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WEB Re-ClaM 第57回:クラシックミステリ原書刊行状況(2023/4)

Dolores Hitchens / The Alarm of the Black Cat (1942, American Mystery Classics)

★Billie Houston / Twice Round the Clock (1935, British Library Crime Classics)

★Moray Dalton / The Mystery of the Kneeling Woman (1936, Dean Street Press)

★Witting, Clifford/ Subject: Murder (1945, Galileo Publishing)

 新年度が始まって一か月が経ちましたが、原書も色々刊行されています。
 ドロレス・ヒッチェンズ The Alarm of the Black Cat は、翻訳もある『黒猫は殺人を見ていた』(ハヤカワ・ミステリ、2003、D・B・オルセン名義))に続く老嬢探偵ものの第二作。ヒッチェンズはこの二月に傑作ノワール『はなればなれに』(新潮文庫)が出たばかりですが、こちらのコージー風作品の翻訳も期待したいところ。
 ビリー・ハウストン Twice Round the Clock は、叢書の編者マーティン・エドワーズの隠し玉。戦前の英社交界の花として知られたハウストン姉妹の一人が刊行した「一発屋」的作品です。エドワーズがこの手の惹句で紹介している作品には割と当たりが多い気もしますがさてどうか。
 ディーン・ストリート・プレスのモーレイ・ダルトン紹介も佳境。今回は
The Mystery of the Kneeling Woman に加えて、Death in the Dark (1938), 
Death in the Forest (1939), The Murder of Eve (1945), Death at the Villa (1946) の計五冊が刊行されています。この出版社について心配なのは、これまでクラシックミステリ部門の刊行を一手に引き受けていた編集者が、今年初めに若くして亡くなられたこと。フェイスブックの公式アカウントでは、今後もDSPはクラシックミステリ刊行を続けていくと告知しているが、パワーダウンは否めないでしょう。
 新興のガリレオ・パブリッシングがクリフォード・ウィッティングを断続的にではあるが復刊し続けているのは嬉しいところ。日本では『知られたくなかった男』(1939)、『同窓会にて死す』(1950)の二作が論創海外ミステリから翻訳されていますが、地味にいい作品を書く作家なのでもっと紹介されるといいのですが。今回復刊された Subject: Murder は表紙からも分かる通り軍隊(国防軍)がテーマ。既存シリーズで探偵役を務める刑事が徴兵され、組織の中で殺人事件の謎を解かなければならない、スピンアウト的な作品のようです。

 今月末には第36回文学フリマ東京が行われます。Re-ClaMの出展物については、過去の記事をご覧ください。どうぞよろしくお願いいたします。


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