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祝 MUNCH 発売! ノルウェーの漫画出版社No Comprendo Pressについて

ノルウェーの傑作漫画MUNCHが翻訳出版された。

私はMUNCHが好きだし、MUNCHの版元であるNo Comprendo Press社の漫画にもしびれっぱなしだ。

書籍芸術賞を受賞したこの出版社のインタビューがノルウェーの漫画情報誌にあったので内容を要約、紹介したい。

Espen Holtestaulさんは子どもの頃、ドナルド・ダックの漫画を読んでいた。またタンタンやアステリックス、Tempo、ラッキー・ルークをよく読んでいた。ティーンエージャーになるとアメリカの雑誌MADを読むようになった。

26歳の時、友人とNo Comprendo Press社をはじめたが、初めはお遊びのつもりだった。2人はすぐに漫画家のChristopher Nielsenに連絡をとり、彼のおかげで人脈が広がっていき、チームで編集をするように。まだ大学生だったのだがNo Comprendo Press社で漫画を作りながら、出版社Solum社でアルバイト。卒業後もNo Comprendo Press社で週2日、Solum社で週3日働く生活を続け、No Comprendo Press社だけで生計を立てるようになったのはほんの10年程前(インタビューは2016年)。現在は妻のCis-Dorisさんと2人で営んでいる。Cis-Dorisは文芸出版社のOktoberで17年間編集者をしていたため、近年では漫画だけでなく文芸作品も少しずつ出すようになってきている。

漫画は小説に比べ製作のコストが非常にかかる。図書館による買取制度のおかげで助かっているが、漫画は純文学に比べると買取数が少ない。No Comprendo Press社から出ている漫画は一般大衆向けではなくニッチなものなのだが、幸い、支持してくれている書店も多い。

MUNCHが売れたことで、経営は上向きになってきた。

出版する本は持ち込みや面白そうな作品を作りそうな漫画家にコンタクトをとったり、インターネットやブックフェアで見つけたり、作家から紹介を受けたりして決める。作品の作成プロセスは1冊1冊違っていて、時には他の漫画家に相談役として入ってもらうこともある。

No Comprendo Press社は、オルタナティヴ・コミックの流れを汲んだ芸術的な漫画を出している。読者層は文化意識が非常に高い人達だ。

出版社を続けていく上で最も大事なことは、1冊1冊の作品に情熱を燃やすこと。その点は妥協しない。個人の好みというのももちろん反映される。海外の漫画は出したいものがタイトルを挙げるときりがない程あるが、自社に合った限られたタイトル数だけ翻訳出版することにしている。

Espenさんがこれまで読んできた中で一番好きなのはMarc BellのStroppyだ。こんなに愉快でクレージーな作品はなかなかない。

出版を控えているタイトル(2016年インタビュー時)はAnders N. Kvammen、”Ungdomsskolen”(日本の中学校に相当)。デビュー作。ものすごい才能の持ち主であるとEspenさんは評している。

このインタビューの後、この作品はブラーゲ賞(児童書、YA部門)をはじめ様々な賞をとっている。漫画がMUNCHと同じブラーゲ賞をとるのは、非常に珍しいことだ。またもNo Comprendo Press社が文学賞の歴史を塗り替えた。


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