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#16 私にとっては大きな出来事でも誰かにとっては些末な出来事

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いったん帰宅し仮眠を取った後、また稽古場へ


昨晩の事を思い出したら、目も合わせられ無い

いつもの通りに早めに稽古場へ行き
念入りに掃除をした後、団員が集まるまで
鏡の前でストレッチをして待つ。

自分があまりにも変な顔をしていて鏡をまともに見れない。
顔が紅潮している気がするし
なんだか鼻の下が伸びている、上唇がムズムズしている。
これ、誰かに見られたら何か言い当てられるんじゃない?
そうこうしているうちに
珊瑚さんごさんや青竹あおたけさんが稽古場入りし
菖蒲あやめさん、高麗こうらいさんも含め
今日は全ての団員がそろって稽古を進める事になった。

菖蒲あやめさんの機嫌がすこぶる良い

高麗こうらいさんが来たからか?菖蒲あやめさんの機嫌が良く
誰かをターゲットにしたイビリもこの日は無かった。
菖蒲あやめさんの怒鳴り声で委縮する稽古が続いていたが
珍しくスムーズに稽古が終わり、必然の流れで団員皆で飲みに行くことに。
スムーズに稽古が進むともちろん上機嫌の高麗こうらいさん。
高麗こうらいさんから、団員の恋愛観を聞きたいとお題を投げられた。

高麗こうらいさんの脚本は当て書きなので
団員の素の表情を掴みたいらしく
たまにこうやって普段の君を知りたい的な話題をふってくることがあった。
ただ、あまり人に素性を知られるのが好きではない私は
のらりくらりと、かわしていた。

青丹あおは若者らしい爽やかさで”コイビト”の好きな所を語り始めた。
『自分の傍で眠っている姿を見るのが好きなんですよ』
『起きた時に目が合うの、良くないですか?』
という言葉を聞いて、血の気が引いた。

青丹あおには”コイビト”がいるんだ


ショックを隠しきれない


団員みなに冷やかされる青丹あお
『あらら~青丹あおくんは大人ですね』
隣で眠った女性と目覚めた時に目を合わせる、というフレーズが
気に行ったらしい高麗こうらいさんも嬉しそうに冷やかしている。

私はもう、その場に居続けることが出来なくなった。
青丹あおと特別な関係になったと思って
ウキウキしていた自分がとにかく恥ずかしくて
早くこの場から逃げ出したかった。
『昨日も朝までコースだったので今日はそろそろ帰ります』
と席を立った。

皆も、それじゃお開きにしようかと
いつもの飲みより、かなり早くの解散となった。

若い子のおふざけを真に受けて恥ずかしい


涙がジワジワ止まらない

青丹あおが悪いんじゃない。
ちょっとした悪ふざけに本気になったり
つけ入る隙を作ってしまった私が悪い。

だけど、あんな風に半日も経たないうちに
ドキドキしている最中に突き落とされると思わなかった。
もっと気持ちが風化してから
コイビトいたんだって知るなら
そうだったんだ、勘違いしてたな~って、ショックも小さかったのに。

悔しいのか悲しいのかわからない涙がにじんで止まらなくなり
本格的に泣くことになる前に電車に乗り込みたくて
自分の沿線の駅まで早足で向かった。

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