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WEB Re-ClaM 第60回:クラシックミステリ原書刊行状況(2023/7)

★Ed. by Otto Penzler / Golden Age Bibliomysteries (2023, American Mystery Classics)

★Ethel Lina White / The Wheel Spins (1938, British Library Crime Classics)

★Clifford Witting / Let X Be the Murderer (1947, Galileo Publishing)

今月の目玉は、オットー・ペンズラー編のアンソロジーと見て間違いないでしょう。アメリカ作家の短編を集めたシリーズの第三弾で、テーマは「ビブリオミステリ」となっています。前回の「密室ミステリ」ほどの華はありませんが、やはり人気のテーマですね。
特に注目すべきは、ローレンス・G・ブロックマンの長めの中編(ほとんど長編)"Death Walks in Marble Halls" です。元々 The American Magazine に発表された作品で、後にデル・マップブックにも収録されました。ニューヨーク公共図書館を舞台にした、作者のキャリアの初期に属する殺人ミステリですが入手が難しく、ここに復刊されたのは慶賀と言えます。
ヴィンセント・スターレットのホームズパロディ「珍本『ハムレット』事件」や、クイーン「三つのRの事件」、キング「古書の呪い」、アンダーソン「贋札」など既訳の名作も数多く収録されており、大満足の一冊と言えるでしょう。
エセル・リナ・ホワイト The Wheel Spins は、既訳の『バルカン超特急――消えた女』(小学館)の原書。ホワイトも原書の復刻が進んできていますが、日本で再紹介するのはなかなか難しいか。面白い作品もあるとは思いますが……要研究ですね。
クリフォード・ウィッティング Let X Be the Murderer は、『同窓会にて死す』『知られたくなかった男』(いずれも論創海外ミステリ)の作家の初期作。版元の Galileo Publishing はウィッティングの作品を続けざまに復刊しており、The Case of the Michaelmas Goose (1938) の復刊も今後予定しているとか。倒叙ミステリというこちらにも期待したいところ。
熱い日が続き、またコロナ感染症も増加傾向にありますが、皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。

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