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【S06:MUSIC】人の心を動かす音楽は人を大切にすることから生まれる

Gt.&Vo.の箱守啓介(はこもり・けいすけ)とKey.&Vo.の赤司渉(あかし・わたる)による音楽ユニット・ワダノヒト。趣味嗜好は大きく異なるが、息ぴったりの箱守と赤司。彼らが作る楽曲や主催イベント、アーティスト活動の詳細に迫った。

ワダノヒトの楽曲作りと主催イベント

ワダノヒトの楽曲は、箱守が作詞作曲を行っている。「日頃の生活で気になったことや思ったことが膨らんで、曲になっていますね。『作ってる』というより、自然に『湧いて出てくる』感じです」と彼は語った。

筆者が彼らに惹かれたきっかけは、ダウンロード販売中の楽曲『太陽系を思い出して涙した』だ。フォークソングのような耳に馴染むメロディと、2人の抜群の歌唱力はもちろん、キャッチ―な歌詞が心に残る。サビの「命果てるまで 僕は僕でいよう」に象徴されるまっすぐなメッセージ性も、言葉選びの面白さも際立っている。

「ハコは、ちょっとひねった歌詞を書くんですよ。普段あまり本を読まないからこそ、独特な語彙があるのかもしれない」と、赤司は分析する。箱守自身も「人の言葉を借りるのは嫌なんで。『どういう意味なの?』と他人から訊かれてしまうとしても、自分の感性で語りたいと思っています」。

楽曲のアレンジは赤司が担当している。ワダノヒトの曲はポップス中心だが『矛盾力』『12フレット』など、カッティングギターとスラップベース主体のアグレッシブな曲もあり、他アーティストとは違う、ワダノヒトの独創性が際立つ。

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箱守から連絡を待つ立場である赤司は「彼が作る曲はバリエーション豊かなので、僕も楽しんでいますよ。ライブ前日の晩に送られてきたときは、ちょっと苦しいですけど」と笑う。

「2人とも、ちゃんと音楽を習ったことがありません。知識がないので、やってみて『これ違うね』『これいいね』と意見交換しながら仕上げています」。

苦しみつつも本番に間に合わせてしまうのは凄い。「赤司に『新曲できたよ』って弾いて見せたら、すぐ合わせてくれるんですよ」と箱守は証言する。ワダノヒトの活動は、箱守の創造力と赤司の機動力があってこそ可能な業と言えるだろう。

結成直後のライブではカバー曲を演奏していたが、2回目からはオリジナルも演奏しはじめた。「月1回ライブをやるとして、常連のお客さんにも楽しんでもらえるよう、毎月新曲を用意しています」。これまでに作った楽曲は約30曲。まだまだ増えていく予定だ。

そんな彼らは、目下ミニアルバムを制作中だ。8月中にインターネット配信、9月16日にはCDリリースを予定している。6曲収録しており、レコーディング、マスタリングなど全て2人だけの手で行った。

箱守いわく「音のバランスの取り方も、リズムの合わせ方も、初めは何ひとつ分かりませんでした。YouTubeなどを参考にしながら、レコーディングしていく中で1つずつ覚えていきました。妥協せずに取り組んだことで、最終的にはスゴく満足できる仕上がりになりました」。

「レコーディングはなかなか進まなくて大変でした。でも、ワダノヒトの曲が形になっていくのは純粋に楽しかったです」と赤司も語る。「特に『あじさいのメロディ』は苦戦したけれど、納得の仕上がりになりました。ライブにはない音の多彩さを是非聴いてほしいです」。

歌詞カードやジャケットの制作は、デザイナーのよしだ氏に依頼している。コンセプトは、妙法寺のお祭りでライブをしている2人の姿だ。

「よしださんには、普段から主催イベントのポスター制作でお世話になっています。彼女の世界観は本当に独特で、可愛いし面白い」と箱守は絶賛する。赤司も、「よしださんは若いのに本当にスゴイの一言で、尊敬しています。ワダノヒトの感性にもマッチしていて。よしださんのイラストが入ることで、ワダノヒトのライブやCDが100%完成すると思っています」。

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そのよしだ氏がポスターを手がけている、ワダノヒトの主催イベント『Pass the Music』。出演者はミュージシャンだけではない。お笑い芸人がコントをしたり、デザイナーが講演をしたり、多種多様だ。

「僕らを見に来てくれるお客さんに『この人たち面白いでしょ?』って知ってもらいたいんです」と語る赤司。音楽というジャンルの枠にとらわれず、気持ちを大切にしてキャスティングをしている。

箱守も赤司も、自分たちのためだけに演奏する行為は好きではない。「ライブは演奏する側じゃなくて、お客さんが主役じゃなきゃ絶対にダメ」。

お客さんが1日をまるっと満喫できる、音楽が好きじゃない人でも楽しめるイベントを構想しています」と言う2人。次回のイベントには是非、足を運びたい。

縁が縁を呼ぶアーティスト活動

ワダノヒトの活動履歴を見ていくと、ライブハウスやバーだけでなく、地域のイベントでの演奏が目立つ。19年の前半だけでも、4月に和田小学校で開催された『わい!わい!わだまつり2019』、6月に杉並区妙法寺で開催された『夏のふれあい祭り』へ出演。そのきっかけについて訊ねると、やはり『縁』というキーワードが浮かび上がってきた。

「ワダノヒトを結成して半年過ぎたころ、ライブの後に一人の女の子が話しかけてきた。「ワダって、杉並区の和田ですか?」。その女の子は、同区にある清水屋という蕎麦屋でアルバイトをしていた。箱守と赤司は、彼女に「お店へ遊びに行くよ」と約束して別れた。

しばらくして清水屋を訪問した2人だったが、その日、女の子は休みだった。店の女将から「あなたたちが来たことを伝えておくよ。名前は?」と訊かれ、「ワダノヒトです」と答えたところ、「何それ? お笑い芸人なの?」と聞き返された。自分たちが音楽ユニットであることを伝えると、女将は大いに関心を持ってくれた。

「今度、ここの商店街主催のお祭りがあるんだけど、出演する?」。箱守と赤司は「出ます」と即答した。「大体いつも即断即決です。『考えさせてください』と言ったことは無いですね。『こんな自分達でよければ何でもやります』というスタンスなので」。

こうして妙法寺門前通り商店会による『千日紅市』などの祭に呼ばれるようになったことで、ぐっと人脈が広がった。先述の和田小学校での演奏も、ここでの縁があったからだという。

「お祭りで演奏していたら、母校の和田中学校の生徒たちが足を止めてくれたことがあるんですよ。『あじさいのメロディ』という楽曲を気に入ってくれたらしくて。お祭りのなかで、何ヶ所か場所を移動して演奏したんですが、ずっと追いかけて聴きに来てくれました」とは箱守。屋外イベントでは、様々なお客さんから反響があることも嬉しいという。「ギターとキーボードがあれば、どこでも演奏できます」と赤司は胸を叩く。

『縁』で繋がってきたのは演奏活動だけではない。彼らの公式ホームページを作ったのは、活動初期に対バンしたアーティストの一人だ。『ワダノヒト』の文字を意匠化した可愛らしいロゴは、ロゴデザイナーの永井弘人氏から「自分の展示会のテーマ曲を作って欲しい」と依頼された時、2曲プレゼントする代わりに作ってもらった。

人を大切にするからこそ、人から大切にされ、新しい輪が広がっていく。そんな彼らにしか歌えない歌がある。繋がりこそ、ワダノヒトのアーティスト活動そのものなのだろう。

text:momiji

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