑)。

 でもそうやって「任せること」に対する苦悩は、僕自身にとって大切なチャレンジだから、常にそういったチャレンジがあることは幸福なことだなって、最近つくづく思う。僕はチャレンジするのが好き。そういう性質なんだな。

 まあそういう自分ごとは置いておいて、今年も大盛況だった「いちじくいち」が、そもそもどういうチャレンジを抱えたイベントだったのか? ということをここで明確にしておこうと思う。それは前述の、秋田チームにキープしてもらいたかった「いちじくいち」の大筋の部分でもあるので、地方でイベントをやろうと考えておられる方は参考にしてもらえたらとも思う。

 ビジョンの実現のために、数値化出来るわかりやすい成果も大切にする僕たちだから、良いもわるいも「のんびりワークス」は、人が来るとかそういう端的な評価になってしまいがちで、それは僕らにとってストレスでしかないので、自分たちが気持ちよくこれからもチャレンジしていくためにもアウトプットしておきたい。

1)有名人が来ない。
 いちじくいちは、ビッグなアーティストが来るわけでもなければ、花火が上がるわけでもない。だけど地方のイベントの多くは人寄せパンダ的なことにこだわるあまり、運営側の主旨や思いとお客さんの来場動機がズレてる。それを僕はよしとしたくない。「いちじくいち」のメインはあくまでも「いちじく」であり「いちじく生産者」。生産者や産品そのものをスターにするのに、スターを呼んで来たら元も子もないと僕は思う。あくまでも「いちじく」を求めにきて欲しいから、そのために何をすればいいかを考える。
 とはいえ出店くださったみなさんは、言わば秋田のスター飲食店だったりするんだけど、出店者のみなさんは、あくまでいちじくの盛り立て役だというスタンスでいてくださるので、あえて言わなくてもいちじくを使ったメニューや商品を考えてくれたりもする。
 また「いちじくいちを」というキャラクター人気がすごくて、どんどんスターになってくれているけれど、あの子を作ったのも、いかに北限のいちじくと呼ばれるにかほのいちじくを盛り立てていくか? を考えた結果。
 もはやスターは東京から呼ぶんじゃなくて田舎で育てるもの

ということで「いちじくいちを」が生まれるまでの裏側を少し公開↓

2)辺鄙な場所でやる
 いちじくいち会場の旧小出小学校は、基本的に車でなきゃ来れない場所にある。それこそ県外の方からすれば秋田ってだけで遠いのに、さらに県南の、にかほ市。そのにかほ市のなかでもさらに奥というのは、ふつうに考えればハードルでしかないのかもしれないけれど、そのハードルを超えた人たちだけが共有できる気持ちとか喜びってあると僕は思うし、それだって演出の一つだ。
 スマホがあればどこだって行ける世の中で、もはや利便性を一番に考えるのはナンセンスだと僕は思ってる。求めるべきは利便性より物語。その場所で開催することの意味が「駅に近いから」なんてつまんない。
 鳥海山をバックに幾人もの子供たちが育ったかつての小学校は、生産地から近いということ以上に、完熟してなお蒼く小ぶりなにかほのいちじくを大きく育てていく場所としては最高のロケーションだ。

3)役所の予算ごとにしない。
「にかほのいちじくは秋田の未来をつくるための最高最良のコンテンツだ!」なんてことは、あくまでもよそ者の僕だからこその意見で、地元の皆さんにとっては珍しくもなんともないいちじくの未来のビジョンを、よそ者の僕と共有するなんて簡単なことじゃない。
 池田修三さんの時もそうだけど、1人の頭のなかにあるイメージは、カタチにしないことには、永遠にわからないし伝わらない。にもかかわらず、それを最初から予算ごとにしようというのが僕はあまり好きじゃない。どんな物事だって、たった1人の情熱からしか生まれないのだとすれば、それを多くの人の自分ごとにしていくまでには時間がかかる。
 そうやって自らが率先してリスクを背負いながら動いていると、地方のみなさんは良かれと思って「こんなにも県外のかたが動いてくれているのに、役所の人間は何をしているんだ」なんて大雑把な文句を言ってくれたりするけれど、そんな言葉僕にとってはこれっぽっちも嬉しくないし、そんなことを言う暇があれば、自分でなんとかしようとすればいいのにと思う。役所の人たちは役所の人たちとしてのプロフェッショナルがある。そこに対するリスペクトなしにポジティブな動きなんて作れない。
 それに予算化してもらうためには、企画書を書かなきゃいけないから、僕はあれがほんと苦手。だって物事始める前に書く企画書なんてたかが知れてるし、そこに予算がつけば、たとえ状況が変わっても、そこに書いてあることを理由に、やんなきゃいけなかったりして本末転倒になりがち。それよりは想像を超えて来る現実の困難を「ビッグウェーブ来た!」とテンション高めて波乗りする方がたとえうまく乗りこなせなくても、よっぽど気持ちいい。だから予算がつかなかったからできなかったおばさんとか、全国で出会うけど、お腹んなかでは、そんなのできない理由にならないと思っているので、そこんとこ夜露死苦です。

 大事な税金を預かる役所のみなさんには、もう少しビジョンが明確になってからオフィシャルに動いてくれればいいし、出来ることならそれまでは裏で支えてほしい。今回も、廃校になった小学校を借りる手はずや、全戸配布の広報誌にチラシを挟み込んでもらう手配。そして今年は特に、農林関係の部署の皆さんに駐車場やお客さんの整理をしてもらって本当に助かった。これは予算ごとではなくて、みなさんが気持ちで応援してくれた証。それで役所の人たちの文句とか言われたら、こっちが市民に文句言いたいくらいだ。こうやって信頼関係を築いた先に未来がある。

 ちなみに一年目は、のんびりが200万の予算を決めて、いちじく生産者のための什器制作や、僕自身が秋田入りする交通費やゲストの交通費、旗やのぼりなどのサイン制作、広報宣伝などなどやりきった。そうやって必死になって形にしてはじめて、リアルな反応がもらえる。その多くは文句とかクレームだから疲弊しそうになるけど、まあ仕方ない。
 いや〜しかし今年もたくさん怒られたなあ。

 ということで、あらためて聞いてください。

 今年も「いちじくいち」は、北限のいちじくを求めてオープン前に500人を超える行列が出来、初日2500人、二日目3500人と、合計6000人以上の方に来場いただき、大盛況のなか幕を閉じることができました。しかしこれは上述のとおり、どう考えても人が集まりそうに無い状況のなかでのことです。つまりは奇跡のようなものです。
 だけどいま僕は、あらためて奇跡という名のプレゼントは努力したものに贈られるんだと実感しています。この奇跡を来年以降も呼び込むためには努力を続けるしかない。花の無い果実と書く「無花果(いちじく)」に大輪の花を咲かせるという奇跡にむかって来年以降も覚悟をもってのぞみたいと思います。

 その覚悟の一方で、北限のいちじくをもって秋田を盛り上げていく仲間がほしいとも思っています。僕たちの動きや、やり方が、より豊かにダウンシフトしていくニッポンの未来のフォーマットになると信じています。企業のかたも、役所のかたも、ぜひお声かけください。

 そしてあらためて、来場いただいたみなさん、ご協力いただいたすべてのみなさんに感謝の気持ちを伝えたいです。

 本当にありがとうございました!

 来年もやります!

 


のんびり秋田チームがやるって言ってくれたらだけど……。

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