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読書回(鈍色幻視行とはなに?)

久しぶりの読書回です。

今回は『鈍色幻視行』恩田陸さんの作品です。
そういえば前回も恩田さんの作品でした。恩田さんの作品は書きたくなります。

▶物語の始まり

フィクション作家の梢とその夫の雅春の2人が語り手で話を進めていく。

最初のシーンは梓が大きなスーツケースを持って品川から新幹線で新神戸へ向かうところから始まり、その間に今回の旅の経緯説明がある。そして新神戸からタクシーで神戸港へ移動し、夫の雅春が待つ豪華客船へ。

▶船旅の目的

この船旅の目的は小説の『夜果つるところ』の関係者から話を聴くことで、この小説は「呪われた小説」と言われており、梓が知るだけでも3度映像化が進められたが、完成には至らなかった。3作品ともに関係者が亡くなっている。

この船旅の参加した関係者は『夜果つるところ』の、熱烈なファンで漫画家ユニットの姉妹、映像化に関わった監督とその妻の女優、そしてプロデューサー、編集者の夫婦、評論家とそのパートナーである。また彼らの話の中にも様々な人物が登場して、しかも653ページもある長編で、登場人物名と職業のメモが必要かもしれない。ちなみに私は作りました。

▶船旅の話題

船旅のテーマである小説の中身よりも、その作者の飯合梓という人物の謎を解き明かす事が前半の途中から話題の中心になっていく。たとえば飯合梓の失踪宣告までの経緯に不審な点がある、別人が書いていたのではないか等と様々な推理が披露される。
後半は個人インタビュー形式で、それぞれの視点の違いや作品への思い入れが具体的に語られていくが、ますます謎が深まり梢の推理はどこに行き着くのかが気になってくる。

また再婚同士の梢と雅春についても、梢の前夫や雅春の前妻(自殺している)の話しや、パートナーへの気遣いや疑惑等も2人のそれぞれの視点で語られる。そもそも実生活のすれ違いが多い夫婦であるため謎も多くあるだろうと思う。

▶感想

①この作品の最初ではサスペンスや怪異の話かと思ったが、そうではなかった。それでも小説をめぐる謎ときの話であり、ついつい引き込まれてしまった。私の場合、図書館で予約し2度貸出ししてもらい、2ヶ月掛けてやっと読破した。船旅のため変化も少なく、読み続けるには結構大変と感じた。

②物語を書く上での恩田さんのこだわりや考え方についても述べられているエッセイ的な面も感じた。また漫画家の苦労も取材などをして書き込んでいるように思う。

③本作から読むか、『夜果つるところ』から読むか。私は本作から読んだが、『夜果つるところ』から読んだほうが良かったかと思う。そのほうが登場人物と同じ目線になるのではないか。しかし後から本作では途中で挫折したかもしれない。

▶『夜果つるところ』について
恩田さんが書いた書籍が出版されている。飯合梓名義の工夫がされている。

恩田さんの同様な作品では『三月は深き紅の淵を』を思い出す。この話は幻の本「三月は深き紅の淵を」を巡る4章からなるミステリ仕立て。こちらは幻の本を探す話であるが、小説の中に登場する小説という点では共通点がある。また『三月は...』はそのまま題名となっており、『夜果つる…』は別に本がリアルで出版され、その点が異なる。

『夜果つるところ』は、なんとも不思議な世界観の話です。記憶を辿る主人公の話で、幼少期を山奥にひっそりと建つ秘密の社交場で暮らし、そこには個性的な人や精神面の不安定な人が集まっている。そして山奥の日常での小さな出来事から様々な事件が起き、そして大事件に繋がる。

▶『鈍色幻視行』も『夜果つるところ』も読後のすっきり感はありませんので、好みが分かれそうな作品でした。日本文学が好きな人におすすめといえば良いかな。もしお買い求めになるならば、その前に図書館などで確認されたほうが良いかと思います。見てから購入をご検討ください。高額な本ですから、Amazonでポチッとは危険です。
と言いながらリンクは張っておきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。
不定期掲載なので、次はいつになるかわかりませんが、次回もよろしくお願いいたします。

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