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天界の食いしん坊 [後編]

前回👇の続きです。

そんなとんでもない神に食べ物をたかられるようになってしまったわたくし。

来る日も来る日も、発想が斜め上な霊障を引き起こされては仕方なくお供物を捧げる日々が続きました。

正直、釈然としない日々。

そんなある日、その神が姿を現すと、私の口が勝手に動いて、「〇〇〇のばーか」と口走りました。

慌てて自分の口を塞ぎました。

その頃は口寄せも霊視もかなりの未熟者でした。

最凶最悪とはいえは、いくらなんでも神に「ばーか」は罰当たりすぎる。そう思いました。

するとその神がギッとこちらを睨みつけて、「ばーか」と言い返してきました。

やばい・・・怒っている?

焦っているわたしの心とは裏腹に、またしても自分の口が勝手に動き出し、「〇〇〇のあーほ」と言いました。

すると向こうも「あーほ」と返してくる。

しばらく、「あーほ」「あーほ」の応酬が続きました・・・

向こうも睨みつけてくるけど、自分の中に入っている何者かも物凄い形相で睨み返しているのを感じました。

しばらく膠着状態が続いたあと、向こうがふっと姿を消して居なくなりました・・・

すごくホッとしたのと同時に、わたしの中にいる存在は一体誰なんだろうと思いました。

「あなたは、誰ですか・・・?」

そう聞くと意外な答えが返ってきました。

「霊体だよ。」

え・・・

自分の霊体?ってことは、自分やないかーい!

神にバカだのアホだのと言ってしまった・・・

「大丈夫なの?」と聞くと、霊体は自信満々に「大丈夫。」と答えます。

「次に来たら煮るから。」と。

にる!!!????

「煮る。」

と念を押してきます。

あんなでかくてすばしっこい神をどうやって煮るの???

かなり不安になってきて、師匠に連絡しました。

自分の霊体が〇〇〇を煮ると言ってます、と。

すると師匠が、「さすが霊体さん」と感心してるではありませんか。

「煮るのは正しい。」

え!!!!???

