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国難突破『日本国民歌』 (中野忠晴)。

中野忠晴の歌う「日本国民歌」。中川末一作詞、山田耕筰作曲で、曲名の頭には“国難突破”とあります。満州事変後、国際社会から段々と孤立の道を歩み始めた大日本帝国。しかし当時の日本政府は今とは全く違う堂々たる姿勢を貫き通しており、そこには「我等日本こそアジアの盟主だ!世界がどう言おうと我何するものぞ…」と云う覇気がありました。ナショナリズムが高揚する中、歌の世界にもそれを反映した楽曲が現れ始めましたが、その一曲が「日本国民歌」です。東京日日・大阪毎日新聞の歌詞公募に当選したのは大阪の詩人中川末一の作品、選者は北原白秋と作曲担当の山田耕筰でした。届いた膨大な歌詞を両人は旅館の一室にて一篇一篇と吟味し、その中から中川の歌詞を採用したのですが、最初の“吼えろ嵐、恐れじ我等”以外は、何と全て北原が書き換えてしまったそうです🎼。

「日本国民歌」は、少し前に出した「国際オリンピック派遣選手応援歌」同様に、明るくも健全ながら少し固い感じの行進曲で、豪快なファンファーレで曲がスタート。全四番構成であり、トランペットやトロンボーン、弦楽が用いられた流れる様なサウンドに仕上がりました。中野忠晴は此の年デビューした新人歌手で、その背景には山田の推薦がありました。前述した「国際オリンピック派遣選手応援歌」が大ヒットしたばかりであり、再びその期待に応えた爽やかで力強い歌唱で録音に臨んだのですが、知名度や評価では凡打に終わっています。此の歌のレコードは内容故に大々的に宣伝されまして、また全国の陸海軍兵営や小中学校に一枚づつ無料配布されたとか。A面には伊藤隆一指揮、陸軍戸山学校軍楽隊伴奏歌唱のバージョンが組まれまして、昭和8年初頭にリリースされました😀。

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