見出し画像

創造のサイクルを支える、音楽著作権をめぐる歴史と未来。

ネットワ-ク音楽著作権連絡協議会(NMRC)」の活動25周年を記念したシンポジウムが先日開催されました。

ネットワ-ク音楽著作権連絡協議会(NMRC)とは
インタ-ネットを含むネットワ-ク(以下「ネットワ-ク」という)上での音楽利用のための許諾ル-ル制定に向けた情報収集、研究および関係諸団体間の合意形成を目的として、(中略)発足した任意団体

引用元:http://www.nmrc.jp/towa.html

レコチョクが加盟する「デジタルミュージックサービス協議会(DMSA)」もNMRCに参加をしています。
シンポジウムの対談にレコチョクの常務執行役員である山﨑さんが登壇するということで、「これは勉強になるかも!」と受講を申し込んでみました。
 
インターネットの普及や高速化、ガラケーからスマホへなどデジタルサービスを取り巻く環境が大きく変化してきた25年間、音楽ビジネスの発展のために音楽配信事業の利用者代表として走り続けてきたNMRCの歴史と大きな役割を学ぶことができたので、今回は私、ゆるりの視点でレポートします!

NMRCの歴史:アメリカでの音楽コンテンツ配信普及の動きを受けて設立(1997年)

当時、アメリカでインターネットを介した音楽コンテンツの配信が進んできたことを受けてNMRCを設立したそうです。
 
日本でもインターネットを介して音楽コンテンツを扱うビジネスが予見されるなか、音楽配信に限らず、映像やゲームなどの分野でも音楽著作権に関する共通の悩みや課題があったそうで、音楽著作権管理団体と円滑な協議を行う役割が必要という考えがあったそうです。
 
日本ではまだ音楽配信サービスがない頃でしたが、アメリカでの動きは日本にもやってくると見越し、いち早くアメリカの著作権関連団体を訪れ、想定される課題やビジネスの可能性を学びに行ったとお話されていました。
 
NTTドコモの携帯電話向けインターネットサービス「iモード」の開始が1999年なので、近い将来必要になる音楽著作権使用ルールの整備をまさに取り組まれていたんだ・・と当時の様子を想像しました。

NMRCの歴史:音楽配信サービスの本格化を実現した新しいルールづくり(2000年~)

2000年に著作権等管理事業法が制定され、NMRCは「音楽配信業界の利用者代表」として、音楽著作権管理団体との協議窓口機能を正式に担っているそうです。
 
着信メロディ配信サービスの著作権使用料率協議では、配信事業者から新しいビジネスモデルの可能性をプレゼンされたそうです。JASRACも大きな新規市場になるという将来性に期待して、新しい使用料規程が決まったとお話されていました。
 
配信事業者や著作権者など、異なる立場にある方々同士が議論を行い、新しいルールをつくるという過程は、想像以上の難しさや苦労があるんだろうな・・と感じました。
 
人々の暮らしに浸透し、新しい音楽の楽しみ方を提供するサービスを起こすという熱意を汲んだという元JASRAC理事長・菅原氏のエピソードからは、まだ見ぬ未来への期待や勢いみたいなものが感じられて胸が熱くなりました。
 
2002年にはレコード音源を用いた「着うた」の配信が開始され、2004年には「着うたフル 」の配信が開始されたので、音楽配信ビジネスの進化の真っ只中にレコチョクがいたんだ・・!と再認識しました。

NMRCの歴史:時代の変化と共に進化(2005年~)

TVerやNetflixのような映像コンテンツの配信サービスも音楽の利用と関わりが深い分野ですが、この分野の料率規程が合意されたのが2005年。
動画投稿サービスでの音楽コンテンツ利用の許諾が開始されたのが2007年。
個人ブログ等での歌詞掲載利用の許諾開始が2012年。
サブスクリプションサービスの料率規程が合意されたのが2015年。
 
このようにNMRCと音楽著作権管理団体は、時代の変化と共にインターネット上での音楽コンテンツの利用が拡大していき、新しいサービスに応じた著作権使用が円滑に進むための活動に尽力されてきたそうです。
 
変化のスピードが加速する昨今、2021年には使用料規程の解釈や考え方の共有を目的に実務担当者によるワーキンググループを立ち上げ、スピーディーな解決のためディスカッションを継続しているということでした。

音楽ビジネスの変遷と成長には音楽著作権使用のルールづくりが必要不可欠

このワーキンググループには、常務執行役員の山﨑さんが担当者として参加しています。
 
現在、ワーキンググループではweb3時代を迎え、「メタバース空間での音楽視聴」やNFT技術を活用した「音楽コンテンツの二次流通」、「グローバルビジネスを前提とした法制度」などの課題に対する議論も始めているそうです。
 
山﨑さんに当時の様子や、ワーキンググループで今まさに取り組んでいることなどを伺ってきました!


