リゾバ ep8 糖質

リゾバ8日目


夜勤務後、喫煙所でタバコを吸っていたら、正面の曲がり角の方から男女のグループが談笑している声が聞こえてきました。
知り合いかな、と思って足音が曲がり角に差し掛かった辺りで顔をあげて見てみると、名前も知らない社員の軍団と目が合いました。うお気まず、と思ったその瞬間、先程までの楽しげな声はパタリと止み、軍団は僕の挨拶をかわして眼前をとおりすぎていきました。去り際、軍団が建物に入る瞬間、「怖…笑」という声が聞こえた気がしました。そしてドアが閉まり、彼らが遠ざかると共に大きくなる笑い声。

全部、勘違いだと信じたいです。
僕は統合失調症になっていて、彼らが悪口を言っていると被害妄想していると、信じたいです。

萎えながらコンビニへ行くと、今日レストランで一緒だった女がいました。
しかしもう、挨拶する気も起きません。奴もどうせ、僕を影で笑ってやがるからです。

おやつカルパスとニッカ、ウィルキンソンをカゴに放り込み、レジ前の列に並びました。前にはさっきの女。さすがに挨拶するか、と口を開きかけたところで、女が振り返りました。
挨拶の予備動作のため、女をガン見していた僕の目と女の目が、ビタりと合いました。しばしの沈黙の後、ギョッと目を見開いた女はすぐ前に向き直りました。
喉元でわだかまった言葉を飲み下した僕は、商品を選び直すフリをしながら列を離れました。

もはや勘違いだとかそんな話をできる状況ではないと、鈍感な僕でも理解出来ました。どんな噂が広がり、僕という人間の下馬評がどうなっているのかは分かりませんが、良くないものであることは確かでした。

コンビニを出ると、空いっぱいの星が僕を見下ろしていました。地平線から抜け出し頭上をかすめて天蓋に散らばる星々の集まり。重たい煙がくすぶってうまく吐き出せない僕の胸と裏腹に、青とも黒ともつかない冬の夜空はひどく澄んでいるように見えました。


明日は比叡山行きます🎶

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