見出し画像

いろいろ仕入れる前の『重力と呼吸』印象まとめ

ミスチルのアルバム、『重力と呼吸』発売されましたね。


新譜はサブスクなしかよ!とがっかりしつつ、25年来のミスチル信者としては詩集とセットで購入しました。

桜井さんのインタビューが出始めてますが、読む前に何回か聴いたところの感想を。
インタビュー読んで再度聴いたらまた印象変わるかもですが、現時点でのものです。

前半が…

スケール感のあるバンドサウンドの「Your Song」はアルバムのオープニング感があるものの(カウント始まりはあがる)、個人的にはここにきて「こういうシンプルなやつもできます」的な「海にて、心は裸になりたがる」がきつかった。歌詞も「SNSの向こう側にある生身の人格」的な話はミスチルの歌詞のテーマとしてよくわかるが、それこそ川谷絵音のように実際にそのフィールドで発信してる人に比べると現場感がない。「here comes my love」の壮大さも、悪い意味でアルバムラストっぽい。アルバムの曲数がどんどん少なくなって「短期決戦」が求められる時代に、この構成は結構きついのではないか。そういった時代的な要素は差し引いても、前半にいわゆる「カラフルな感じ」の曲(「エソラ」でも「Marshmallow day」でもよいですがそういうやつ)が欲しかった。


箱庭〜addictionが垣間見せた希望

そんなアルバムは、「箱庭」「addiction」で印象が変わる。「箱庭」のさらりとしたポップさは「ヒカリノアトリエ」でのトライが、「掌」あたりを現代的にアップデートした感のある「addiction」は『REFLECTION』前の未発表曲多めツアーで獲得したバンドのダイナミズムが生きてるのかなとか。この辺のアプローチは今後のミスチルの指針になるんだろうか。

包み込むhimawari

今作のハイライトは何と言っても「himawari」ではないだろうか。シングルで聴いた時も大感動だったけど、合唱っぽいコーラスが印象的な「秋がくれた切符」(これもいい歌)が来て、そこからの「himawari」という流れはほんとに素晴らしい。性急なキャッチーさじゃなくて、じんわり心のひだに染み入ってくる雄大なメロディを鳴らすこの2曲は新たなミスチル像も感じさせてくれるわけですが、優しげなアレンジでそれをストレートに伝える「秋がくれた切符」に対して「himawari」はそんなメロディとバンドサウンドのコントラストが最高。序盤のまどろっこしさもここでチャラになる。


いまだに深海とやりあってるの?

そもそもアルバムのタイトルが出た時点で「これは『深海』からの決別か?」みたいな話が出てましたが、アルバムのラストチューン「皮膚呼吸」で明らかに「海から出てきた&かつて海に潜ってた」的なメタファーがばんばん出てくるわけです。いやいや、その話は『IT'S A WONDERFUL WORLD』で終わったのでは…?なんかまだこの話やってんのかという印象。ただこのタイミングで改めて<自分探しに夢中でいられるような子供じゃない>とはっきり歌うに至ったことを考えると、結局『IT'S A WONDERFUL WORLD』から直近までのミスチルは「『深海』の落とし前をつけた」んじゃなくて「『深海』の落とし前から目をそらして違う世界に行こうとしていた」という解釈もできなくはないかなと。

総評

とにかく前半の流れが悪いので大好きなアルバムかと言われると口ごもってしまいますが、個人的には10年代のミスチルのアルバムの中では一番聴きどころがあるかもしれない。2曲目に「エソラ」「Marshmallow day」的なやつがきて、4曲目にも「箱庭」と同印象のさりげないやつが来てたら優勝してたかも…という妄想。ちなみに『深海』に対する『BOLERO』みたいな関係の作品が『重力と呼吸』にもあるのでは?という見方がある。そういうのあるならそっちの核は今回収録されていない「ヒカリノアトリエ」(とても好きな曲です)だと思うので、年間ベストの上位の席を空けてお待ちしております。



というわけでこれから各種インタビュー読みます

こちらも



もし面白いと思っていただけたらよろしくお願いします。アウトプットの質向上のための書籍購入などに充てます。