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太陽活動と人間活動と地球温暖化〜地球寒冷化への警鐘

地球温暖化を示す気温の変化を表すグラフには、1900年以降に急激に温度が跳ね上がるいわゆる「ホッケースティック曲線」を描くものが少なくありません。しかし「クライメートゲート事件」を持ち出すまでもなく、数百年に及ぶ長期的な推移を示す統計は、観測方法の発達や観測機器の近代化、都市化によるヒートアイランド現象といった諸条件の変化を加味すると、必ずしも連続的に正しく地球環境の変化を表しているとは言いきれません。

※ホッケースティック曲線

古気候の研究では太陽活動が衰退した「オールト極小期(1010-1050)」のあとの太陽活動「中世極大期(1100-1250)」(中世温暖期Medieval Warm Periodの一部)のほうが現在(Current Warm Period)よりも暑かったという統計もあります(下図)。約200年続いた温暖期のあと、太陽活動は再びウォルフ極小期(1282-1342)、シュンペラー極小期(1416-1534)、マウンダー極小期(1645-1715)、ダルトン極小期(1798-1823)と極小期が立て続けに起きる衰退期に入り、15世紀以降約400年の寒冷期は「小氷期(Little Ice Age,LIA)」と呼ばれます。このミニ氷河期を脱した19世紀初頭以降、地球は現在の温暖化局面に移行しました。

太陽活動が低下すると太陽系全体を覆う磁力線の力が弱まり、地球に降りそそぐ宇宙線の量が増えます。宇宙線が増えると雲や雨が増え、雨の降りやすい地域と降り方も変化します。偏西風の蛇行や海流の流れにも影響を与え気温は下がります。昨今のゲリラ豪雨や線状降水帯の原因を、単純に地球温暖化(熱帯化)だけに矮小化する表層的な主張もありますが、降雨や気温の変化には太陽活動に伴う宇宙線量の増減という因子が少なからず影響を及ぼします。

武蔵野美術大学の宮原ひろ子准教授の研究チームは、屋久杉の年輪に蓄積された炭素14の分析により、17世紀の「マウンダー極小期(1645-1715)」に地球が寒冷化していたことを裏づけました。そして、宇宙線が増加する太陽活動衰退期には、寒冷化以外にも地殻変動や火山活動が頻発します。1611〜1637年頃に起きた北海道東部の太平洋沿岸の隆起に伴う超巨大地震は「17世紀型地震」と呼ばれ、1707年には富士山大噴火(宝永噴火)があり、1779年には桜島が(安永噴火)、1783年には浅間山が大噴火しました。

ウォルフ極小の寒冷期には「黒死病」が東アジア〜欧州〜北アフリカまで広がり(1346-1353)世界人口(4億人前後)の20〜40%が命を落としたと言われます。マウンダー極小期にはニュートンの「万有引力の法則」発見に繋がる「ロンドン大疫病(1665-66)」や「マルセイユの大ペスト(1720)」が、ダルトン極小期のあとも中国〜インド〜アメリカ西海岸まで広がるペストパンデミック(1855-1960)が起きました。寒冷化で暖炉など火の使用が増えるなか「ロンドン大火」では首都の85%が消失し、以後英国では木造建築が禁止となりました。

17世紀に入るとテムズ川やセーヌ川も凍るほどの厳しい寒冷化で農作物の不作が続き経済は停滞、魔女狩りなど社会不安も増大しました。さらには三十年戦争(1618-1648)、英蘭戦争(1652-54、1665-67、1672-74)、英仏植民地戦争(1689)など戦争も頻発しヨーロッパの人口は激減「17世紀の危機(全般的危機The General Crisis)」と呼ばれます。地球の裏側日本でも、寛永の飢饉(1643)、元和の飢饉(1619)、延宝の飢饉(1675、1680)の3大飢饉は「17世紀の飢饉」と呼ばれ甚大な被害をもたらしました。太陽活動が引き起こす地球寒冷化は、このように中世〜近世の人々を大混乱に陥れたのです。

