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”無意識のカテゴライズ”を意識しポジションを取ることがプロジェクトの成功に関わる


先々週くらいまでテレビ東京で放送されていたドラマ「デザイナー渋井直人の休日」にはまっていました。

デザイナーというぼくら建築設計業界にも近い職種がテーマ、原作があの渋谷直角さんで、ぼく自身の青春時代である90年代後半の世界観が織り込まれていてとても面白かったです、、、!

(気になる方はツタヤオンラインに入会すると視聴できるらしいですよ。)

ぼくは、原作の方の漫画も購入して読みました(というはまり用、、、、)。

(レア本になってしまっている、、、。)

原作も勿論面白かったのですが、渋谷直角さんの漫画に特徴的なのが、実在するお店や、人名、商品名が多数存在することです。そのチョイスに90年代を生きた人間は共感を覚えてしまうという構造があります。

その一つとして登場するのが「雲月の小松こんぶ」という食べ物。

ご飯のお供的な商品です。これを漫画内の主人公がおいしそうに食べるシーンが結構な分量をもって描かれているのです。この商品が気になっていたので、先日ちょっと出かけたついでに購入して食べてみました。

食レポ記事ではないので、詳細は省きますが、実際にかなり美味しかったです!(感激するくらい)ご飯に載せて食べると、シンプルで繊細な味わいがあると言うか、、。ともあれ作中の主人公がおいしいと言っているだけの事はあるな、。と思ったのでした。

長々と書いてしまいましたが、今日、書こうと思ったのは、この「小松こんぶ」を食べていて気付いたことをご紹介したいなと思いました。

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その気づきをまず最初に書いてしまうと、”人は無意識のうちに、ある種のカテゴリー内で比較や思考をしている”という事です。

ぼくはこの「小松こんぶ」を美味しいと思って食べていたのですが、その時に頭に浮かんでいたのは、過去に食べた佃煮や昆布系の商品で、それらと比較し、「味が洗練されている」「シンプルな味付けなのに深い味わいがする」「g当たりの価格が高級」ということ。

何回か食べ進める中で、ふと気づいたのですが、ぼくは「小松こんぶ」を、「過去に食べた佃煮や昆布系の商品」とは比較しているけど、その他の美味しい食べ物とは比較していないという事に気が付いたのです。

小松こんぶの美味しさを、例えば、過去に食べたハンバーグの美味しさとは比較していなかった。それはめちゃくちゃ美味しいけども、昆布ですからハンバーグの美味しさと比べれば、ハンバーグに軍配があがるでしょう。
でも、ぼくは当初そのような比較をせず、その美味しさに感動してしまった。

それは何故だろうと考えた時に、人は無意識の内にカテゴライズして物事を考えてしまうという思考の傾向があるのではという仮説ば浮かんだのです。

そう考えて、ぼくが今まで現代社会の中で目にした人気商品を思い出してみると、この人間の思考の傾向を利用してヒットした商品が多数ある事に気が付きました。

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まず思いついたのは「八天堂のクリームパン」。

超有名なクリームパンで、実際に食べたことがあるのですがとても美味しいです。

この商品も「クリームパン」と自身で明言し、そのことによって食べる人の意識をカテゴライズしてしまうことによって、その美味しさを食べた人により強く感じさせているのではないかと思います。

実際に食べたことのある方はわかると思いますが、こちらのクリームパンは、実際食べてみると、シュークリームのようなケーキのような食べ心地という感想なのです。

でも商品名として「クリームパン」と謳うことで、その商品の美味しさの比較対象を、その他のクリームパンに限定する効果を狙っているのではないかと。ぼくはクリームパンというと、学食で買った100円のクリームパンのイメージが想像されます。恐らく皆さんもそうではないでしょうか?

そのような量産品のクリームパンの味覚と比較した場合、八天堂のクリームパンはめちゃくちゃ美味しいと言えます。
しかし、仮にこれをケーキとして販売したとして、生クリームのたっぷりのったショートケーキと比較した場合、クリームパンと比較した場合よりもその美味しさの感じ方は変わってくる
と思うのです。

最近よく聞く、生食パンというカテゴリーもそうではないかと予想しています。

食べたことがないので、想像ですが、これも「食パン」と銘打つことによって、一般的にスーパー等で販売されている食パンのカテゴリーの中に存在する商品を認識させることで、味の比較対象を、食パンにさせることにより、その特殊な味を、食べた人により感じやすくさせているのではないかと思います。

このように、無意識にカテゴリー内で思考するという傾向を利用しているのでは、という商品が世の中には多数あるように思います。

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ここまで書いてきた、人は無意識の内にカテゴライズして物事を考えてしまうという思考の傾向がある、という事を建築の分野で当てはまる事例がないか、次に考えてみます。

ぼくがまず思いついたのは、建築家の谷尻誠さんの多彩な活動です。ぼくは谷尻さんの活動をかなり初期からネットや雑誌等で拝見し続けてきましたが、昨今の様々なビジネスの立ち上げ方には驚かされます。社食堂、絶景不動産、21世紀工務店、tecure、、、。谷尻さんはnoteを始められてから「建築家 / 起業家」とプロフィールに書かれていますが、やはりベースとして「建築家」であることが、その活動の多彩さを際立って周知することにつながっているように思います。

(谷尻さんの場合、これは意図したものではなく、結果的にと言っていいかもしれません。谷尻さんは過去に「建築家」を名乗ることは、建築家という職業の存在を社会に広く知ってもらいたい、と語っていましたので。)

一般的に設計を生業とするという建築家のイメージを越えてプロジェクトを立ち上げる様子は、異彩を放っています。結果的に「建築家」と名乗っていることで、そのカテゴライズが効果的に働き、よりその多彩さが際立っているとも言えるのではないでしょうか。

(前提として谷尻さんの活動が、多彩で興味深いのは言うまでもありません!)

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ここまで社会に存在する、カテゴリーがうまく働いている事例を見てきましたが、ぼくらが活動をする際に、この無意識のカテゴライズを利用して商品を開発したり、自身の活動を効果的に発揮していくことができるのではとも思います。

ポイントは、革新的な商品や活動を、敢えて既存の(よりそのプロダクトの先進性が伝えられる)フォーマットに載せていくという事でしょうか。革新的なものを、既存のカテゴリーに属させることで逆に、その革新性が際立って伝わっていくという事が起こります。

iPhoneについて、堀江さんが「電話だと言ったことが重要」と語ったことについて記事を書きましたが、これも同じですよね。電話の中にカテゴライズすることで、その革新性をより効果的に伝えることができたわけです。電話もできるミニPCとして、PCにカテゴライズしてしまったら、発売当初の驚きはなかったかもしれません。

ここで言うカテゴリーは大量生産品でしたら、目に見えやすく存在しているのでより扱いやすいと言えるかもしれません。ただ、ぼくらの建築業界では、そのカテゴリーは明確に分かれていません。設計事務所、組織設計、工務店、ハウスメーカー、ビルダー、その垣根は連続的で曖昧です。

ただ、現状を分析していき、そこからカテゴリーを見つけ出すことが出来たら、次に自身の活動を、どのカテゴリーに存在させるかという事を考えてみてください。そうすれば、同じ活動であったとしても、先に挙げた事例のように、より効果的に発信・周知することができるはずです。

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最後の結論が曖昧な感じになってしまいましたが、この先は皆さんが発展させるべき部分ですので、この視点が何らかのヒントになればと思います。

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