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恋知りそめて (小林千代子)。

昨夜に続いて晩秋を感じさせる歌を。これは小林千代子の「恋知りそめて」で、西條八十作詞、飯田信夫作曲。ビクターとJO映画による音楽映画「百萬人の合唱」の挿入歌です。当時、アメリカでは「フットライト・パレード」や「四十二番街」などの音楽映画が公開され大変な人気を呼びました。日本でもそんな映画を…と云う機運が盛り上がるのも自然の話で、昭和8年にPCL映画が発足し其の第一号として「ほろよひ人生」と云う日本初の音楽映画が公開されます。此の映画は大ヒットには至らなかったのですが、試金石である事に間違いはなく、続いて京都に在ったJO映画がビクターとタイアップして製作したのが「百萬人の合唱」でした。富岡政雄監督で脚本は山名義郎が担当。撮影主任には円谷英二が抜擢され、出演は夏川静江、徳山璉、伊達信、伏見信子ら錚々たる顔ぶれです🎬。

「恋知りそめて」は、本作出演の小林千代子が歌います。徳山璉歌唱の陽気な主題歌「幸福な朝」とは正反対の物悲しいメロディで、恋に悩む乙女心を慎ましく綴っており、伴奏に現れるアコーディオンの萎れた音色が実に寂しげ。風にハラハラと舞い散る枯葉、切ない溜息…和製シャンソンと言っても過言ではない佳曲となりました。最近、彼女のアルバムが漸く出たのですが、残念ながら未収録なのは残念の一言。何かの機会で復刻して頂けると幸いです。此の映画では時のビクター専属歌手らが次々出ては持ち歌を披露するそうですが、生憎本作を観た事がない為、詳細なストーリーや如何なるシーンで歌われるか迄は存じておりません。昔見た資料では、他に渡邊はま子、藤山一郎、市丸、ヘレン隅田も出ており、正しく流行歌ファン必見の一本。レコードは昭和9年秋の発売でした😀。

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