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『Z会桜浪紀』 編集後記

『Z会桜浪紀 最高の教育で、未来をひらく。』という音MAD合作に参加しました。

※この記事には合作本編に関するネタバレが存在する為、
先に動画をご覧頂いてから読むことをお勧めいたします。





参加経緯

きっかけは今年の6月にこち横さんから届いた一通のDMでした。
合作全体を一つの脚本に沿って作っていく、言わば『脚本合作』なる試みがしたい」というご提案を受け、これめちゃくちゃ面白そう!やりたい!と感じたのを覚えています。
(私自身も同様のアイデアでいつか合作を実現させたいな…と考えていたものの、現実的な企画に落とし込むことが出来ず断念していたのでこうして本合作に携われたのは光栄でした。)

合作での役割

KICK BACKパートにて映像のディレクションとアニメーションの原画を担当しています。あと軽くコンポジットもやってます!

「なんだよその役職名!全然聞いた事ねーよ!」って人が居たらアレなのでざっくり説明すると、映像構成を考えたり、制作して頂いたものをより良くする為に意見を出したり、アニメーションの下書きを描いたりしてます。
コンポジットっていうのは「映像まとめ」だと思って頂ければ大丈夫です。まとめる段階で色調や細かい動きの補正、字幕の追加などを行いました。

アニメーション、撮影処理、映像の方と関わる事が多かったです
3Dについてはこち横さん主導で進めて頂きました…ありがとうございます!

映像構成について

本合作へは途中からの参加になったため、まずLixyさん制作の脚本をもとに映像構成を考える形となりました。

脚本の流れを汲み取りつつ、音のイメージに合わせて恰好よく展開させたい!という思いで制作を進めました。

本来はもっと具体的に描き起こして制作担当の方にお渡ししたかったのですが、スケジュールの見立てが甘く、この状態で一旦制作へ投げる形となってしまいました。本当に申し訳ない!!(そんな中でも皆さん予想以上の映像を持ってきてくれて本当に頼もしかったです!ありがとうございます!!)

内容については、「出題される問題へと立ち向かっていく亀井勇馬の姿を『チェンソーマン』のようなバトル展開に落とし込んで描く」ということを目指しました。
全体的に動き回っている表現は「ペンを走らせる」という言葉から着想を得ています(問題をバババっと解いていくさまが映像映えするように演出できたら良いな~、と…)。
ラストのシーンは当初少し異なる演出でしたが、GainAさんが制作して下さった音声や次のパートの進捗を拝見して変更しています。『黒塗り世界宛て書簡』パートとの繋ぎに向け、解いていった先にも依然として立ちはだかり続ける難問と、それに気圧される亀井の描写を差し込みたく……。この辺りは結構悩んでた記憶があります! 『チェンソーマン』における「闇の悪魔」のような表現にすることを考えていましたが、もっと抽象的なイメージにして漠然とした不安感を煽りたかったので、結果としては同作に登場する「地獄」を想起させるようなビジュアルに変更しました。

闇の悪魔
出典:藤本タツキ『チェンソーマン』(集英社)
地獄
出典:藤本タツキ『チェンソーマン』(集英社)

アニメーション原画について

パート冒頭、シャーペン人間となった亀井が赤門をぶち破って大学構内へと突入するシーンではアニメーションをゼロから制作しています。

余談ですが、音MADでしっかりとしたアニメーションを描くのは2018年の『おかしすきかい』以来です。なんと5年振り!

贅沢を言えば全編手描きアニメーションで挑戦してみたい気持ちもあったのですが、合作内では既に『Camouflage Announce』パートや『なにやってもうまくいかない』パートを中心に手描きイラストが多く用いられていた為、この冒頭のみに収まる形となりました。

シャーペン人間亀井のデザインラフ
表情については、漫画『チェンソーマン』を参考にしています

一度この段階で提出し、主催陣にチェックして頂いた上で原画の制作へ移りました。

私自身アニメ制作を常日頃行っている訳でもないので、「原画って何?」という状態からなんとか形にしました。
映像を見て頂ければお分かりかと思うんですが、前半は1フレームずつ全て丁寧に描いちゃってるんですよね……(動きが複雑だったので結果オーライではありましたが…)
調べながら描いていくにつれ気付いた事なんですが、原画の段階では動きのキーフレームだけ描いておけば十分でした(多分)。清書する段階になって各キーフレーム間を埋めるように進めると効率が上がって良い……のかな?
技術とか専門知識とか、その辺の詳しい事は詳しい人に聞いてくれ~~!!

