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にじさんじと「アイドル」を考えるための文献を集めた ーーVtuberとアイドルのむずかしい関係(0話 文献準備の巻)


夢のバーチャルアイドルへ―——。


問い:Vtuberはアイドルなのか?

最近、やっと自分がVtuberを考える時につまっていた所がわかってきた。例えば私はくろのわの二人やリゼ様を見る時は完全に「ゲーム実況者」として見ている。同じく黛灰くんや月ノ美兎委員長を見ている時は「アーティスト」として見ている(考え方のレベルがすさまじく高いので)。

そして色々記事を書いている時、毎回つっかえていたのが、「推し」や「ガチ恋」の概念だ。これなんだ…?と思ったら全部アイドル系の用語なのである。つまり、私は無意識にアイドル要素とぶつかりまくっていた。

今一度考え直して、私がにじさんじを見る時アイドルとしては見なかった理由が2つある。

・推しの供給量が過剰すぎて、苦しくなる可能性がめちゃくちゃ高い

にじさんじ全体で見ている人なら明らかなのだが、絶対に供給過剰に陥ってしまう

・アイドル要素とYouTuber要素が相性が悪い(ように見えた)

私の印象では、アイドルは衣装を過剰にして、舞台装置もしっかり作る(例:AKB劇場)。さらにアイドルには握手券など特殊な場合を除き、基本的にノータッチであり、交流できる可能性は低い。

しかし、YouTuber、とりわけ生放送配信者はコメントの形で常時交流している(ような幻想)を持つことができる。さらにTwitterのエゴサーチも頻繁になされているとなればかなり印象は違う。

もうひとつ、YouTuberは人々がDIY(自分でやることを決める)に特化したプラットフォームだった。これはにじさんじの場合、「それぞれが好きなことで夢を叶える」というコンセプトも強いため、プロデューサーやマネージャーの存在を感じることも少ない。舞台装置も、日によって大きく変わってしまう。だから私はかなりYouTuberやゲーム実況者よりに見ていた。


しかし、Vtuberの評論を読んでいて気付いたのは、「アイドル」の文化が演劇やYouTuberと結びついて、非常に大きな勢力になっていることである。また、Vtuberを見た古参のアイドルオタクの方は、伊集院光によってつくられた架空のアイドル芳賀ゆいのことを思い出す人が多かった。

だとすれば、やはりど真ん中にサブカルの女王でありながら、シャニマスやデレマスをやりまくっている月ノ美兎大師匠がいることも加味すると、アイドルとは何かを一回考えなければにじさんじについては考えきれない。そして、アイドルとにじさんじの関係を整理出来れば、それと対比してVtuberのあり方の特徴を捉えることができそうだ(ホロライブから始めてもいいが、『アイドルの視点から見ると』特殊な現象が起きているのはにじさんじの印象がある)

とはいえ、白状するとアイドルは私が一番疎いジャンルなんですよね… というわけでゲームと同じく文献を調査することにした。


HKT48の指原さんは、セルフプロデュース力で時代のトップに

すとぷりは、6人組のエンタメ集団。ゲーム実況や個人活動もしつつ、人気を博している



ホロライブ ・・・明らかにアイドル志向


ホロライブは、明白にアイドル志向であることは、社長のYAGOO氏から明らかにされている。

7/15訂正
こちら、『男性Vとの接触禁止など、色んな制約が途中からついてびっくりしたのを覚えている。』と書いておりましたが、低頻度で男性Vとの交流はあるとのことでした。


にじさんじ ・・・アイ…ドル…?

ええ…(ドン引き)

魑魅魍魎が跋扈するにじさんじ界隈。男女の交流も別に普通だし、まず芸人になったり、アイドルになったり本当に忙しい。

この状況だからこそのジレンマも、ライバーの方には多いだろうな…というのが私の印象である。黛灰くんがスタンスに悩んだこと、弦月くんのファンとの接し方の悩みは『アーティスト』としての自分と『アイドル』として見られてしまう自分の衝突という印象がある。

リアルで同じジレンマを抱えたのは、元KAT-TUNの赤西仁さん、シブがき隊の本木雅弘さんがいる。


女性V(一部正体不明あり)

ぷちふるは、にじさんじ最初のアイドルユニット?


創立から優に100年を超える、 由緒ある学校「世怜音女学院(せれいねじょがくいん)」。
「文武両道」を掲げ、 生徒はもれなく部活動に勤しむことを義務付けられている。

そんな学院において、 かつては栄華を誇った部活動がひとつ。
今は部員も足りず、 同好会にまで格下げされてしまった「元演劇部」。

そこへ加わる新入生と、 それから転校生。
ふたりを迎えた「学院演劇同好会」は、 今新たな門出を迎える。

5人が目指すは「部への昇格」と、 「学院祭での演目の実施」。

果たして、 5人の悲願は叶うのか。                                  (公式文章より引用)

