れき丸

「負け戦」をテーマとした超短編歴史小説を書こうと奮闘中。戦国時代は、勝ち戦だけが華じゃ…

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「負け戦」をテーマとした超短編歴史小説を書こうと奮闘中。戦国時代は、勝ち戦だけが華じゃない!......はず。

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最近の記事

進むも滝川、退くも滝川 (神流川の戦い)

(ん……?) 滝川一益は、不意に寝床から飛び起きた。まだ早朝である。悪い夢を見ていたかのように、全身が寝汗で湿っていた。 (何か、変事があったのか……?) 古くから織田家に仕えている一益である。第六感というべきか、何やらただならぬ予感を感じた。しかし何かがあったことはわかっても、何があったかまでは知りようもない。一益は、胸の中にモヤっとしたものを抱えながらも、再び寝床で横になった。どうにも寝付くことができぬ夜だった。  数日が経った。が、あれから何か異変があった訳

    • 金ヶ崎の退き口

      「浅井が……?」  その報を聞いた時、織田信長は目を数回パチパチと開閉させた。意味がわからないと言った様子である。 (まるで子どものような反応をなさる)  傍で様子を見ていた幕臣明智光秀は思った。光秀が見る限り、信長には少年のような無邪気さがあった。  その「少年」信長は、金ヶ崎に在陣中である。彼の元に北近江の浅井長政が突如同盟関係を破棄して攻め込んでくるという報が届いたのだ。織田軍は現在、越前の朝倉義景領を攻めていた。若狭の武藤氏攻めを終わらせた余波で、朝倉の諸城を

      • 信忠の本能寺

        「明智がか……」  織田信忠は、本能寺の方を仰ぎ見てつぶやいた。明智とはもちろん、明智日向守光秀のことである。時は、天正10年6月。有名な本能寺の変が起こった日である。本能寺はなお赤々と炎上していた。 「明智の軍勢が、本能寺を包囲してございます」という伝令の言葉が、今も耳から離れない。宿泊していた妙覚寺から急ぎ救援に向かったが、遅かった。父・織田信長は既に討ち果たされた。  織田信長はすでに家督を信忠に譲っており、信忠はれっきとした織田家の当主である。信長を討った明智が

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