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「アムトラックに乗る」の巻

 鉄道マニアでなくても、アムトラック(AMTRAK)という言葉は聞いたことはあるだろう。アムトラックは路線を持たない。日本ではJR貨物のような感じだ。いろんな鉄道会社の路線を使う、アメリカの旅客列車運行専門の公社のことだ。
 LAにいると、長距離を列車で移動するということは余りないのだが、シカゴ行きの超長距離列車 "Southwest Chief" がある。一度それに乗ってシカゴに帰るという人と、LAX(ロサンゼルス国際空港)からのシャトル(乗合大型タクシー)に乗り合わせたことがあった。飛行機を乗り継がないで、わざわざその列車に乗るという気持ちは、わからないでもない。
 長距離鉄道の旅は、なかなかオツなもんだ。大阪ー青森間の昼間特急『白鳥』や、夜行急行『きたぐに』で直江津まで乗車したことがある。旅情を感じるにはもってこいのアイテムだ。上海からの帰途、わざと伊丹行の飛行機に乗らないで(関空がまだなかった頃だ)、長崎行(JALにそんな路線があったのだ)に乗って、その夜の寝台特急「あかつき」で大阪へ帰ったことがある。LAーシカゴの2泊3日に比べるとスケールは小さいが。
 ヨーロッパでは結構列車に乗った経験はあるのだが、割とちまちま乗っただけなので、時間と金があれば、いつかは大陸横断鉄道に乗ってみたいと思っている。今まで最長はフィレンツェ-ウィーンか、マドリード-バルセロナ(「タルゴ」に乗車した)。中国では北京-上海で古い緑色の寝台列車に乗った。朝6時に車内放送で起こされたが、音を切って寝ていたら車掌に「いつまで寝ているんだ」と怒られた。35年前の話だ。同じ長距離でもシベリア鉄道はちょっといやだ。聞くところによると、来る日も来る日も同じ景色ばかりで、アタマがおかしくなりかけるらしい。きっとロシア人は人々をあの列車に押し込んで、共産主義思想を刷り込んでいったに違いない。
 LA近郊で列車乗る機会があるといえば、LAを中心に、北(北西)はサンタバーバラ(Santa Barbara)方面、南はサンディエゴ(San Diego)を結んでいる冒頭写真の "Pacific Surfliner"(2005年12月2日撮影)を使う時くらいだろう。仮に乗ったとしても、ターミナルに到着してからは、車が無いとちょっとキツい。だからやはり、好き者じゃないとナカナカ乗ろうとは思わないし、そうしない方が良いのかも知れない。
 さて、筆者は好き者なので、メキシコのティファナ(Tijuana)に野暮用があった時に、先方がサンディエゴ駅まで車で迎えに来てくれるというので、2回目の利用となった。
 非常に快適、とは言えないけど、LAからサンディエゴまで、混雑しがちな高速を運転して移動するよりは、よほど便利。LA駅(Union Station)では、昔の始発駅のように、"Pacific Surfliner" の看板の下に並ばされるが、これは無意味だ。義務ではないので、到着ホームがわかっているなら、勝手に入ってそこで待っていた方が良い。特に、LA始発ではなく、サンタバーバラ方面からの直通列車の場合、乗り遅れるんじゃないか?と思うくらいのんびりしている。
 コーチ(エコノミークラス。普通車)は結構混んでいるので、行楽シーズンなどは、絶対にビジネスクラス(グリーン車相当)がオススメだ。差額は当時$12ほどだったと思う。それで、マフィンなどのスナック、ソフトドリンクはおろか、つまみ(乾きもの)とワインまで無料でついてくる。筆者が乗ったこの日は、ビジネスクラスはガラガラだったからかもしれないが、途中からは食べ放題状態になっていた。マフィンなど土産にしてしまった。
 途中の風景は、ガイドブックにあるように、太平洋の海岸線は美しいが、窓ガラスが汚れているので、余り期待しすぎるとがっかりすると思う。サンディエゴが近づくと、海も良いが山手にも注目してほしい。私たち日本人は湿地帯の風景に見慣れていないので、結構面白い。ついでに言うと、この列車はアナハイム(Anaheim)を通る。駅からバスに乗るとディズニーに行ける。
 チケットはサイトで予約して、駅の窓口で購入することをお勧めする。窓口の係員は恐ろしく手際が悪いので、ぎりぎりにいくと多分乗れなくなる。そして、米国内の旅行であってもパスポートをお忘れなく。

拙ブログ『無闇にアメリカに来てはいけない』より「終着駅の風景」(2006年10月14日 00:00付)に加筆修正した。

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