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夢で逢いたい (澤雅子)。

澤雅子の歌う「夢で逢いたい」。島田磐也作詞、山下五郎作曲で、戦前のポリドール流行歌黄金時代に生まれた中の一曲です。昭和10年代に入ると同社の陣容が充実し始め、東海林太郎、奥田良三、新橋喜代三、結城道子、そしてエノケンと、次々と才人達が集まり他社への対抗馬を揃えていました。その最中に現れた期待の新人女性歌手が澤雅子。彼女は大正6年に樺太に生まれた歌手で、コロムビアの二葉あき子や、ビクターの大宮小夜子ら同様に新世代の女性歌手として大いに期待されていました。先輩の結城道子と「姉妹の歌」を、エノケンとは「トカナントカ言っちゃって」を吹き込み、続いて「嘆きの夜雨」「嘆きの胡弓」とソロでリリース。それに続く形の新曲が「夢で逢いたい」なのです🎤。

「夢で逢いたい」は、当時ヒットしていた渡辺はま子の「忘れちゃいやョ」を真似た感じの片思いソングですが、煽情的な雰囲気は全くなく、夜な夜な恋に悩む乙女心を三番の歌詞に分けて可憐なアルトで歌っております。伴奏はフルート、ギター、スティール・ギター、チェロ、クラリネット等で、流れる様なリズムですが夜更けの光景を描いている為か、全体的に暗い雰囲気が漂います。四行目の締めは全て♬夢でいいのよ、逢いたいわ…と決めておりますが、ラストのみ伴奏を少し止めて台詞状に呟いて終わります。当時まだ19歳だった彼女ですが、とても二十歳前には思えない『艶』を感じる歌声でした。これのA面が上原敏が歌う「恋の絵日傘」で、レコードは昭和11年秋に発売されました😀。

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