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「星の王子様」の稽古が続々と続いている。「続々と続いている」とは妙な言い方ではあるが、6組のキャストを変わるがわる見ていて組によってステージングが変わったりするのでそんな言い方になってしまう。

今回の僕の立ち位置は全体の演出ではなく役者の動き方のアドバイザー的な役割であり、それほど深く役者陣と関わる事は無くとても客観的に俯瞰で見ることが出来る。基本的に朗読劇なのでしっかりと「読み聞かせ」をすればそれで十分なのだが演出家の意向で従来の朗読劇の在り方に一石を投じたいという事で僕が呼ばれた訳で、役者の主に声音を変えての演技や照明効果などで物語が鮮やかに浮き立ってくる部分には一切関与せず、此処は少し視覚的にアクセントを付けた方が効果的だなぁと感じる部分で本を読みながらある程度アクティブに動ける余裕が役者側にありそうな頃合いを見計らって「あの〜、ご提案なんですけどぉ〜」とそろりそろりと近付いて動きのモチーフを投げ掛ける。指導中の自分の動画を撮って確認してみたら「よくもこんなテキトーな指示出しで皆さん理解してくださるなぁ…」と苦笑する。

まぁそれでも、元気溌剌!頑張って行きましょう!的なお話だったらもっと快活に精力的に動きを付けるべきだとは思うけど、ノスタルジックな静的な世界でそれをやってしまったら役者の皆さんも集中力が散漫になり「読み聞かせ」本来の意味を失ってしまう危険性を孕んでいるので今回は敢えて空気のような存在に徹している。

昨日は稽古終わりに主演のお二人とピアニストさんとゆっくりお話し出来るタイミングがあって、主演のお一人の方の言葉に深く共感したので最後に拝借して記しておく。

「わたしは歌は歌、演技は演技と分離して表現する役者が苦手なんです。この時は悲しい心情だからその延長で歌に入ると無駄に声を張らず呟いているぐらいの声量で十分だし、ある時は楽しさの最高潮だから自然と歌も朗々となる。これをコントロールするって考えると途端に無理が生じるから如何にナチュラルに流れを作るか、本当にそこが難しいとこなんですけどね、わたしはその苦労はしてナンボだと思うんですよ。」

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