加えて、アニメ制作担当の菅沼さんにお願いする際「色の見本ってありますか?」とのご連絡を頂いたので、こちらも簡易的に制作しています。

色見本
全体的な色感は、アニメ『チェンソーマン』を参考にしています

側面や背後の資料を用意できていなかったので、今後こういったものを制作する際には意識しようと思います……! 反省!

ディレクションについて

制作して頂いた映像に対し、より良い内容にできるよう意見を出しています。昨今の音MAD合作の風潮として、主催や運営からのディレクションが入る事も増えてきているな~と個人的に思っていたので、ご招待頂いた時は「ディレクションのみでの抜擢!?すげえ事だ!」と純粋に驚いた記憶があります。
私は自分の制作スキルにあまり自信が無かった為、やや不安を抱きながらの進行だったのですが、徐々に「任された以上は徹底的にやったろうじゃねえか!」と切り替えられるようになり、最後はそれなりに意見や指示が出来ていたかな……と思っています。

以下の画像は、すいはんさんから頂いた映像のディレクションを行う際に使ったものです。キャプチャした画像に上からレタッチをしています。

Before
After


Before
After

はじめは固有色の印象が強かったため、色調補正と各所のディティールについて提案を行いました。

ペンを走らせる動きのリファレンス
出典:あらゐけいいち/東雲研究所『日常』(KADOKAWA/京都アニメーション)

ペンを持つ手のカットについては、こちらでリファレンスと共に細かい指示を出しています。

しばらくして各制作担当者の映像が出揃ってきたので、仮で繋いだものを使ってディレクションを行っています(この段階でコンポジットも並行して行い、制作担当者にイメージの相違が無いかどうか確認しています)。

実際にはこの映像に加えてそれぞれにテキストベースで修正指示をお伝えしています。本合作に限らず、視覚的に修正指示が出来る人が居ると全体のクオリティアップにつながりやすくなると思うのでご参考までに……!
個人的に、これまでは「人が作った映像を上書きする形で修正する」という行為を敬遠していました。なんか罪悪感あるし……。しかしながら、実際にやってみるとその効果はかなり大きかったです!

話は脱線しますが……ディレクションの一例として、ゲームクリエイターの桜井政博さんもレタッチ監修で「実際に調整して、その画像を見せてみる」という事を大切にしてらっしゃるそうです。口頭のみの指示だとお互いにイメージのすり合わせが難しいですし、私としてもこれがベターかと思います!

コンポジットについて

映像まとめの際に、それぞれの映像に統一感が出せるよう色調補正を行いました。それに加え、音声の歌詞改変を活かすために字幕も追加しています。

AviUtlのフレームバッファを使ったゴリ押しです。
ホントはAfter EffectsとかDaVinci Resolveとか使った方が良いんだと思う。
知らんけど。 

おわりに

……とまあ、そんな感じでやり取りを何度か繰り返し行い、無事に映像が完成しました。私はどちらかというと裏方に近いポジションの人間だったので、上述した業務に加えてスケジュール管理もきちんと行うべきだったな……と反省しています。実際かなりギリギリの日程で完成品を提出していたので、今後はもっと計画性を大事にしようと思いました。スケジュールが迫る中、私の要望に応えて頂いた制作担当の皆様には多大なる感謝を申し上げます。

これまた余談ですが、音MAD合作におけるディレクションについて私は断然アリだと思いますし、どんどんやっていってほしいです。
ただ一方で感じるのは、ディレクションとは粗探しではないという事です。踏み込んだ提案をする場合、「なぜ今の状態から変更しなければならないのか」という相応の合理性だったり、「今の状態からもっと良くする為にはどうしたら良いか」という問題解決能力と知識が必要になってくる為、ただ「ここが良くないよね」という事だけを伝えるのは本質的ではありません。
むしろ、今あるものの良い所をより伸ばしていくという意識のもとで進めていく事がディレクションという役職の重要なポイントだと、本合作を通じて体感しました。

「合作全体を通じて一つのストーリーを紡いでいく」というコンセプトは、非常に斬新で他に無いものだと感じています。視聴者の皆様からも大きな反響があり、改めて本合作に携われて良かったな……と思いました!
参加者としても、視聴者としても、良い合作になったと感じています!

主催のこち横さん、ならびに関係者の皆さん、
この度は本当にお疲れ様でした!!

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