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アクティブファンドは「ホスピタリティ業」だと思う。

ホスピタリティ、意味 で検索すると最初に表示されたページにこんな説明を見つけました。

ホスピタリティとサービスは、実は似て非なるもの。
サービスの語源はラテン語の「servus」。これは「奴隷」という意味です。奴隷には当然、主人がいて、主人と奴隷との間には主従関係があります。お客様(=主人)が求めることを的確に遂行すること、きちんと業務をこなすことを「サービス」と呼ぶのです。

一方でホスピタリティでは、お客様との関係は対等です。命令されてないけれど、お客様が何を求めているのか、どんなことをしてあげたらお客様が喜ぶのかを考えながら、手厚くもてなすことです。マニュアルに書いてあることをこなすだけでは、ホスピタリティとはいえないことが分かります。

「マニュアルに書いてあるから」「ノルマがあるから」ではなく、「こうしてあげたら相手は喜ぶだろうな」と考えて行動することがホスピタリティなのです。

https://mainichi.jp/articles/20151226/mul/00m/100/00600sc

さらに、こんなページもありました。

主人と客人の間でホスピタリティが行き交うが、それは一方通行のものではなく、主人が客人のために行なう行動に対して、それを受ける客人も感謝の気持ちを持ち、客人が喜びを感じていることが主人に伝わることで、共に喜びを共有するという関係が成立することが必要だ。すなわち、ホスピタリティは両者の間に「相互満足」があってこそ成立する。

つまり、主客の両方がお互いに満足し、それによって信頼関係を強め、共に価値を高めていく「共創」がホスピタリティにおける重要なキーワードなのである。

投資信託と絡めて考えます。

投資信託で所期の成果を得るには、通常、相応の時間が掛かります。最近の株高もあってか、短期で入れては出ていくそうした投資家も増えているようですが。藤野英人さんがこんなことを述べられていました。

これは僕らがお客さまに対して長く持つことの大切さや、リターンという果実をしっかりとっていくということをまだまだ伝えきれていないなと反省します。リターンという面では、結果ではちゃんと出しているんですけど……それだけだとなかなか長く持つことの大切さをご理解いただけない人もいるので。長く投資し続ける大切さを、これからも伝えていく必要があると思います。

こうしたコメントを読んで感じたのは、

投資信託、とりわけ、お金を託す「人」とお金を託される「人」との関係が成果を生み出すのに大きく影響するアクティブファンドにこそ、「ホスピタリティ」って大事じゃないの?

ってことです。

アクティブファンドを運営する投信会社から、「ホスピタリティ」を感じる事例を挙げてみたいと思います(個人の感想です)。

鎌倉投信

年に一度、鎌倉投信さんで催されるイベント。受益者総会。

2010年の第1回のことを思い出します。m@さんの当時のブログ記事です。

ファンドが設定されて最初のイベントで、リッツ・カールトン日本代表を務められた高野さんがご登壇されていたことから、鎌倉投信さんの根っこには「ホスピタリティ」の意識があったのだろう、と感じられます。

既に定員に達したそうですが、3月にはこんなイベントがあります。

鎌倉投信さんを通じて、縁を持った投資先。こうした投資先のことをより深く、投資家(ファンドの受益者)に理解してもらおう、という試みです。こうした試みを鎌倉投信さんでは何度も取り組まれています。

昨年9月には、投資先の ツムラさん。加藤社長を招いてのオンラインイベントもありました。

僕が「ホスピタリティ」を強く感じたのは、実はこの書き起こしです。

次の記事もオンラインイベントでの鎌田社長の講演の要旨の書き起こしです。

コロナ禍以降、オンラインのイベントが増えました。またその模様を動画アーカイブで閲覧可能にしているケースも増えました。でも、そこで何が語られたか、要旨が分からない動画を30分、1時間近く視聴することって、正直難しいと思うんです。時間は有限ですからね。

そんな時に、要旨がテキストで書き起こしてあったら、ポイントになるスライドが確認できたら、内容を掴むこことができます。そんな内容が話されているならちょっと視聴してみようか、ということになると思うのです。

こうした気遣いこそが「ホスピタリティ」だと僕は思います。

投信会社がファンドの投資家・受益者のために「一体、何を為したのか」それを伝えようとする、より正しく伝わるように工夫を凝らす、これが投信会社の「ホスピタリティ」で最も大切なことではないでしょうか。

