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お柳恋しや (東海林太郎)。

東海林太郎の歌う「お柳恋しや」。佐藤惣之助作詞、阿部武雄作曲で、レーベル共々快進撃を開始した東海林の自信作の一つです。此の「お柳」とは、平安時代後期の1165年に建立された三十三間堂にまつわる「三十三間堂棟の由来」から派生、脚色された物語に出て来る柳の精霊です。ある時武士の放った鷹が大きな柳に足を絡まれて、飛べなくなってしまいます。武士は柳を切ってでも鷹を救おうとしますが、通りかかった平太郎と云う若者が弓矢を借りて梢を撃ち、命中の弾みで鷹は逃げる事ができて大柳も助かりました。その後、平太郎の前にお柳と名乗る綺麗な娘さんが現れます。彼女は平太郎の嫁になる事を願い、結ばれた二人は子を得て幸せな生活を送ったものの、大柳は三十三間堂建立の為の木材として切り倒され、哀れにもお柳は絶命してしまう…と云う悲劇でした😿。

此の物語は長年に渡って浄瑠璃や講談として演じられたせいか、歌のイントロは義太夫の撥さばきからスタート。やや短いイントロの後で東海林の歌に入るのですが、まだ独特の歌唱方移行する前のクルーンな歌い方で転調の多い旋律をこなしています。伴奏のポリドール管弦楽団の陣容は、三味線、ベース、バイオリン、マリンバ、フルート、クラリネット鐘と言ったところでしょうか。静かな夜の月明かりの様な軽やかさと憂のこもったメロディでした。此の曲は派手なヒットにはならなかったものの、数ある東海林のレパートリーの中でも欠かせる事が出来ない一曲として長く愛唱されたとの事です。作詞は佐藤惣之助、当時彼はフリーとして各社に出没し、ポリドールでは「赤城の子守唄」など一連のヒット曲の歌詞を次々に手掛けた才人でした。裏面も同じ東海林の歌う「壷坂小唄」🙂。

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