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すすり泣き (小原威子)。

小原威(たけ)子の歌う「すすり泣き」。大木惇夫作詞、堀内敬三作曲で、松竹映画「デパートの姫君」主題歌とあります。映画が定着していた昭和初期ですが、その最中で革命が起きました。昭和6年に松竹が制作した「マダムと女房」に於いて、画面から初めて音声が登場し、所謂トーキー映画の出現で当たり前だった無声映画が、徐々に過去のものへとなり始めたのです。と言っても、トーキーはその分お金が掛かるので、今暫くはサイレントやパート・トーキーが継続して制作されていました。また松竹の新たな試みとして、自社主題歌専用のレーベルが立ち上げられまして、制作の全てはポリドールに任される事に。その第一新譜は淡谷のり子の歌う「私のパパさんママが好き」。昭和9年迄の3年間に70枚近くが出ており、最大のヒットが東海林太郎の「赤城の子守唄」でした🎥。

此の「すすり泣き」と云う歌は、柳井隆夫原作、池田義信監督で製作された「デパートの姫君」の為に書かれました。出演は栗島すみ子、竹内良一、江川宇礼雄、沢蘭子などで、全10巻から成るサイレント作品です。詳細な物語は不明ですが、歌詞からして虚無な都会に暮らす男女の上手く行かない愛憎劇ではないかと思います。全四番構成のスロータンゴのリズム、スッキリとしたサウンドながら何処か重苦しい雰囲気に包まれており、伴奏にはバイオリン、トライアングル、アコーディオン、ベース、鈴等が用いられました。歌う小原威子は当時のポリドールで活躍した女性歌手の一人で、四家文子によく似た美しいアルトで歌います。作曲は堀内敬三が担当し、彼はクラシックからジャズ、軍歌に映画主題歌と幅広く活躍。松竹では後に大船撮影所の音楽部部長を歴任しております🎼。

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