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スポーツチームにとって、“社会課題解決の取り組みはビジネス”である

スポーツ庁では、スポーツの成長産業化の施策の一つとして、地域のプロスポーツチームと企業、大学等が連携して取り組むまちづくりや高付加価値サービスの創出を促す「地域版SOIP」の構築を促進しています。
スポーツを通して地域課題を解決することは今非常にHOTな取り組みであり、スポーツの価値高度化に直結する重要なアクションだと言えます。また、これら社会課題解決と言われる領域はスポーツチームにとって一つのビジネスとして確立されつつあります。

社会課題の解決はCSRではなくビジネス

2023年度の地域版SOIPで見事最優秀賞に輝いたBリーグ・秋田ノーザンハピネッツは、米どころ秋田県が抱える米のロス問題に着目し、お米を活用した伝統食品「きりたんぽ」から米の新市場を創出することを考えました。現在は商品開発を検証している段階で、将来的には県外への販売も視野に入れているそうです。

同じく東北地方のJリーグ・モンテディオ山形は、60歳以上の健常シニアがイキイキ過ごし社会で活躍する場をつくることを目的にコミュニティを考案しました。高齢化率が進む山形県ですが、この高齢化を機会と捉え高齢者が健康な状態で長生きをし(医療費・介護費の削減)、さらには地域や若者に還元できるシステムをつくるというのが狙いになっています。すでに、対象ターゲット向けの有償サービスをスタートさせ順調に会員を獲得できており、この活動に共感した自治体は自治体単位での実施にも予算をつけて前向きに検討されているそうです。このモデルが確立されると、山形だけではなく、他県への展開も可能になります。

提供:モンテディオ山形 「モンテディオ山形の新ビジネスのターゲットは健常シニア25万人」

両チームに共通して言えることですが、この課題を解決する先に明確な収益プランを計画しています。スポーツチームの収益になるためという考えもありますが、地域課題の解決は、収益を上げ、人を雇用できる状態にならなければ本当の意味で解決とは言えないと思います。

なぜ、スポーツチームが取り組むことに価値や可能性があるのか?

スポーツチームが社会課題に取り組む理由、アセットに関して非常にわかりやすく説明しているチームがあります。Fリーグに所属する「湘南ベルマーレフットサルクラブ」です。湘南ベルマーレフットサルクラブは、「社会課題解決を行うプロスポーツチーム」としての知的財産を活用して、社会課題解決事業を展開するスタートアップ企業と自らを再定義しました。言葉の通り、これまでにチーム主導で社会課題を解決するプロジェクトを25個も立ち上げています。
彼らはスポーツチームのアセットを下記の図のように説明しています。

提供:湘南ベルマーレフットサルクラブ 「クラブの持つアセット」

「スポーツチームはハブになる」という表現をよくされますが、それを丁寧に説明しているのがこのアセット(=知的財産)です。例えば「行政」との関係性です。湘南ベルマーレフットサルクラブは、行政との包括連携協定を結んでいるため、行政と非常に濃い関係性にあります。当然地域には様々な課題があり、その解決に必要な予算も割り当てらていますが、その多くは地元経済の循環で完結するケースが多くなっています。チームにとって、外貨(県外の企業からお金をもらう)稼ぎはスポンサー収益を上げる上でも重要になりますが、企業が地域チームと組むにはそれ相応の理由が必要になってきます。そこで、湘南ベルマーレフットサルクラブは行政との包括連携協定を強みに、チームが間に入ることで県外企業と組む理由付けを成立させています。そのアウトプットの一例が行政を絡めたPoC検証です。企業にとっても行政・自治体との検証ができることは様々な観点で利点があり、これがまさに知的財産を販売するというスポーツチームだからこそできるアプローチになっているのだと思います。

この流れを加速させるために重要なことは?

この取り組みを加速させるためには、スポーツチーム側のマインドを変える必要もあります。地域課題をビジネスに変える考え方は将来的には非常に可能性を秘めていますが、収益化までは手間も時間もかかってしまいます。従来の収益モデルの柱である広告収入と比較すると短期目線では効率が悪いため、リソースの掛け方、プライオリティの判断が難しいのも事実です。
一方で、先をみて取り組みをしなければどこかで頭打ちがきます。一般的な広告価値の換算でいえば、リーチ数で広告単価は決まります。人口減少の地域において、広告依存はどこかで限界がきてしまうのです。
幸いなことに少しずつ風向きは変わってきています。
弊社が運営するSports for Socialでは多くのスポーツチームの社会活動を取り上げてきました。その中で、数年前と比べるとホームタウン活動のプライオリティが高まってきたり、それをビジネスに変えようと動いてるチームは格段に増えてきたと感じています。
周囲に理解をしてもらい、チーム内でのプライオリティを高めるために大事なのは、収益への意識です。社会活動解決やホームタウン活動は、チケットや集客にも大きく寄与しますし、前述の通りスポンサー獲得のバリエーション増加にも繋がります。
スポーツでの理解が広まり、社会課題解決の取り組みがビジネスになっていくケースを期待しています。

U-30ホームタウンサロン

このような背景もあって、地域課題やチームが拠点を置くホームタウンを巻き込んだ活動は非常に重要だと考えています。
そこで弊社が昨年からスタートさせたのが「U-30ホームタウンサロン」という、まさに地域や社会課題×スポーツチームを題材にした実践型の講座です。インプット講座では、ご紹介をしたノーザンハピネッツ秋田、モンテディオ山形、湘南ベルマーレフットサルクラブ、静岡ブルーレヴズ(ラグビーリーグワン)、他2名の運営会社社長が講師として登壇をしてくれます。事業構想や今後のビジョンなどの話はもちろん、参加者のキャリアに影響する話など、ここでしか聞けないテーマになっています。
自分自身も広告業界からスポーツ業界へと身を移した経験があるので分かるのですが、外からみた課題や理想と中に入った時に感じるそれらは異なります。「もっとこうすれば良いのにな」と思っていたことも、「わかってるけどできない」「わかっている上で実はやらない方が良い」など、中に入ることで見えてくることがたくさんありました。
正しい表現かは分かりませんが、この“現場力”というのは大事だと思っています。現役社長として最前線を走っているからこそ生きた、生の話を聞くことができ、ご本人が考える今本当に求められるスキルやスポーツ業界の課題を把握できます。
事前説明も開催しているので、気になる方は申し込んでみてください。
https://peatix.com/group/9511418

第2期生募集は4月30日まで


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