ゆるり:レコチョクがDMSA・NMRCに参画している経緯や背景を教えてください。
 
山崎:2001年にレコチョク(当時はレーベルモバイル)が設立され、「着うた」や音楽ダウンロード配信などレコード音源を使ったコンテンツ配信事業を推進していくわけですが、その後も聴き放題サブスクリプションサービスなど時代の変遷とともに音楽配信サービスも多様化していくのです。

そんな中で、NMRC加盟団体に所属していなかったレコチョクが著作権管理事業者と直接協議するためには、利用者代表であるNMRCに加盟しなければ、意見を届けることができませんでした。
そこで、複数のレコード音源を使った音楽配信事業者と共に任意団体「デジタルミュージックサービス協議会(DMSA)」を立ち上げ、DMSAがNMRCに加盟することで我々の意見を著作権管理団体に届けることができるようになりました。
現在、私はNMRCの副代表世話人として著作権管理団体との協議の場に参加させてもらっています。
 
ゆるり:これまでの歴史を振り返って、最も印象的なエピソードはありますか?
 
山崎: DMSAがNMRCに加盟してからの中で最も印象的だったのは、JASRACとのサブスクリプション規程新設に関する協議です。

著作権等管理事業法では、指定著作権等管理事業者であるJASRACは規程の新設・改定において、利用者代表と協議が出来ることになっています。
協議によって双方の合意を得て使用料規程が決定するというのが本来の姿ですが、2014年のサブスクリプション規程新設の協議では双方の主張が平行線のまま合意が得られていない中で、JASRACが文化庁に規程改定の届け出を出してしまいました。
NMRCは文化庁に再協議申し入れをしましたが、それでも協議は不調のまま最終手段となる文化庁長官の裁定に委ねられる一歩手前まで進んでしまいました。
これは前代未聞の状況でしたが、その後、文化庁のご尽力もあり文化庁長官の裁定は何とか避けるよう協議を重ね、一旦の落としどころを模索した結果、現在のサブスクリプション規程(JASRAC使用料規程 第11節の中)が合意され現在に至っています。
 
ゆるり:新しいルールを作ることは一筋縄ではいかないですね。ワーキンググループではどのようなディスカッションをされていますか?
 
山崎:web3やメタバース、仮想通貨による取引などのディスカッションがこれからの大きなテーマとなると考えています。今までの考え方で新しい概念を紐解き、既存の著作権使用料規程をあてはめていく事では解決できないことが今後多くなってくるのは明らかです。
著作権管理事業者と著作権利用者の双方が、今後の音楽の利用方法が「どう変化し、何が新しい概念になるのか」を想像しながら認識合わせをした上で、あるべき著作権使用料について議論を重ねていく事が重要であり、これらをワーキンググループで推進していきたいと考えています。
 
ゆるり:まさに未来の音楽ビジネス全体を描いているんですね。これまでの経験も踏まえ、新しいルールを整備・検討していくなかで、山崎さんが大事だと考えていることを聞かせてください。
 
山崎:今後も、我々は常に新しい時代の、新しい音楽の楽しみ方を創造していきたいと考えています。
これにより、著作者・著作権者に対して今まで以上に権利者の収入が増え、創造のサイクルが回ることにつながることを願っています。



音楽著作物を大切に扱うレコチョクの社内体制

レコチョク社内には著作権・印税管理グループという部署があります。
大切な音楽著作物を扱うプロとして、社員に向けて著作権関連の勉強会を開催したり、最新の動向をキャッチアップして社内啓発を推進しています。
 
例えば、私も「noteで歌詞の一部を引用して紹介したいんだけど問題ないのかな?」みたいな初歩的なところで困ったときにも相談をしました。

レコチョクが新しいサービスを企画する時には既存のルールの解釈に基づいたアドバイスをくれたり、必要に応じて新しいルールづくりを働きかけたりなど、「音楽」の権利をしっかり理解し、大切に扱うことを実現する重要な役割を担っている部署です!

おわりに

20代の私が物心つく前から音楽ビジネスの発展のために尽力し続けているNMRCのシンポジウムを受講して、当たり前のように今まで利用してきたサービスの背景には、先人の方々が著作者・著作権者の権利を適切に守りながら、音楽がより多くの人に届けられるようにと様々なルールを整備してきた歴史があることを知りました。
 
音楽を創る人、音楽を聴く人、新しい音楽体験を提供する人・・
それぞれの利害が相反するのではなく、より良い未来の実現のために話し合い、時代に合わせた新しいルールや仕組みを作ることは、人々の暮らしを豊かにして、新しい文化やサービス・市場を創造するだけでなく、アーティストが安心して制作活動に集中できて、素晴らしい音楽を私たちに届けてくれることにつながっているんだとわかりました。

そんな、重要な役割をNMRCが担っているんですね。
 
先日私がレポートした「音楽×NFT」をはじめ、メタバースなどテクノロジーも大きく進化しweb3時代と言われる今、新しい音楽の楽しみ方やビジネスの可能性もますます広がっています。

 
そんな時代の変化も見据えて、レコチョクは「音楽市場の最大活性化」をミッションに「音楽×デジタル」の領域で日々挑戦し続けています。「音楽×デジタル」に課題を感じている方がいらっしゃれば、ぜひレコチョクへご連絡ください!

▶ お問い合わせはこちら ◀