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違いが日常になりつつある"ヘラルボニー The Colors"

ヘラルボニーの勢いが止まらない。
あらゆる企業や行政とのタイアップ、アート作品を日用品やインテリア商材にしたオンラインショップの運営、有名モデルの起用、メディアへの露出などなど。日本スタートアップ大賞2022では、審査委員会特別賞を受賞している。

彼らが何か目立ったことをしている、というより人々が彼らが生み出すモノやコトを求めている。
それもヘラルボニーがやってるから、という訳ではなく、たまたま良いと思ったのが、ヘラルボニーだった、という人も少なくない。

そんな人々の日常に溶け込んでいるヘラルボニーは、まだ創設して4年というのが驚きだ。
今回4周年記念としてANB TOKYOで開催された展覧会「The Colors」。正に色とりどりな個性がそこには散りばめられていた。
今回の展覧会ではヘラルボニーの企画アドバイザーに就任した金澤浩美氏(金沢21世紀美術館キュレーター)がキュレーターを務めている。
黒澤氏はこの展覧会を通じて、個々の「違い」そのものが価値となって社会を彩る、というメッセージを12人の作家と共に発信していく。
Colorsには、様々な意味における違いとそれらが発するカラフルさに満ち溢れている。

そしてヘラルボニーが歩んできた4年間に、世の中ではありとあらゆる出来事が起き、人々にとって「普通」や「普遍」が消滅してしまった。そこで自分が自分らしくあるために、皆あらゆる「違い」をすんなりと受け入れ、共感したり、自分の中に取り入れている。
そんな変化が目まぐるしい時代に、ヘラルボニーはフィットしたのだろう。



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今回の展覧会で私が共感した個性の数々を紹介したい。

1.ワクワクする色彩"衣笠泰介氏"

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ヘラルボニーの作品の数々の中でも特にビビッドな印象を与える衣笠泰介氏。彼は2歳から絵を描き続け、独自のな色彩感覚や感受性で繰り広げる表現は国内外で高い評価を受けている。
衣笠氏の作品は、旅行で訪れた地の景色や写真、部屋の中にある瓶やボトルなど、実体験に紐づく事物がモチーフになって描かれている。
色鮮やかな窓枠が取り付けられた建物が並ぶ様子は、フンデルトヴァッサーの建物の世界観を彷彿とさせる、ファンタジックでワクワクする光景だ。

2.制作工程が面白い"井口直人氏"

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よく見るとちょっと不気味でとてもアーティスティック。
井口氏は、街のコンビニと施設のコピー機を使って、自分の顔とその時々の気に入ったものを写し取ることを毎日の日課としている。写しとる時に微妙な動きを加えることで、顔が歪んで映るそうだ。これらの作品は出来上がりそのものも魅力的だが、コピー機の蓋との間に頭を突っ込んで微妙な角度を調整しながら作業してるところを想像すると何とも面白い。
この2次元と3次元の不思議な融合から生み出された作品の中の彼は、妊娠中に見た超音波画像の胎児のようにどこか神秘的で奥深い表情をしている。

3.うねりと立体感がすごい"木村全彦氏"

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ちぎり絵のようにも見えるが、近くで見ると斑点のひとつひとつが、木の枝のようなくさび形文字のような形をしている。それはラテン語のくさび形文字を意味するcuneiform(キュニフォーム)から、キュニキュニと呼ばれているそうだ。
題材は彼の興味や近況などから選定され、動植物や景色が多い。近くで見るとキュニキュニは幾重にも描き重ねられている部分もあり独特な立体感を生み出している。
深い色の中で鮮やかに浮かぶ細やかな模様は、夜に見る蓄光石のように光って見える。

いずれの作品も題材も画法も画材もそれぞれが、自分の描きたい想いに身を委ねて設定され、どれも自由かつ誠実に描かれている。

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