もう少し短いスパンで太陽活動を捉えると、太陽は「強い太陽活動の期間(黒点増大期)」と「弱い太陽活動の期間(黒点減少期)」が、約 11年周期で交互に繰り返す周期運動をしていることが、太陽表面に現れる黒点の数の観測から分かっています。この観測方法が始まった1755年を「第1太陽活動周期(Solar Cycle1=SC1)」とし、現在は2020年から始まった第25活動周期(SC25)に入っています。

観測が始まった1755年以降で、太陽活動(黒点数のピーク)が最も弱まったのがSC5 (1798-1810年)と
SC6 (1810–1823年)の25年間に及ぶ「ダルトン極小期」でした。ナポレオン戦争(1803-1814)で仏軍のロシアへの侵攻を阻んだ大寒波(「冬将軍」の由来)があったのがこの時期です。1816年のヨーロッパと北米では寒冷化で農作物が壊滅的被害を受け、この年は「夏のない年」と呼ばれました。太陽活動の停滞による地殻変動や火山活動を裏づけるように、1815年に起きたインドネシアのタンボラ山噴火は記録の残る中で人類史上最大の噴火となりました。

近年では2009年の太陽活動の低下(SC23の黒点減少期)で宇宙線量が増えた翌年に世界規模で異常気象が起こりました。2010年2月にワシントンで積雪56㎝という100年ぶりの降雪があり、欧州、モスクワ、モンゴル、シベリア、アルゼンチンなどで平年を大幅に下回る異常低温が観測されました。4月には日本の鹿児島でも100年ぶりの寒さを記録しましたが、寒冷化に伴う夏場のラニーニャ現象(チリ沖の海水温度低下)はエルニーニョの暖水を太平洋西方に押しやり、日本および東南アジアの夏は異常高温に見舞われました。雨の降り方も変わり「パキスタン洪水(2010)」など、中国、カリブ海、オーストラリア東部では豪雨や異常多雨の被害が相次ぎました。太陽活動の低下に伴う地球寒冷化は日本付近など局地的には海水温の上昇や多雨を引き起こすのです。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の観測によれば、2019年までのSC24は過去200年で最も弱い太陽活動周期だったそうです。加えて米航空宇宙局NASAは2032年頃まで続く現在のSC25はさらにそれよりも衰弱し「過去数百年で最も弱くなる」という予測を発表しています。さらに英国ノーザンブリアン大学のヴァレンティナ・ジャルコヴァ教授は、黒点観測ではない最新モデルの観測方法で、SC26では太陽活動が現在の60%も減衰すると予測し、この観測機器の精度は97%と言われています。

これらの予測どおり3期連続で太陽活動が衰退し宇宙線の増加が起これば、地球は「ダルトン極小期」を凌ぎ「17世紀の危機」を誘発した「マウンダー極小期」にも迫る寒冷化に見舞われる恐れがあります。15〜19世紀までのミニ氷河期以降、約200年間(中世温暖期後半の中世極大期とほぼ同期間)続いた現在の温暖期はそろそろ終わり、地球は再び寒冷化サイクルの入口にあるのかもしれません。万が一SC26以降のサイクルでも太陽活動の停滞が続けば、我々は本格的に「17世紀の危機」ならぬ「21世紀の危機」への備えを迫られることになるかもしれません。

現在、世界中の地球温暖化提唱者たちは、気候を変動させる唯一かつ最大の要因を、温室効果ガスの排出という人間活動にあるという大前提で議論を展開しています。2021年8月のIPCCの第6次レポートでも「人間活動による温暖化は疑う余地がない」と報告されています。確かに経済活動に伴うCO2の排出や森林伐採、野生動物の乱獲による生態系の破壊など、人間活動の地球環境への影響は計り知れないものがあります。