「あいつ、火山担当でマグマ風呂に浸かってたりするくせに、お湯だと火傷する。」

「煮たら1日くらいは大人しくなるかもしれない。」

と・・・

霊体のあの自信満々な感じ。

勝算はあるということなのだろうか。

「あいつを煮ることができるのは天界の鍋と炎だけだと思う。天界の鍋はすこぶるでかい。天界の竈門と鍋と炎に救援要請したらいいよ。」と教えてくれました。

天界の道具は創造主が作ったもので、全て神格を持っていると教えてもらいました。

だからプロ意識がすこぶる高いし、その力は神に匹敵すると。

まじすか・・・

霊体はどうやら救援要請をしたようでした。

それから数日後、決戦はすぐにやってきました。

また食べ物をたかりに例の神が現れました。

ふと見ると、竈門、鍋、炎が待ち構えていました。

その神の姿をみると、自分の中で、一気に頭に血がのぼるのを感じました。霊体が怒ってるんだと思いました。

「許せないっ!!!」

と霊体が口を動かした次の瞬間、その神につかみかかり、あっという間に鍋の中に投げ入れました。

次の瞬間、誰かが鍋の蓋をしめて押さえつけました。

「あつい!いたい!」というような声が聞こえてきましたが、霊体はお構いなし。鍋の蓋を押さえつけていました・・・

しばらくすると静かになりました。

師匠に連絡すると、すげーなと呆れていました。

それから1日近くは大人しく、被害はありませんでした。

霊体がまた現れるか心配だからそばにいると言ってきました。

優しい・・・

そこからというもの、滅多に不当にたかられことはなくなりました。

しばらくあまり姿を見ない日々が続きました。

そんな平穏なある日、仕事中に急に何かが体に刺さる感覚がするようになりました。

ドスン、ドスンと。

感覚を開けながら、何かが飛んできて刺さっているような感覚がしました。

イメージ的には弓矢でした。

気にせず帰宅して寝ましたが、寝ていても時々ドスン・・・ドスン・・・と間隔を開けて体に何かが刺さります。

しかも結構痛い。

一晩中刺さり続けました。

朝起きてから師匠に連絡をしました。

すると、先輩霊能者が3日間の旅行に行ってるからしばらく連絡が取れない。少し我慢してくれと言われました。

術というのは対象の見極めが大切で、対象が正確に見極められてない状態ではどのような力を使ってもからぶると。

師匠には霊視能力も霊媒能力もありません。

私の能力もその頃は不十分でした。

先輩の帰還を待つことにしました。

そこから日中も弓矢でいられるような感覚が続きました。

最初は痛みだけでしたが、だんだんと体がしんどくなってきました。

家に帰ると夜はとにかく大勢の霊に部屋を取り囲まれている気配が充満していました。

どうやら武士の霊のようでした。

師匠にそれを伝えると、師匠の方にも繋がってしまったようで、「こっちにも弓矢が届いた。笑」と連絡がきました。

能力の有無を問わず、霊的存在に意識を向けると繋がった状態になります。

これは回線(ひも)のようなものでつながり、霊はそれをたどって移動してきます。

師匠はそいつら土地因縁だろうと。

土地因縁というのは、通称地縛霊のことで、土地に何かしらの因縁のある霊で、死後、その土地にい続けている霊のこと。土地因縁による霊障は、土地を離れれば影響はでないが、まれに力の強いものだと出張してくると。

出張!!!!!

とにかく元々このような霊はうちの土地にはいなかったはず・・・出張してきたのかなと思いました。

とにかく延々と弓矢でいられ続けていました。

3日目の晩、友人たちと飲み会の約束をしていましたが、もはや立ってるのがやっとな状態になっていました。

体調が悪いので、飲み会をキャンセルさせてもらい、バス停から歩いて帰っていると、途中で体が限界に達してしまいました。

しんどすぎて体が動かない。

家に帰りたいのに帰れない。泣きたいような気持ちになって路上に座り込んでしまいました。

すると次の瞬間、「隙あり!」というような気配がして、空からとてつもなく大きなものが降りてくる気配がしました。

それが、すぽーーんと自分の体の中に降りてきた瞬間、すくっと体が立ち上がりました。

そしてスタスタと歩き出しました。

!!!!!?

めっちゃくちゃ体が軽い。

軽快な足取りでそのままスーパーにスポンと入りました。

どこに行くんだろ?と思っていると、奥の方に直進していきました。その途中で流れるように大きいサイズのプッチンプリンを握りしめると、さらに奥へと進んでいきます。

そしてピタっとお惣菜コーナーで立ち止まったかと思うと、迷うことなく8個入りのたこ焼きのパックを鷲掴みにしました。

そのままスルスルとレジに向かうとスムーズにお会計、そのままスーパーを出るとスタスタと歩いて家に戻りました。

そのまま食卓にどん!とプリンとたこ焼きを置くと、無言で食べ始めました。いや、食べるというより、飲んでいる・・・

丸呑みのような状態で、プリンとたこ焼きをごくごくと吸い尽くしました。

その最中にも弓矢が届き続けていましたが、当たっても全く痛くない。
ドスンがチョン・・・くらいに感じました。

しばらくすると取り囲まれていた霊の気配がなくなりました。

全てをたいらげると、体から抜けていくのを感じました。

なんだったんだろう・・・

そこで師匠に連絡すると、師匠から、先輩霊能者が帰ってきたから連絡が取れたと。やはり500年前に合戦で死んだ土地因縁の霊で、約1500人の霊がいまだに合戦中だったようだと。その霊が合戦をしているところに、私が気がつかず、乗り込んでしまったようです。

「〇〇さん(私)の霊体がドスドスしてたらしい。敵がきたと思って射ったらしい。」

ドスドス・・・

「ドスドスってどういうことでしょうか?」

と聞くと、師匠が

「よくわからん。とにかくドスドスしてたらしい。」と・・・

まぁそれは置いておくとして

弓矢で初めていられたその日、仕事の買い出しで川沿いの電気屋に行きました。初めて行った電気屋でした。

師匠がそこにいたのではないかと。初めていく場所には気をつけた方がいいと言われました。

その地縛霊たちは成仏を望まず、まだ合戦を続けたいとのことだったので、怪我を治し、お弁当を支給しておいたとのことでした。

そういうパターンもあるのか・・・

そして何者かに助けられたと伝えたところ、それは〇〇〇だと。

あいつプリンの他にもたこ焼きも大好きだと。

先輩霊能者によると、武士の霊から飛んできた弓矢を叩きおったり、体に吸収したりしたらしい。

そう言われました。

その神が、我が家でプリンとたこ焼きを丸呑みにしていたころ、先輩霊能者は親戚のお通夜にいかれていたそうです。

こちらから姿を消した後、そのお通夜のせきにご馳走を食べに現れたそうです。しかし時すでに遅し、お通夜のご馳走はなくなった後でした。

それを見た〇〇〇が、先輩霊能者の姪っ子さんの体を使って大泣きをしたそうです。なだめるのが大変だったとそのようなことがメールに書いてありました。

ごちそう食べ損ねて大泣き・・・笑

いずれにしても、助けにきてくれてありがたいと思いました。

それから、たまに姿を見かけるようになり、仲良くもないけど、仲悪くもない、そんな関係になって現在に至ります。

おしまい。

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