0924

2024.5.4

 いまはまだ分からない。恋なのか否か。怯懦かどうかも、分からない。
 神妙な心持ちで音楽を聞けば以前は涙が溢れていたのに今はもう何も溢れてこない。目立って乾ききっている。メロディーだけは潤っている。

 朝、いつもは起きるのを躊躇う時間に今日は嬉々として起きた。シャワーを浴びて支度をする。予定より早く家を出た、はやる気持ちが行動に出るから。うかうかしていられないのは自分だけだったのかも知れないと思ったのは爆友が遅刻したからだ。
 まったく、今日は私が好きな人と会える日だというのに月下氷人(?)は意識が足りていないぞ!

 先月あたりから始めたアルバイト先で私は恋をした。恋に落ちた。故意に恋に落とされた。
 とにかくカワイイその人は仮にkと呼ぶ。
 よく知らない間に私はkを映画に誘っていた。するとkは私にアルバイトを紹介してくれた私の爆友も誘ってくださいとお言いなさった。この人は、爆友に恋しているのだと確かに感じた。同性愛者なのかと。おそらく誤りだ。
 私はあるがままに爆友を誘い、三人で映画を観ることになった。

 遅刻が確定した我々を気遣ってか、kも遅れると連絡があった。
 映画は12時40分から始まる。三人がその駅に集まるのは12時32分。間に合うのかコレと思いながらも電車は速くはならないから、乗り間違えないよう慎重になる。
 kよりほんの少し早めに着いた我々は改札を出て待っていた。
「あれ絶対そうだよ」と爆友は言った。
 近づいてみると尋常ではないカワイさを放った美人が立っていた。私は内心膝から崩れ落ちたしヒヤヒヤもした。こんな露出度の高い服を着た人だったなんて! と空に嘆いた。kは(当たり前だが)アルバイトの時はまったく違う印象で、キュートでセクシーだった。
 私の微笑は絶えず、爆友はそれを小突く。
 話していくうちにkはおっちょこちょいな所があるとわかった。仕事が出来る人間だからてっきりそんな事はないと勝手に思っていた。ただそんな所もステキだ。
 三人は映画の前にドリンクを──映画ではやった事ない厄介な“ドリンクバー式”のドリンクを購入し、館内へと向かった。闇に包まれたそこは最初のシーンが始まっていた。座っている人たちの足を時折踏むのを申し訳ないと思いながら席に着いた。

 映画はあまり面白くなかった。夜にはkが映画を観たことをすっかり忘れるくらいだった。
 私はkと遊ぶ口実なら何でも良かった為、批評家にはなりきれなかった。

 kの提案で一駅戻って韓国料理屋さんに行くことになったがその前に現地を探索する事になった。
 ショッピングモールのようなそこは入ってすぐにメイク屋さんがあり、彼女らは釘付けになった。私は何も買うつもりはなかったが、見ているうちに買いたくなってしまいほとんど衝動買い、或いは情動に任せてkと完全に同じ(異常に華奢な)リップを購入した。
 服やアクセサリーを見てから、誰もが待ち望んでいたプリクラを三人で撮った。盛りはまあまあと言ったところだ。なんならインスタのエフェクトの方が盛れるまである気がするのは内緒。

 一駅戻り、着いてから爆友の喫煙タイムが始まった。その間kと私は二人っきりで……好きだ! 爆友はナンパされていた。
 向かった韓国料理屋さんは爆友の通っている学校のすぐ側にあった。二週間ほど前に私が丁度変な読み方をした店だった。運命かもしれない。
 初めて入ったその店は外装とは裏腹にコリアンの風が吹いていた、ように感じた。食器類がステンレス(?)だったり、飲み物が特殊で、普段の飲食店では絶対に味わうことの出来ない良さを堪能した。kのオススメを頼み、空腹は満たされた。しかし爆友の舌には合わないのかもしれなかった。

 店を出て、カラオケへ向かった。
 kは声質が良く歌も上手かった(爆友には劣るが)。
 隣に座り、時折触れる腕や肩が恋のいじらしさを体現しているようだった。
 私はあまりに慎重になり過ぎているのかもしれないと、幾度となく思った。思わざるを得ないほど丁寧だった。喩えるならジェンガだった。それも素人ではない熟練されたプロのジェンガーによる業。私はその試合にきっと負けていた。

 一行は再び空の下、否、ネオンのギラつく繁華街を歩いた。また再び同じ喫煙所でタバコ休憩を取った爆友とまた再び同じ休憩スペースで二人っきりになったkと私……大好きだ!

 それから少し雑談をして、解散となった。
 改札まで見送った。

 23時30分頃、電話を繋いで一緒にゲームをした。そのまま3時まで話した。

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