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「コーンスープ」という人生の走馬灯

「明日人生が終わるとしたら、最後に何を食べますか?」この質問の真意は

これまでの人生で、あなたの心を満たしてくれた食べ物は何ですか?

という事なんじゃないかな、と思うのだ。

最後の晩餐においては、食べ物自体よりも、食べたときに感じる「感情」の方がむしろ大切なのではないか、と。

これは、35年以上も前の話。

福島駅近くにあるホテルの最上階に、洋食レストランがある。この場所は、わたしたち家族がちょっと贅沢な気分のときに訪れる特別なレストランだ。

3姉妹の末っ子のわたしは、とにかく食が細く、小学校低学年くらいまでは一人前の料理(お子様ランチも!)を食べ切ることができなかった。食に対して、さほどの興味関心もなかったのだが、この洋食レストランに限っては、自ら率先して注文したくなるメニューがあった。

コーンスープだ。

そのスープは、とても濃厚で、とうもろこしの粒が入っているタイプのもの。インスタントのスープとは違う芳醇な味わいは、幼いわたしにも充分に理解ができ大好物となった。

わたし以外の家族は、ハンバーグだったりステーキだったりを注文していたように思う。テーブルに家族分の料理皿が並び、わたしの目の前には黄金に輝くコーンスープがある。そして、ワイワイとにぎやかにご飯を食べる。

これこそが、家族で食べる外食。贅沢で心が躍る、特別な日の風景なのだ。

時が経ち、大学生になったわたしは埼玉県で一人暮らしを始める。

実家から定期的に送られてくるダンボールの中には、いつも「じっくりコトコト濃厚コーンポタージュスープ」が入っている。コーンスープ好きの娘への、最高の仕送りだ。

レストランの味には到底及ばないが、寒い日の朝に飲む「じっくりコトコト濃厚コーンポタージュスープ」もまた格別に美味しい。小腹がすいた夜中に飲む「じっくりコトコト濃厚コーンポタージュスープ」も最高だ。

学生時代、どれだけの「じっくりコトコトシリーズ」を飲んだことか……。
まさに、青春の味だった。ありがとう、お母さん。

さらに時が経って、社会人になったわたしに新たな出会いが訪れる。

キャンベルの濃縮缶シリーズ「コーンポタージュ」との出会いだ。

これは驚いた。本格的なスープをとても簡単に、しかも小鍋にたっぷりと(!)作ることができる。革命だった。

豆乳をたっぷり入れて作るスープが特にお気に入り。
マグカップで何度おかわりしても、まだ鍋に残っている。一人なら、その日の夜に飲んで、夜中に飲んで、翌日の朝も飲めるくらいの量がある。

大切な人を招いて料理をする際も、キャンベルのスープは定番メニューとなった。食卓にスープがあるだけで、かつての洋食レストランに近づけたような気持ちになる。
キャンベルは、わたしのコーンスープ人生をグレードアップしてくれた。

あれからさらに時が経って、2019年。

ある日のこと、北海道出張へ向かったパートナーが、大量のコーンスープを買って帰ってきたことがあった。

東京では見たことのないコーンスープがずらりと並ぶ光景は、わが家に「北海道展」がやってきたかのよう。それはそれは、夢のような光景だった。

北海道限定コーンスープの飲み比べができることはもちろん、
何より、新千歳空港のお土産コーナーであれこれ選んでくれた気持ちが嬉しいではないか。

「とうきびスープ」「ほっとコーン」など限定商品に加えて、「まるごと北海道のピューレ」といった変わり種まで含むセンス溢れるセレクト。こんな素敵なサプライズはない。

2人で少しずつスープを味わう時間はプライスレス。幸せの極み。

これから迎えるであろう、人生最後の日にも、
きっとわたしは、濃厚なコーンスープを用意する。

その香りと味を楽しみながら、目を閉じる。
すると走馬灯のように駆け巡る、コーンスープにまつわる濃厚で幸せで愛情たっぷりの記憶たち。

これこそ、最後の晩餐にふさわしい一品。

あなたは、明日人生が終わるとしたら、最後に何を食べますか?


= お わ り =


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