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燃える御神火 (藤山一郎)。

藤山一郎の歌う「燃える御神火」。西條八十作詞、中山晋平作曲で、藤山のビクター時代に於けるヒットナンバーの一つです。東京音楽学校時代、傾いた実家の家計を救うべくコロムビアにて“アルバイト”として吹き込みを続けていた藤山ですが、古賀政男と組んだ「酒は涙か溜息か」が場外ホームランとなり、一躍若きスター歌手として注目される事に。しかしそれは校則違反をした上での活動であり、バレて以降は卒業まで活動は控えると云う約束を交わして、退学は回避されました。その間にビクターが早速動き、卒業まで毎月藤山に支援金を提供すると同時に、其の後の行先として弊社を候補に入れてくださると有り難い…と、申し添えたのです。ここ迄してくれる会社を袖にする訳にも行かず、他の待遇面に於いても充実しているとの事で、ビクター入りを決意するに至るのでした🎼。

「燃える御神火」は松竹映画「処女よさよなら」の主題歌でもありました。五所平之助監督による1時間余りの短編作品で、出演は大日向伝、岡田嘉子、伏見信子、江川宇礼雄などが名を連ねております。歌に出て来る伊豆大島三原山は、当時世を儚んだ若者らが投身自殺に訪れる負のスポットになっておりまして、早速映画会社やレーベルが続々取り上げては題材にしていました。此の歌は三番構成、マイナーテンポの寂し気なメロディであり、バックには忌鐘とも云うべき鐘の音が聞こえて来ます。藤山は呟く様な美声でしっとりと歌い、散った若者の冥福を祈る様な感じで🎵山の煙よいつまでも…と締め括ります。この歌はB面であり、メインは小唄勝太郎の歌う民謡調の「大島おけさ」でしたが、断然藤山の面が高い評価を得たのでした。レコードは昭和8年初夏に発売されています😀。

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