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WEB Re-ClaM 第65回:クラシックミステリ原書刊行状況(2023/12)

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もRe-ClaM、そしてWEB Re-ClaMをよろしくお願いいたします。
早速ですが、昨年12月に刊行された原書の確認から。

Mary Robert Rinehart / The Great Mistake (1958, American Mystery Classics)

★Margot Bennett / Someone from the Past (1958, British Library Crime Classics)

★James Ronald / Murder in the Family (2023, Moonstone Press)

ラインハートは『大いなる過失』、ベネットは『過去からの声』としてそれぞれ論創海外ミステリから刊行されています。英米の復刊がそれぞれ翻訳アリとは、論創海外ミステリも存外手広く、いいところを拾っていますね。
前月に続くジェイムズ・ロナルド二冊目は長編 Murder in the Family と中短編二編を収録の構え。前月の本もそうですが、早めに手を付けたいシリーズです。なお、巻末の案内によると、第五巻までの刊行が既に確定した模様。熱いぜ。

冊数が少なくササッと終わってしまいましたので、併せて2023年刊行本のまとめなど。

ペンズラー編の American Mystery Classics、エドワーズ編の British Library Crime Classics の刊行はまったく安定しています。
例によってペンズラーのセレクトはオーソドックスであり、既に翻訳があるものが多いのは少し残念ですが。今年で言うと、C・デイリー・キング『海のオベリスト』、ラング・ルイス『死のバースデイ』、ヘイク・タルボット『魔の淵』などはあちらでは若干レアな作品ですが、日本のマニアにしてみれば既に読んでいるものばかりでしょう。
エドワーズのセレクトはロラック2、カー2、アンソロジー2で抑えつつ、ビリー・フーストンやデイヴィッド・マガーシャックといった変化球も混ぜてくる面白いものでした。自分はどちらもまだ読んでいないんですけどね。
むしろ今年光るところがあったのはもっと小さな出版社で、Galileo Publishing はいつものクリフォード・ウィッティングの他ジョーン・コッキンやマックス・マレーといったマイナー作家を出して可能性を見せてくれましたし、Moonstone Press は11月12月でジェイムズ・ロナルドを出し、来年に繋げてくれました。
残念と言えば、クラシックミステリを再発してくれる小出版社の雄、Dean Street Press が(おそらく)活動を休止してしまったことです。6月頃、すべてを一人で取り仕切っていた編集者の方が若くして亡くなられて以降、動きが停まってしまっています。FacebookやXの更新は妹さんと名乗る方が続けておられますが(既刊宣伝のみ)、あれほどの情熱をもって進めておられた業務を引き継ぐことの出来る人はいないでしょう。全作紹介の勢いだったのが途中で止まってしまったブライアン・フリンやモーレイ・ダルトンについては、多分どこの出版者も引き取れないでしょう。今更ですが、追悼の意を表したいと思います。
こうなると、電子書籍のみの激安出版社 Black Heath Classic Crime が年頭に何冊か出たきり止まってしまったのも気がかりです。こちらは誰がどのようにやっているのか全く分からない出版社なので、事情を追うこともできませんが……

来年(もう今年ですよ)も、面白い古典作品が次々復刊されることを祈りたいと思います。

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