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今年出会い素晴らしかった物:四選

年の瀬に見苦しくも、このような記事だけぽっと上げるのも憚れるのだが、一年を振り返りたくインプットの面の総括を記述する。

映像研には手を出すな!(漫画/大童澄瞳 )

ドラマ、アニメ、漫画と下流方向から遡るように浴び、どれも素晴らしかったが何より漫画が濃密であり、手元に置いて日々の仕事のインスピレーションを得た。モノを作り技芸を注ぎ込む人間として鼓舞され、心躍るセリフがたくさんあり。

特にこれは自分の感覚と非常に近くて、プリントアウトしたものを職場の机に貼ってすらいる。微妙に答えになってないのだけど、正直そう答えるしか無い。ただそれは引け目など持たずこのように自信を持ってよいのではないだろうか?
技芸というのはそうなのだ。時間が許されるならば工夫を凝らす。制作物をより良く、より有用に、楽しいものにすべく、そして自分を成長させるためにプラスアルファを注ぎ込む。それが時に、最低限満たすべき機能の作成よりも先んじてしまうこともある。
どれだけ経験積んでも、見積もりなんて単なる当てずっぽの数字合わせでしかない。分からない。そんなムラ気を許容し、重用して頂けている職場で幸運だ。

これも本当に好きだ。自分も良い仕事をしたと思えるたび、こうなっているなと。この気持ちを、一人こもって噛みしめる興奮の抑揚をよくぞ表現してくれたと思う。この一年、仕事は映像研とともにあった。クリエイターの心に寄り添う、上述のコマの浅草氏とともに、プロデュースとマネジメントの鬼才、金森氏も双翼である。心の中に金森氏を持ち、セルフマネジメントに励もうとよく思ったものだ。いつも心に金森氏。

これもまたよく仕事のPCの壁紙にしていた一枚。

20XX ( 邦楽:アルバム /神様、僕は気づいてしまった)


上述の映像研のアニメ版EDでそのアーティストの存在を知り、軽く代表曲を聴いたりしているうちに気づくと毎日通しで聴いていた。こうしてアルバム単位で聴き込むアーティストに出会ったのはいつ振りか。

アルバムタイトル曲。

総じて歌詞が実にナルシスティックで、今の時代を生きる若者らしく青々とこそばゆいものなのだが、それは昨年、裏切りの自覚や復讐の念を携えて退職に踏み切った自分にとっても、よく当てはまり染み入るものであった。

ただ正直このアルバムの時点より以前、以降の彼らの曲群は自分に響くものではなく、日本社会や刹那的な若者の心情文化を露悪的に、時折「厨二病」の粋を超えて研ぎ澄まされた歌詞を突き刺す、という本アルバムの作風の到達点に戻ることは無いだろうと思える。5年も前の作品である。多感で才能ある若者が5年経てば考えも立っている場所も変わるし、彼らのその時々でしか歌えないものがある。

来年はあまり聴かないと決めている。偶然にも、5年前に作った彼らの歌に巡り合い、共感を交差させるポイントにあったのが、今年の私だったのだ。
この1年を満たし、来年新しい道を進むべきと思える作品に出会えた幸運とともに、胸に仕舞うことにする。

年間読書人氏のnote(レビュー記事/年間読書人)

彼のレビュー記事を読むことが日々の日課になっている。
還暦を迎え退職して・・・とよく身の上を漏らす彼の文章はなお鋭く、圧倒の文量、文体は本当に沢山の知見を私にもたらしてくれた。新着のレビューを見るなり反射的に買い求め読み漁った本も少なくない。

そんな氏の記事との出会いは今年の映画「君はどう生きるか」を観て、その感想と考察に悶々としていた時だ。

君生きバード2○23

あれこれと考えを巡らせて自分が得た回答は、「こういう作品の考察批評を、喜んでnoteに書くような生き方はするな」というものだった。
しかし彼はそれを、読み間違いがなければ私と近しい結論を、noteへのレビュー記述という形で堂々とやって見せてくれた。

衝撃であった。
そして彼がこれまでの人生で綴ってきた膨大なアーカイブ、今もなお書き続けられる新作の数々を読み、私はすっかり魅了されてしまった。

彼に比べればあまりにも卑小で蒙昧な、自分の文章を鑑みては打ち砕かれそうにもなるのだが…圧倒され、平伏しているシンパでいるだけでは駄目なのだと、今こうして、年末にありがちなお題で持ってもってキーを叩きはじめたところだ。恭順であれ対抗心であれ、今年預かれた多大な知見、恩恵に、どうにか報いていきたい。

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(ゲーム/FROM SOFTWARE)

発売より幾分遅れて、購入しプレイしたのは年の瀬だった。

ゲームという表現媒体、アーマードコアというIPがこれまで築いてきた伝統、文脈、システム、そして今回の舞台、設定、モチーフが、
戦争、エネルギー資源、人的資源、雇用、差別、人道、倫理…
現代を取り巻く数多の社会問題とリンクしていること。

なおかつそれは、この国のゲームメーカーであるが故に練り上げられた設定、
八百万の神がおり、無機物にも魂が宿るというある種不思議な想像力、そして原爆、震災による炉心溶融を経験してもなお原子力に対する方針を決めあぐねている…そんな日本的な文化感性と歴史、事なかれ主義、先延ばしへの自戒と警句を持って突きつけるべく作られたものであったこと。

ゲームを進めるたびに現れるそれらの重奏に幾度も震えた。そして構成が定まったであろう開発中の時点、リリースされた今年夏、そして私が手に取りプレイする2023年末の数日間、この時にまで…
現実世界で起きつづける問題が、あるいは私個人の、見識と関心の成長が歩みを揃え、強く共鳴していたように思えた。そのように素晴らしいものであったし、今もまだ打ちのめされている。

終わりに

他にも多くの作品に触れ、血肉になった物もあるのだが特に突出して自分の1年に寄り添い、あるいはそれまでの自分を砕き押し上げてくれた作品を振り返らせて頂いた。今年一年本当にありがとうございました。

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