失ったものの声がした
実家の冷蔵庫には必ず牛乳があった。お風呂のあとにはガラスのコップに注いでグビグビ飲んで、残った分を犬のキャブちゃんに舐めさせた。すっかり私とキャブちゃんの日課になってしまい、私がお風呂を上がるのを毎日扉の前で待つようになった。嬉しそうに全力でしっぽを振り、くるくると体を回転させて、コップが地面に降りてくるのを待っていた。
キャブちゃんが亡くなって5年が経ち、久しぶりに牛乳を飲んだ。大人になってからの牛乳は正直自分のためじゃなくて、キャブちゃんのために飲んでたようなものだった