壁破壊の件で考えさせられた個人的感想について


はじめに

自分の目で確かめないと、分からないことがある。

現地にいないと感じ取れない空気や匂いがある。

新型コロナウイルス禍が訪れた2020年春以降、私の好きなプロレス界では動画配信の流れが加速していき、現地にいなくてもリアルタイムで試合を見たり、感想を共有できるようになった感覚がより一層強まった。


正直な話「配信があるから、別に無理して現地に行かなくてもいいや」と思うことも増えたけれど、それでも現地に足が赴いてしまうのは、肌感覚で伝わってくるライブならではの雰囲気や興奮の虜になっているからなのかもしれない。

現地に行くことが他者に威張れることだとは私自身全く思わないけれど、一方で、現地ないし映像を自分の目で確認してみないと分からなかった情報は結構ある。

それは例え、ネガティブな事だったとしても…。




先日、高島平区民館で行われたプロレス興行において、区民館の壁を破壊&その様子を関係者が投稿して、SNS上で炎上する事件があった。
(2024.2.23 一橋大学世界プロレスリング同盟)


軽率な行為だったのは間違いないし、そこで生まれる批判も当然だとは思う。

一方、この大会を現地で観戦していた私としては、本件と別の部分でモヤモヤしてしまう部分があり、当該興行が終わった1週間後の今もなお、そのモヤモヤが抜けないままでいる。


この記事で私が書く事は、壁を破壊した人間の擁護ではない。
「壁壊して良いじゃん」と言うつもりも、備品破壊を賛美するつもりも毛頭ない。

ただ、本件を現地で見た上での率直な疑問点や指摘だったり、過去の事象を踏まえた上での自戒・懺悔・反省だったりが、どうしても溢れてしまうのです。
そういう私も、今回炎上した投稿をリツイートした1人ではあるから…。


①現役生以上に軽すぎた、OBのノリと言動

結論から言ってしまうと、「興行に携わっていた学プロOBの中にも、壁破壊に関してノリ軽く考えてた人はいたのにね」というのが、興行を現地で見た私の正直な感想だ。
下手したら、社会人という立ち位置にあるOBの方が、今回写真を投稿しちゃった学生よりもノリやタチは明らかに悪かったなって。

以下は擁護ではなく、記録として…。


私が"異変"に気付いたのは、全5試合行われたうちの第3試合終了後=休憩時間に入った時の事である。

休憩時間中、高島平区民館のステージ上に関係者やOBが集まり、スマートフォンのカメラを向けていた。
カメラの先には、大きな穴が開いて破壊された壁があった。


「えっ?壁を破壊するような動きって、今日の大会であった?」

その様子を見た時の、私の率直な感想である。


私はこの日、正面の最前列に座って試合を観戦していたのだが、最初から最後まで場外乱闘は皆無だった。
まず、場外乱闘に巻き込まれがちな最前列で、場外に出た選手から距離を取るべく離席したり、椅子の位置がバラバラになったりする事象もゼロ。
「選手から退避する客がいなかった」とかではない。本当に退避行動を取らずに試合が見れたのだ。

よくありがちな「選手を壁に叩きつける」といった試合中の動きも皆無だったので「一体どの場面で壊れたのだろう…」という疑問があったし、正直なところ、「前に使っていた団体で開いてしまった穴だったのかな?」と思ってしまった私もいる。
(疑って本当にごめんなさい…)


ただ、休憩明けの第4試合で、この壁破壊が本興行で起きたものだと判明する事になる。
この試合では、HWWAのOBとしてプロレスリングBASARAから参戦していた現役弁護士レスラー・竜剛馬も含め、法曹関係者がタッグマッチに2人も出場したのだが、場内で実況を務めていた団体OBと思われる男性が、弁護士という職業と絡めて試合後にこのような内容を発した。

「試合が終わった後には、事後処理が待っております!」

試合に出場した弁護士2人は破壊の件に一切関わっていないし、何なら本件を一切ネタにもしていない。
全ては場内実況を務めた男性によるワンマンプレーである。


更には、大会終了後の締めで、同じ男性がテンション高く叫んだ内容にも唖然とした。

「次やる時にこの会場は使えないと思いますが(笑)、また別の団体もあるので、どこかでお会いしましょう!」

ここで「(笑)」と付けたのは私の作為ではない。本当に笑いながら場内実況の男性は話していたのだ。


個人的に、私が見た限り壁が破壊されたタイミングなんて分からないし、壁破壊や謝罪コメントがある以上、その経緯は事故でもない限り知らなくていいと思っている。
(試合中の流れで壊していたなら、あの実況だから確実に反応してネタにするんだろうけど、そういうのは無かった。)

でも、その過程で、学プロ団体の周年興行に集まったOBや関係者がやらかして、ふざけている言動とかは、今回投稿して炎上した現役学生以上に拙かったと私は言い切れる。

現役学生のやらかしに対して、その場で直接窘める事の出来たOBや他の関係者は皆無だったと思う。
だって、肝心のOBの方がヘラヘラしていたから。


炎上元は現役学生の投稿だったけれど、壁壊して「事後処理すればいい」と宣って楽観視していた一部のOBが雲隠れしているの、ホントにモヤモヤするなって。
そこがまず一つ。
(流石に、破壊した当人は謝罪投稿してましたが)


②「施設破壊でネタになるか否か」の境界線って何?

