リターン トウー フォーエバー (2)

2 ジョー

その船の甲板で親しくなったのは彼女の他にもう一人いた
彼の名はジョー、ドイツ人
背が高く、金髪を後ろで結びサングラスをかけたサーファーのような印象
気軽に声をかけてきた、明るい男だ
アジアで英語を教えると言う事で給付金をもらい、旅していると言う

「それはスマートだ」
「ノー、こう言う時はクレバーと言うんだぜ」

彼の言葉や笑顔には彼女や、そしておそらく僕にあるような暗さが無い
僕は彼に少しの嫉妬を覚え
灯りに向かう昆虫の様に、それ以上に惹きつけられる魅力を感じた

波は無い、緩いうねりがあるだけだ
亜熱帯のぬるそうな緑に濁った海
それは生命のエキスが詰まったように見えた

国籍も目的も何もかも統一感のないこの小さな甲板の小さなカオスを
それでもこの先に待つ二つの島というとりあえずの目的地に収める為に
その為だけにゆるゆると船は動いた

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