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#10 内田勘太郎

音楽が好きだという人は多いだろう。
音の羅列に過ぎないのに何故これほどグッとさせてくれるのだろう。
まるで生きてゆくココロに弾みを与えてくれるかのような。

内田勘太郎という音楽家がいる。
70年代にデビューした憂歌団というバンドのギタリストであり、今や日本を代表するブルースギタリストである。
本人はブルースギタリストと思っていないかも知れないが。

彼のスタイルを代表するものとしてスライドギターと呼ばれる奏法がある。
(内田勘太郎=スライドというイメージを持つ人も多いと思う。)

これはブルースというジャンルではしばしば見かける奏法で、ガラス瓶の首の部分を切り取ったり、金属製のパイプ(椅子の脚であったり、工具のソケットレンチであったり)、又は薬の入っていた瓶などを指に嵌め、ギター弦の上を滑らす奏法である。
独特のサウンドを持ち、ブルージーであり、聴く者の心を捉えて離さない大きな魅力がある。

内田勘太郎氏は古いカルピスの瓶の首を愛用し、一聴しただけで "内田勘太郎の音" と分かる「この人にしか出せない」サウンド、トーンを持つ名手である。

私はブルージーなニュアンスを持つギターが好きなので、昔から氏の大ファンなのだ。
バンド活動の後、ソロになりブルースという範疇に留まらず、ジャズスタンダードや自身が若い頃から聴き馴染んできた楽曲のカバー、(その選曲も私の琴線に触れるものばかり。)またオリジナル曲などを次々と発表している。

作家としての力量も素晴らしく、近年の作品を聴くと、長年の音楽生活を経て豊かな実りの時を迎えているように感じる。

ソロ作だけに留まらず、甲本ヒロト氏と共作した「ブギ連」はガツンと、奇妙礼太郎氏との「アイコトバハ」はスッと胸に入り込んでくる素敵なアルバムである。

初めて聴く曲もどこか懐かしく、きっとこの先この風景を見るのだろうなと予感させるような、謂わば「未来の記憶」と言いたいような音空間に浸らせてくれる。
これは想像だが、何年も前に氏が移り住んだ、沖縄での生活による影響もあるのかも知れない。

そして彼のプレイや楽曲が好きということもあるのだが、何よりその人となりに好感が持てるのだ。
有名人にありがちなナニカ(よくは分からないが)は全く感じず、そこらにいるヒトのような感じ、つまりは私と同じ地平に立っている感に溢れているのだ。

youtubeで氏のチャンネルを視聴したり、日々の想いや出来事、自身の生い立ちを朴訥と語るstand.fm "秘密の牛小屋"を聴いているとそう思う。

しかしそれは、あくまでも"生活人"としてであって、"ミュージシャン"としてはとんでもない高みにいるのは言うまでもない。
私も下手なギターを弾くのだが、勝手に氏を「師匠」と思っている。
要は自称弟子。
それでいいのだ。

「先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし」

恐らくはそう思っていらっしゃるでしょうが。

えらく上から目線で語ってしまったことは赦してください、勘太郎さん。

一☆一☆一☆一

定期的に配信するミニライブを楽しんだり、またその後のメンバーシップによる、愉快なコメント参加型の "Live After Hours" はこちらから。

内田勘太郎氏の生い立ちやレコーディング裏話、色々なミュージシャンとの関わり、好きな食べ物等を毎日放送するstand.fm "秘密の牛小屋"はこちらから。
("秘密の牛小屋"の意味とは?)

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