こちらはデビュー時の文章。にじさんじデビュー時からはっきりキャラ付けのされたセレ女。やはり『演劇』はにじさんじ全体を考える上でキー概念になりそうだ。



イーリスは、ギリシャ神話における虹を司る女神。ラブライブのカバー楽曲を中心に活動し、名前はμ'sのミューズとの対比で考えたという。


正体不明の二人。にじさんじには性別不明の人も多くいる。


JuvveLは、独自にチャンネルも立ち上がったにじさんじのアイドルユニット。14日にチャンネルで放送あり。

Honeyworks楽曲は、にじさんじのアイドル的活動を語る上で欠かせない。特に『ファンサ』は、ファンへの感謝を伝える曲になってきている。


設定にはっきりアイドル要素が入っているのは、夜見れなさん(アイドルマジシャン)、相羽ういはさん(目がさめたらアイドルだった)の二人かな…?

7/17追加・プリパラのイメージは、にじさんじの子たちに近いということです。夜見さんがお好きということで見てみるかな・・・?

欅坂46は、アーティストで見ている私でもよく名前を聞くようになった、新しいアイドル像を呈示した。アイドル側の変化も見てみたい

にじさんじの人たち自身もアイドルファン

アイドルのことをやりたいのは、緑仙と歌謡曲の記事をまとめようとすると、中森明菜や松田聖子など、古いアイドルの話もてんこ盛りになるから。宝塚歌劇団やセーラームーンも出てくるので、これもうわかんねえな…


男性V

男性Vとアイドルの関係性を考える上で参考になるのは、nnfさんの記事である。


にじさんじのトップ男性V二人によるユニットChroNoiR。この二人の交友関係は広いこと、ふたりともやっているゲームの内容(FPS)が近いことから、いろんな目線で楽しむことができるユニット。


ものすごく扱いに困るのは、剣持刀也師匠である。剣持さんは、伏見ガッくんとのコンビで人気があるが、ファンの彼に対する態度が変化球すぎる。なのに、ライブになるとみんなデレるので、これはなに…?となる

VOIZはにじさんじ初期に発足した男性グループ。現在は解散。


天災、 疫病、 飢餓
災厄に見舞われた国を立て直すべく、 元号が「神和」に改められる。
それから早数年。
魑魅魍魎、 有象無象が跋扈する皇都は、 「人」「神」「魔」、
それぞれの陣営が奇妙な均衡を保つ都市へと変貌していた。
年齢、 職業、 立場。
異なる境遇に生まれながら、 出会うべくして出会った3人。
彼らは各々の目的のため
互いに協力し、 互いを利用し、 そして時には互いを欺く。
そうして3人は皇都で、 互いに「仲間」としての絆を育んでいく――                      (公式紹介文より)

VΔLZは、VOIZに続いて出てきた男性三人組グループ。弦月くんのピアノ、甲斐田くんのギター、長尾くんの特徴的ながなりは他に類を見ない化学反応を起こしている。




アイドルとはまた違った印象の人たち ーーすごく…大人の匂いがします…

調べていて不思議な立ち位置に居たのがこの三人。Twitterで見ていても「推し!」という感じでアイドル的に追っている方をよく見るのだが、この三人の歌う曲を調べると、極端にアイドルの曲が少ない。(社長、巴さんに至ってはほとんどロックシンガーである)

アイドルの曲を歌ってなきゃアイドルじゃないとはならないが、一言で語れない位置にいるのは間違いないだろう。


にじさんじとアイドルを読み解くキー概念と文献

アイドルマスター(デレマス・シャニマス)



にじさんじとアイドルを考える上で切っても切り離せないのがアイドルマスターシリーズである。現代のソシャゲの流行のど真ん中に居続ける存在であり、にじさんじライバーも多くがそのガチャで涙をのみ、後方腕組Pとして『俺の○○○○』を見届けてきた。


亀井有馬さんは、先日、デレステ配信を卒業し、競馬の仕事に専念することに

ただ、私は亀井有馬さんのデレマス配信を見ていた程度のにわかにすらなってない人間なので、どうするか…(先駆者たちのnoteの出来がすごいので)

デレステの二宮飛鳥役・青木志貴さんは、にじさんじとも交流が深い一人。著書『わがままに生きろ。』を始め、多彩な活動を繰り広げている。



ライブ(福岡VTL他)

(まだ文献の検討がついていないが)にじさんじは、Zepp福岡のライブで男性ライバーのアイドルとしての活動がうまくいくと確信を持ったと言われている。


アイドル論参考書



アイドルについて包括的に扱った学術書。メディア、経済の視点からも分析されている。また、今回は取り扱わないが、K-POPについての本もしっかり存在している。

男性であればこちら。





男性アイドルの場合、歴史的に見ると重要なフレーズは「不良」だと言われている。不良度がどの程度かによって、そのアイドルがどういう立場か図りやすいとのこと。

特にヒプノシスマイクの存在は、Vにも大きい影響があると思われるので注目したい。


さやわか氏のアイドル論とVtuber論(月ノ美兎論、Vtuber論として超重要)



