見出し画像

【RS02:WORKS】初の全国盤EPリリースに賭ける思い

バンドから弾き語りまで、フリーな編成で活動する歌い手・未祐.(みゆう.)。6月に全国盤リリース、7月には初ワンマンライブ開催と、挑戦を続ける彼女の内情を探った。

ギャップのあるアーティスト性

筆者は取材前、未祐.のHPやSNSを見て「サバサバした『カッコいい』女性なのだろう」と予想していた。

普段のツイートやブログの文章、そしてオリジナル曲の歌詞がしばしば厭世的で、凄絶でさえあったからだ。黒のライダースを着こなし、迫力のあるハスキーボイスで、熱いロックを歌い上げる女性の姿をイメージしていた。

しかしそれは、『キズ』のリリックビデオを見て引っくり返された。

文字だけで歌詞を追っていた時には想像できなかった、流れるようなメロディ。瑞々しい声と、心を震わせてくる歌唱。自然体で明け方の海岸を彷徨う姿。総じて『美しい』と思った。

実際に会った本人も、小柄で可愛らしい女性だった。上述の感想を伝えると「私の声と曲、歌詞のイメージにギャップがあるというのは、昔も言われたことがあります」と、ころころした笑い声を立てた。

「『キズ』は、ものすごく私自身です。自分でも見たくなかった自分の内側を、すべて詰め込んだ曲です」。30分程度で作り上げたため、その時のことはよく覚えていないのだという。

全国盤には、ほかにリード曲の『Tokyo stranger』、女性らしい『私のお気に入り』を集めたような『0』、都会的な孤独との葛藤を描いた『トーナメント』など、バラエティに富んだ楽曲が収録されている。

鋭い目線で現実を切り取り、率直な心情を綴った歌詞は、声質に甘えない歌唱力とあいまって、メジャーに受け入れられやすいアーティスト性だと感じた。たとえばノイタミナ枠のアニメのエンディングソングなど、深い世界観の作品にぴったりハマりそうだ。

『弾き語り』にも『バンド』にもとらわれない編成

学生時代はギター弾き語りで活動していた未祐.だが、ボイストレーニングスクールの繋がりでドラマー・タケリョウスケとギタリスト・達人に出逢い、18年からはバンド編成でのライブを増やしている。

楽曲制作や活動の方向性は全て未祐.が決めているため、『バンド』という形式にはしていないが、信頼度は引けを取らない。練習以外でも週1回ほど顔を合わせており、まるで兄妹のような仲の良さだという。

ライブ前、演奏すると決めた曲を彼らに送るときも、細かな注文をつけることはしない。「二人のセンスなら、やりたいことを汲み取って演奏してくれるだろう、と信じています。どのように料理してくれるか、毎回スタジオ練習で合わせる時が楽しみです」。

全国盤リリースに込められた想い

6月にリリースされる『リアルタイムシンドローム』。実は、未祐.は同名のオリジナル曲を持っている。一人で弾き語りをしていた時代の楽曲だが、今作に収録はされていない。

「『誰かを傷つけるためじゃなく、弱さを掬いあげるために、強い言葉を使って曲を作ろう』という、自分のやりたいことに気づくきっかけをくれた曲なんです。

歌詞もメロディも未熟なので、今、歌うことは考えていないんですが、タイトルはキャッチ―で気に入っていて。だから全国盤を作る時、ここでこのタイトルを使うことで、当時の思いも報われる気がしました」。

CD制作に至ったきっかけを問うと、彼女は「自然な流れでした」と答えた。

「バンド形態でライブをするようになって、自分のアーティスト性が固まってきたので、ここで一つ形にしたかったんです。せっかくなら、細々とライブを続けたり、自主制作でCDを作ったりするんじゃなくて、もっと大きく一歩前に出たいと思いました」。

「自信を持ってお勧めできるものができたので、多くの人に聴いてほしいです」。そう胸を張る未祐.の『リアルタイムシンドローム』は、インターネット販売はもちろん、全国のタワーレコード、HMVなどで入手できる。

7月28日(日)には、自身初のワンマンライブも控えている。「命を削って歌います。音源だけでは伝えきれない空気感を、ぜひ、生で受け取りに来てください」。

特定の事務所に所属せず、個人としてこれだけの規模の活動をするのは簡単ではない。しかし、「今年は『何もおそれないこと』を目標に掲げて活動しています」と語る未祐.の表情は、苦労を感じさせなかった。

その真摯さが報われる瞬間を目撃したいものだ。

text:Momiji photo:瀬能啓太

関連記事


お読みいただき、ありがとうございます。皆さまからのご支援は、新たな「好き」探しに役立て、各地のアーティストさんへ還元してまいります!