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WEB Re-ClaM 第56回:クラシックミステリ原書刊行状況(2023/3)

Vincent Starrett / Dead Man Inside (1931, American Mystery Classics)

★John Dickson Carr / The Black Spectacles (1939, British Library Crime Classics)

★Dorothy Salisbury Davis / A Gentle Murderer (1951, Library of Congress Crime Classics)

今月の新刊は三冊。
ヴィンセント・スターレットは、日本では『笑う仏』(以前解説を書きました)が翻訳されている作家。いやむしろ、『シャーロック・ホームズの私生活』というシャーロッキアンとしての研究本の方が知られているかもしれない。アーサー・マッケンを米国で紹介した書誌学者としての顔も持つ(あまりにも紹介したかったので無許可海賊本を出し、後に著者から怒られたという凶状持ち)、まあとにかく異様にバイタリティに溢れたビブリオマニアである。そんな彼が書いた謎解きを軸にした私立探偵小説が、この Dead Man Inside。スターレットの本は過去に Mysterious Press(電子のみ)でかなり復刊されていて、本作はその紙版という位置づけだと思われる。
ブリティッシュ・ライブラリー・クライム・クラシックスによるジョン・ディクスン・カーの復刊もかなり進んできて、今回は『緑のカプセルの謎』(の英版題名)。毎回思うが、こういうのは実にありがたい。
ドロシー・S・デイヴィスの A Gentle Murderer はポケミスの初期に『優しき殺人者』という題で翻訳された作品。デイヴィスはかなり息の長い作家で、1950年前後から書き始め(本作は最初期作)、2000年頃まで長編を発表し続けた。亡くなったのも2014年で、98歳だったというから驚き。MWAのグランドマスター賞も受賞しているが、長編の翻訳は本作と『暗い道の終わり』の二作のみと寂しい感じ。短編はほぼ紹介されているので、読んでみようかな。


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