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【還暦のメロス】⑧

石巻駅近くの8畳一間の借家で新婚生活を始めた両親はつつましくも豊かな生活を始めた。
そして結婚した翌年に第一子が生まれた。早産気味の未熟児の長男であった。小さな子供は、食も細く、おっぱいをあまり飲まない。第一子を生んだ母も腎臓を患って、病院通い。おまけに未熟児の長男も小児科通いで、毎月の医療費が家計を負担し始めた。
父は一生懸命働いていたが、家族にとって何より、妻が病を患い、子供が食が細く、病院通院をする日々は、結婚した当初は、思っても見なかっただろう。

そんな母が、第二子を授かって、産婦人科に行ったときに、予想だにしない医師からの宣告があった。
「あなたの腎臓の状態等を考えると、もう子供を産める体ではありません。子供は諦めたほうがいいでしょう」

母は愕然とした。子供がもう産めない?そんなに私の体は悪くなっているのか。

母親にとって何が辛いかといって、せっかく授かった子供を産めないということほど辛いことはないだろう。
母はずいぶん悩んだことだろう。長男が未熟児で産まれて、小さい体で毎日のように病院通い。それだけでも大変だった。おまけに自分も腎臓を患い、むくんだ身体での病院通いをしながらの子育て。
そんな中で、希望の光ともなった第二子を授かったという喜び。しかしそれは医師の宣告によって、地獄の苦しみとなって母を悩ました。そんな妻を見ている父も苦悩の中での仕事であっただろう。



この出来事は、筆者が生まれる前の出来事であり、なんといっていいのかわからないが、自分も後年、結婚して子供を授かった後の様々な苦労を体験して子育てをした今となって、その父の想いが少しは理解できるのだが、母の苦しみはやはり女性でなければわからない様々な苦悩があったことだろう。
少しずつお腹の様子も変わっていく。
そんなときに、仙台から友人のTさんが訪ねてくるのである。

            ~~⑨へ続く~~

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