今回の件で「施設に迷惑がかかる」、「何てことしてくれたんだ」という批判的な意見の方が圧倒的に多かったし、その流れは当然だと思う。

一方、この件を受けて、学プロとは関係のないプロレスファンの方が指摘した内容に、私はハッとさせられた。

「そういう施設破壊を半ばネタ的に扱っていたのは、大人たちの方だったよね。」


言われてみると、施設破壊でこれだけプロ・アマ問わずプロレス関係者が言及して数日にわたり波及する事案も、2015年頃に私がプロレスファンになってからは初めて見たような気がする。


直近で私が思い出したのは、2023年秋に行われた新日本プロレス名古屋国際会議場大会で、外国人選手が同施設の壁を破壊した事だった。
「これ、今後プロレスに貸して貰えなくなるんじゃ…」と危惧する反応もあれば、「壁破壊しちゃったねw」みたいな反応も正直少なくなかった。
(【名古屋国際会議場 壁】でXをサーチしたら特に)

正直、これに対して新日が公の場で謝罪した事は私の中で無かったと記憶しているし、今回の件のように、引用ないしリプライで「謝罪しましたか?」みたいな反応や御気持ち表明も少なかった気がする。


この他にも、2021年に某稲田堤の道場で試合中に選手が壁を壊してしまった時に道場生が壁を直したり、某団体が北国のツアー中に壁を壊した時も修繕費を集めるべくアクション起こしたりした事もそう。
仮にもし、今回の件で修繕費用のカンパをファンに対して募りだしたなら、確実に大炎上するだろう。


そもそも過去の事例の時に、今回の件以上に他者からの御気持ち表明ないし「会場壊すの良くないよ!」みたいなムーブメントが起こっていてもおかしくないと思うんだけど、「何てことしてくれたんだ」、「借りれなくなるじゃん」という指摘と同じくらい「やっちゃったねw」という笑いや楽観視が普通に起こっていたよね。

いずれも施設の壁破壊という点は共通しているのに、捉えられ方にこれだけ差異が出ているのは、高島平区民館が公共の施設だから?

それとも、自分達の興行開催など運営に関わる範囲内の会場だから?

それとも、好きな団体か否か?別の理由?


新日の名古屋国際会議場にしても、某稲田堤道場にしても、今回の高島平区民館にしても、施設の壁を破壊したという点で完全にアウトだろう。

でも、冷静に考えた時に、「新日や稲田堤のアレは笑ったりネタにしてる人も少なからずいたよね。」、「学プロになると、途端に糾弾とか御気持ち表明が増えるんやね。これって何故?」って反応の違いが如実に見られた。
意地悪だけど、そんな事を考えてしまった私がいる。


何かしらの事故でもない限り、プロでもアマでも備品破壊は同じだし、ネタに出来る道理も通用しない。
これは自戒も含めて…。


まとめ

今回の件で私が感じた・気付かされた点は以下の通りだ。

・例えOBが発端でも、迷惑被るのは現役が活動している団体。
(名前を背負うという事の重み)

・「弁護士が事後処理にあたればよい」とか「多分ウチはもう使えないけど」なんて冗談言ってヘラヘラしていた社会人OB達が、投稿した現役学生以上にマズい。

・過去の事例も含め、会場破壊自体をネタにする風潮そのものがアウトだったのでは?
(今回の件がネタにならなくて、名古屋国際会議場とか稲田堤の壁破壊とかがネタに出来る道理も見当たらない。全部まとめてアウト。)


プロレス会場だと、場外乱闘で東西の看板に人を叩きつけたり(from後楽園ホール)、飲食売店のあるロビーにパイプ椅子並べて自転車で突っ込んだり、団体所有のパイプ椅子ではなく会場のパイプ椅子で相手を殴る光景も見れたりするけれど、実際のところ備品破壊と紙一重だったなって。

私自身、見慣れた光景だから基準緩めに見ていただけであって、破壊に至ったらSNSとかで燃えていただろうし、「プロだったら良いよね!」という基準も道理も無い。
当たり前だけど気付かされたこと。


私自身その可能性が無いと言い切れない人間だからこそ、今回の件で当該学生を糾弾する事なんて私には出来ないし、ただただ反省と自戒だけ。

そして、今回偶然現地観戦していなかったら、「OBも大概ヘラヘラしていた」とか「壁破壊で記念撮影してる関係者や客が多くいた」事実には気づけなかったと思うし、一層「現役生が悪い」って捉え方になったと私は思う。

そういう雰囲気なんて、他者の指摘ではなく、自分自身の五感でないと感じられない部分だったから。


今回の件で気付かされたり反省したりする事は、一観客の私にも沢山ありました…。


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