やくしまるえつこさんが「アイドル」であるという理論をはじめ、アイドルを別目線、特に「演劇」との関係で論じている。さやわか氏は頻繁にVtuberについて言及している(ただし、個人的には若干踏み込みが足りない)ので、ここから批評の文脈や、他のコンテンツの比較につなぐことが可能だろう。

特に、『世界を物語として生きるために』ではやくしまるえつこ、「Serial Experiments Lain」や初音ミクを論じており、読んでいて「これ月ノ美兎の方法論が書いてありますやん」と思ってしまった。また月ノ美兎の記事が増えるのか…。

アイドルと現代のオタク


現代のアイドルを取り巻く環境は、SNSをはじめとして日々変化している。でんぱ組のぺろりん先生は、ご本人がアイドルでありながらオタク目線の本を書いているので、この本から現在のオタクとアイドルの関係性を深く読み解けるだろう。特にセルフプロデュースの章と、SNSに関する話はVtuberであっても必見と思われる。

プロデューサー



にじさんじは「企画」が大事と言われることがあるが、それを担当するのはアイドルの場合は「プロデューサー」である。ここについては、おそらくひなPさんについて書く時にまとめることになる。ありがたいことにnoteにはつんく♂さんの文章が大量にのっている。つんく♂さんは、クレアさんの尊敬する人である。


現代アイドル批判(個人的悩みどころ)


これはまた個人的な問題が含まれるが…大事な問題なので置いておきたい。私がアイドルを見なくなったのは、峯岸みなみさんが坊主で謝罪した事件からだった。あの事件はかなりトラウマで、そこから明確に避けるようになった時期がある。

アイドルの存在がイヤだとかそういうわけではない。問題は、アイドルの持つ関係性の構造である。

秋元康氏はAKB48は「ダダ洩れ」のシステムであり、メンバー個人が発信する情報を統制しないと峯岸さんの事件の際に述べた。その様子はどこか他人事のようだった。しかし、批評書『ポスト・サブカル焼け跡派』で対談する二人は、「人が大衆の面前で謝罪する状況が容認されるようなシステムを眺める作法しか共有されておらず、何かが違反した人が袋叩きになる状況」を果たして、プロデューサーである彼が何もしないというのはありなのか?と疑問を投げかけている。(ここはVtuberが炎上した際のことを思い浮かべれば重要な指摘ではある。対案が無いが…)


この問題は、セルフプロデュースのアイドルが増え、YouTuberの時代になるとともに唱えられた「自己責任論」とも関係してくる。私は「場」(プラットフォーム)を与えただけで、何も関与しないという態度が、紳士なものとして、プロデューサーや観客の間で共有されるのは本当にいいことなのか?というのが、『ポスト・サブカル焼け跡派』が提示した問題である。前回の記事で「消費」という言葉で考えていたのは、このあたりの問題である。

実は、こうした「私は眺めるままで何もできない」という構造を、鈴原さんの一件で一瞬感じてしまったのだ。御伽原江良さん、鈴原るるさん、共にある程度アイドルに憧れのある人だった。

繰り返すがアイドルやそのファン、そしてプロデューサーが悪いとは私はあまり思っていない。問題は、アイドルは相当構築されて作られた神秘性の空間であるため、近寄らずに壊さないのが礼儀という形になりやすい、その空気感の仕組みである。これは、Vtuberが作り上げてきた、相互交流や二次創作の良さ、身近さと当然ぶつかる可能性がある。Vtuberがアイドルとして活動していくためには、ここにジレンマがありそうだな…というのが私の考えである。

また逆に、ファンがアイドルとしてVtuberを見る際は、逆の論理で身軽であるはずのVtuber活動にアイドル的なユニット性を見過ぎることで、変なこじらせを起こす可能性がある。私見ではここのバランス感覚を一番知っているのは相羽ういはさんや、セルフプロデュースを行っているアイドルたちじゃないかなという気がする。

こじらせハラスメントは、2021年4月1日に投稿された作詞・作曲・MIX弦月藤士郎による全力のエイプリルフール企画

また、私はライバーの方を知るきっかけが緑仙からのことが多いのでジェンダーの問題も考えておく必要がある。


まとめ

当然、私が勝手に食わず嫌いしただけでアイドルにもアイドルらしいアイドルから、逸脱した怪しげな人たち、地下アイドルまでたくさんの人がいる。そして今日、JuvveLの五人組は、アイドルとしての活動を開始した。

でんぱ組.inc所属のぺろりん先生が漫画にも描いているように、SNSのオタクくんの扱い、ユニットならではの面白さや課題、ファッションとの関係性など、ありとあらゆる論点がまだまだある。JuvveLの活動や、その他Vtuberのアイドル活動がうまくいくように色々勉強しながら、試行錯誤して記事を書いてみる予定である。

P.S. 洋楽オタクから

アイドルの原点は、やはりこの二人である。共に男性らしさ、女性らしさを大きく強調して歌うショービジネスの意味が大きかった。ここから日本独自の少女性・少年性をもったアイドル像が生まれていく。

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