しかし、過去150年間の大気中のCO2濃度に関して言えば、およそ300ppmから400ppmに増加してはいますが、ppmとは百万分の一なので実際にはこの150年間で大気中の10000粒の粒子のうち3粒のCO2粒子が4粒に1粒増えたにすぎません。10000粒の粒子の中でCO2粒子が1粒増えたことが残りの一万分の9999の粒子(大気)に影響を及ぼしたと考えるより、小氷期以降の自然な温暖化という一万分の9997の因子が一万分の3のCO2濃度に影響を与えたと考える方が自然な気がします。実際にCO2濃度の変化は気温の変化より800年前後〝遅れて起こる〟という統計もあります。ということは、近年のCO2濃度増加の原因はまさにAD1100-1250頃に現在の温暖期とほぼ同期間続いた「中世温暖期」の影響ということではないのでしょうか。

出典:The European Environment Agency

地球温暖化の危機が叫ばれて久しいなか、冷静かつ謙虚で優れた宇宙気候学者たちは、太陽活動が長期的かつ短期的な気候変動の主因であることを忘れてはいません。地球の気候観測での最新の計測方法に、都市化など局地的な影響を受けやすい地上での観測ではなく、大気圏全体を測定する「気象衛星による観測」があります。元NASAの局員でアラバマ大学の「人工衛星による気温観測」の権威ロイ・スペンサー博士の研究チームは、地上から高度9000mの地球の大気の温度が2021年3月に急激に低下し、それまで上昇していた地球の大気温が過去30年の平均レベルまで下がっていることを観測しました。

ためしに私も気象庁の計測が始まった1875年から2021年までの夏季(7〜9月)3ヶ月の東京の最高気温(赤)と平均気温(青)を、気象庁のホームページからデータを拾ってグラフ化してみました(下図)。するとこの150年間は最高気温も平均気温も「ホッケースティック曲線」のような急勾配を描くことはありませんでした。1875年の最高気温(28.4℃)平均気温(24.1℃)と、2021年の最高気温(29.4℃)平均気温(25.2)の差はいずれも1℃〜1.1℃でした。この150年に及ぶ平坦なグラフからは、都市化による観測条件の変化を無視しても小氷期以降の自然上昇を大幅に超える極端な気温上昇が東京で起きているようには見えません。

(データ:気象庁|過去のデータ検索)

このように測定方法や分析方法の違いにより導き出される観測結果(グラフ)は温暖化一辺倒とは言い切れないのです。温暖化の脅威のみにフォーカスし、闇雲に警鐘を鳴らすだけでは単なる思考停止に陥ります。これまで見てきたように有史以来、太陽がくしゃみをし、地球が身震いすれば人類などひとたまりもなく大混乱に見舞われ、なすすべもなく翻弄されるのです。

我々人類はいつの頃からか大それたことに、この地球という偉大な奇跡の惑星を自分たちの実験室にでも閉じ込めて診断しているような気になっていないでしょうか。あるいはあたかも自分たちの病院の集中治療室に運び込んで重篤患者でも治療しているつもりではないでしょうか。そもそもこの雄大な地球の大きさに比べれば、我々人間などたかだか地球の表面の一部に群がる矮小な生命体の一つに過ぎません。そんな主客転倒した我々が本当にこの地球のことをどこまで分かっていると言うのでしょうか。

人間活動が地球温暖化を誘発したなどという驕った思い上がりも結構ですが、地球の環境を守るためには、太陽系全体の中での宇宙線や磁力線の量、太陽プラズマが地球の放射線帯(ヴァンアレン帯)に及ぼす影響などにも注意が必要です。太陽風や磁気嵐といった太陽系の偏西風や海流の流れが息づくこの宇宙の一員である人類としては、さらにはそれを大規模に包含する天の川銀河や超銀河団を構成するほかの要員たちとも共生しながら、人類だけのものではないこのかけがえのない地球の環境を謙虚に守って行く姿勢が必要なのではないでしょうか。

(漫画)TVでは報道されない地球温暖化(※note管理者註:動画中の海水面上昇の検証は海中の氷山についてのもので大陸の氷床が融解すれば海面は上昇します)

北極と南極の氷の面積の経年変化

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