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クリエーターは自身の制作プロセスを言語化・方法論化することで、自身をブランド化できる。—――創作とビジネスを両立させるための指南書『ブランディングデザインの教科書』

尊敬する大先輩、エイトブランディングデザイン西澤さんの新著『ブランディングデザインの教科書』を年末年始に読了。
素晴らしい書籍だった、、!

平易な文章の導入から、専門的な用語が徐々に増え、ブランディングという仕事の様々なフェーズを追体験できる内容で、非常に学びが多い。特にクライアントとの協働関係を明確に言語化し、その重要さを説く部分が面白い。

建築とかデザインって、全て施主との協働だと思うのだけど、やはり作品としての側面もあるから、その施主の存在は隠れがち。でもブランディングも建築もその施主との共同関係が上手くいかないと、出来あがる成果物も良いものにならないのは皆が経験するところ、それを明確に言語化し、方法論として語るのは画期的だし、特に若いデザイナーや学生の皆さんには深く突き刺さるのではないだろうか。

そんな感じで、ブランディングデザインの手法を学ぶという意味でもこの書籍は非常に分かりやすく名著であるのは間違いない。

だけど、僕らのような設計や編集に関わる人たちは、この書籍をメタ的に捉えることで、更なる大きな学びを得られると思った。

つまり、西澤さんが、ブランディングデザインを説明する際に、実践する際に、採用している自身が考案したシステム「フォーカスRPCD®」や「ブランディングデザインの3階層®」のようなものを建築家や編集者も、自身の活動に合わせて作るべきではないのか?

西澤さんは、ブランディングデザインの自身の方法論を丁寧に言語化すると共に、名前を付けシステム化することで、自身のブランディングデザイン自体をブランディングしているのである。この方法論によって、西澤さんの思想や行為が、非常に魅力的で説得力のあるものになっている。

建築設計の現場では、超ざっくり書くと、リサーチ→基本設計→実施設計→現場監理というような流れは、皆共通しているけど、実際にそれぞれの設計者に話を聞いてみると、皆独自に行っているサービスがあるのがよく分かる。

でも、それらは方法論化、言語化、システム化されていないのである。それらを客観視してみる。名前を付けてみる。対外的に周知してみる。こうすることで、出来上がったものだけでなく、設計のプロセスやサービス自体にも固有性を与えることができ、西澤さんの言う「ブランディング=差別化」ができるのだと、この本は暗に教えてくれているのだと思う。

建築分野だと、藤村龍至さんの「超線形設計プロセス」が、設計プロセスを方法論化した事例として思い出されるけど、異なるフェーズでも方法論化はできるはずだし、異なる方法論が出てきてもいいはずなのだ。

そして、ぼくの建築設計実務経験を振り返ると、建築設計事務所に頼むことの良さは、クオリティの高い設計や、信頼できる監理だけでなく、設計打ち合わせのプロセスの楽しさにあるのだと思っている。メーカーが、数回の打ち合わせで、全てを決めてしまうのと対照的に、設計事務所では、それぞれの事務所ごとに多彩で楽しい打ち合わせが日々行われている(事務所によってはそれは魅力的なドローイングかもしれないし、巨大なスケールの作りこまれた模型かもしれない)。

でも、それらに名前がついていないので、そのサービスを受ける施主は当たり前だとおもっちゃっている。それは当たり前ではない、それぞれの建築家が経験から生み出した独自の方法論なのである。だから、僕たちは、西澤さんに習い、それらに名前を付け、方法論化し、それらもブランディングしていこう

その先には、建築設計事務所がより認知される世界が開けていくはずではないだろうか。

これはぼく自身にも言えることで、アーキテクチャーフォトに掲載させてもらっている、建築作品をどのような方法論で、思考で編集しているのかは、今まで言語化していなかった。

これを言語化・方法論化することで、アーキテクチャーフォトというメディアが、漫然と作品を掲載することを続けているのではなく、作品と向き合い、その可能性を最大限に引き出し、世に送り出すという編集プロセスを、もっと世の中に認知させることができるのではないか、と強く思った。これに気づかせてもらったというだけでも、本書籍には感謝してもしきれない。

僕にとっては、この部分が琴線に触れたけれど、恐らくそれぞれの立場の人たちによって、感じるところは違うはずだ。

是非手に取って欲しいと思います。おススメ!


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