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いくら言っても「できない人」は、どうすればよいか①

「何でこんなこともできないの!」と言ってしまう前に

はじめまして。企業の人材育成をお手伝いする「アルー」という会社にコンサルタントとして勤めている孔 令愚(コウ レイグ)と申します。

私の仕事を簡単に紹介しますと「企業の人の悩み」を研修などを通じて解決することです。

例えば、
・新人が指示待ちで自分から動かない
・若手社員が毎日遅くまで残業して仕事が終わらない
・上司は部下をうまく育てられない
・ベテランがハラスメント的な言動を取ってしまう
・同じ組織なのに、互いに仲が悪すぎて協力し合わない

といったお悩みに対して、「▲▲が課題で、原因は××で、●●の打ち手が有効です」という具合で、研修などを通じて人の考え方や行動を「企業が期待する方向」に変えるためのご提案を行います。

‥‥と、ここまではよくある話ですが、実際はそう簡単にはいきません。

人材育成の業界では、偉大な先人や大学の先生などが研究された「人の考え方や行動を変えるためのセオリー」が数多くあり、私どものようなコンサルタントもそういったセオリーを活用していますが、如何せん相手は「人」である以上、セオリー通りにいかないほうがむしろ多いのが現実です。

そんなわけで、ここでは「セオリー通りにいかない、人材育成の事例」を紹介していきたいと思います。

第1回はおそらく多くの方が悩む「いくら言ってもできない人」の話です。

私はよく「人を動かす」「人を育てる」といったテーマで研修を行うことがありますが、参加者の皆さんからこんなお悩みをよく聞かされました。

わからないことがあれば報告してくださいと何度も言っているのに、報告しないで勝手にやってしまう…
指示したことをいつも忘れるので、しっかりメモを取るように指導しても、一向にメモを取ろうとしない…
「自分で考えて行動しなさい」といつも教えているのに、未だに指示待ちでこっちが言わないと何もやろうとしない…

もちろん、研修ですから私も講師としてセオリーに沿って「こんなときはどうすればよいか」をお伝えします。

例えば、
「何をやるかだけではなく、なぜやるかもしっかり説明しましょう」とか、
「相手の理解を確かめながら、一つずつ説明しましょう」といったものです。

しかし、皆さんのお悩みはそんな生易しいものではなく、

「いやいや、そんなことは何度も試しましたけど、全然ダメでした…」
「言い訳ばかりして、改善しようという姿勢が全く見られない…」
「そもそも話を聞いてくれません…」

という具合で、「もうお手上げ」という人もいらっしゃいます。

こんなとき、多くの人は次のどちらかの反応をします。

「なんでこんな簡単なこともできないの!」と相手のせいにする

「私は指導者として失格だ・・・・」と自分のせいにする

相手のせいにした場合、おそらく厳しい言葉で叱責し、それでもダメなら諦めるといったことになります。しかし、「できない人」はいつまでもできないので、結局悩まされ続けることになります。

自分のせいにした場合、下手をすると自信を失って指導すること自体を諦めてしまうので、やはり「できない人」はいつまでもできるようにはなりません。

どっちのせいにしても、「できない人」は結局できないままなので問題は解決されません。

ここで一つの事例を紹介したいと思います。

ある会社の新入社員のAさんは、研修で「電話が鳴ったら取ってください」と教わったにも関わらず、一向に電話を取ろうとしませんでした。(今のご時世では電話を取る機会も少ないと思いますが)

このとき、Aさんの先輩でトレーナー役も担っているBさんは、「電話を取る」という簡単な行動をしないのは「面倒なのでわざと取らない」「仕事を甘く見ている」と思い、Aさんを厳しく指導することにしました。

やがてBさんの前で渋々電話を取ったものの、数日後また電話を取らなくなったので、Bさんついに我慢できなくなり、

「電話を取るぐらい、何でできないんだ!」と叱りつけました。

しかし、Aさんはそれでも電話を取ろうとせず、ついに退職してしまいました。
その話を聞いたBさんも、自分の指導が行き過ぎたと思ってしまい、精神的にひどく落ち込んでしまいました。

実はこのとき、Aさんは過去のトラウマから「電話恐怖症」になったことをBさんを含めて誰も知らなかったのです。

Aさんが電話を取れるようになるためには、まず恐怖症を克服することから始める必要がありましたが、Aさんも「私は電話に出るのが怖い」と言いづらかったため、Bさんはついやる気の問題を思い込んでしまったのです。

ここで重要なことは、

AさんもBさんもどっちも悪くない、単に指導方法が合っていなかった

ということです。

実は「できない」の裏には、やる気や能力といった単純なことだけではなく、他人には理解しづらい様々な原因が存在していることがあり、本人には「できない」立派な理由があります。一方で教える側もそんなことを知る由もないので、教える人にも責任はありません。

そのため、いくら言ってもできない場合、

「どうやったらできるようになるのか」を考える前に、本人が「なぜできないのか」をちゃんとわかってあげる

ことが必要ではないかと思います。
できない本当の理由がわからないと、できるようになるための方法も的外れなものになります。

ただ、本当の「できない理由」にたどり着くのはかなり難しいため、次回は「できない理由」をどう見つけるとよいか考えていきたいと思います。

最後まで読んで下さり、誠にありがとうございました。

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