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6月はプーシキンの詩⑩

     カルムイチカに

さようなら、親愛なるカルムイチカよ!
お前の幌馬車の後を追っていく 草原のまん中で 
私の気晴らしへの面当てに、あやうく、
称賛に値する習慣は私を
魅了するところだった。
お前の眼は、もちろん、ほそい、
鼻はひらべったくて、額はひろい、
お前はフランス語でおしゃべりをしない、
お前は絹糸で足を締めつけない、
イギリス風に サモワールの前を 
パンくずの模様でよごさない、
サン=マールにうっとりとせず、
少しもシェイクスピアを評価しない、
空想にふけらない、
頭になにも浮かばないときは、
歌わない:しかし どこへいったのか、
集まりでギャロップ・ダンスをして跳びはねない…
なにか必要なものは? ― ちょうど30分間、
私に馬の用意をしているあいだ、
私の頭も心も夢中になった
お前のまなざしと野生の美しさに。
友たちよ!すべておなじことではないか:
光り輝く大広間であっても、はやりのボックス席であっても、
あるいは遊牧民の幌馬車の中であっても
無為の心で我を忘れることは?

               (1829)


註:自筆原稿の注記に《5月22日 カプ‐コイ》とある。カプ‐コイとは、ウラジカフカスの古いオセチア語の名称である。この詩が捧げられたカルムイク人の娘との出会いについて、プーシキンは《エルズルム紀行》(第1章)で語っている。

*称賛に値する習慣:プーシキンはキシニョフ近郊のジプシーの野営地に滞在したことを思い出している。
*「サン=マール」:アルフレッド・ド・ヴィニーの歴史小説(1826)


    КАЛМЫЧКЕ
Прощай, любезная калмычка!
Чуть-чуть, назло моих затей,
Меня похвальная привычка
Не увлекла среди степей
Вслед за кибиткою твоей.
Твои глаза, конечно, узки,
И плосок нос, и лоб широк,
Ты не лепечешь по-французски,
Ты шелком не сжимаешь ног,
По-английски пред самоваром
Узором хлеба не крошишь,
Не восхищаешься Сен-Маром,
Слегка Шекспира не ценишь,
Не погружаешься в мечтанье,
Когда нет мысли в голове,
Не распеваешь: Ма dov’è,
Галоп не прыгаешь в собранье...
Что нужды? — Ровно полчаса,
Пока коней мне запрягали,
Мне ум и сердце занимали
Твой взор и дикая краса.
Друзья! не все ль одно и то же:
Забыться праздною душой
В блестящей зале, в модной ложе,
Или в кибитке кочевой?

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