それが”お互いに満足し、それによって信頼関係を強め、共に価値を高めていく”ことになり、アクティブファンドを保有することでの所期の成果の実現に近づくのだと思います。

投資家に伝えよう、伝えたい! その強い意思を感じる1社が、農林中金バリューインベストメンツさんです。

農林中金バリューインベストメンツ

運営されているファンドの月次レポートの内容は非常に濃厚です。

このレポートで紹介されているのは、この時点では投資するか否かを調査中の会社です。こうした調査を通じて、分析を重ね、この会社は長期で価値をつくり続けることのできる「売らなくてもいい会社」なのかどうかを検討する、そのプロセスの一部が示されています。

これこそが、投信会社が「投資家・受益者の為に、何を為したか」という行動そのものだと思います。それを伝える、正しく伝わって欲しいという姿勢を感じます。

たくさんの投資信託の月次レポートを見ていますが、その多くは、今月の市況がどうだったか、またパフォーマンスへの影響が大きかった投資先等の説明のみで終わっています。投資先の紹介をしているものも最近増えつつありますが、その投信会社の視点が無いものも多く、仮にあった場合も一行程度のコメントが添えられていることがほとんどです。

noteでCIO・奥野さんの講演の書き起こしが多数、発信されています。内容が重複していると思われるかもしれません。でも、重複している箇所が沢山あること、結構、大事です。なぜなら、その講演ごとに強調されている内容が違っていたら、それはそれで大変な問題です、「ブレとるやないか?!」って。

Q&A のセッションも入っているのが良いですね。

関連してご紹介しますが、↓の本の永守さんの講演録はメチャクチャ面白いですよ。

第8章には奥野さんの「長期投資の意義と実践」もありますし、京都を代表する会社の経営者の皆さんの講演録はとても読み応えがあります。

この本のシリーズから、「株式投資って、こうなんだぞ」と伝えたい、伝えようとするホスピタリティを感じます。


ここ最近、月次でのレポートの質、量をじわじわと充実させてきているぞ、って感じる投資会社があります、スパークス・アセット・マネジメントさんです。

スパークス・アセット・マネジメント

スパークスさんが運営されている、あるファンドの2016年6月末の月次レポートです。

最新の月次レポートです。

見違えませんか?

以前から高い質のレポートを発信されているファンドもありました。

ここに来て、スパークスさんの他のファンドにも広がりが出て来ました。さらに、noteも始められました。

スパークスさんの「ホスピタリティ」、さらなる進化を期待したいですね。


投資先への理解を深めてもらおう、という意思という面では、コモンズ投信さんにも「ホスピタリティ」を感じます。

コモンズ投信

投資先の会社との対話の模様を自社のWebサイトで発信されていますね。

投資先の会社への理解を深めてもらいたい、その意思は「ホスピタリティ」だと感じます。

情報発信といえば、レオス・キャピタルワークスさんも忘れてはいけませんね。

レオス・キャピタルワークス

雨の日も風の日も、↑は雨の日?、毎日基準価額をツイートされています。僕の知る限り、これを続けられているのはレオスさんだけでは?

日々の変動に一喜一憂しても仕方ない、そう僕も思うのですが、ずっと続けられていると、毎日「そろそろ更新されるかな」って日課のようになります。小さなことかもしれないけれど、休まず続けることの大切さを伝えていたりするのかな、と思ったり。

ひふみ投信の月次レポート。情報量は豊富なんですけど、「市況」「株価」に偏っているかな、と感じます。もう少し、投資先、投資先の調査、分析についてもカバーされていると良いかなあ、と感じます。

このシリーズは非常に素晴らしいと思います。月次レポートからの導線があったら良いのに、と感じました。

このシリーズに絡めてスピンオフのライブセミナーも実施されていますが、「書き起こし」があると嬉しいなあ、と妄想しています。

アクティブファンドは「ホスピタリティ業」?

インデックスファンド、設定されたベンチマークにどれだけ近いポートフォリオをつくれるか、ということが一番に問われるわけで、最初の「サービス」と「ホスピタリティ」との違いで言えば、「サービス」に圧倒的に近いと僕は思います。

一方のアクティブファンド、こちらが一番に問われるのはベンチマークや参考指数よりも良い成果を届けられるようなポートフォリオをつくれるか、或いは、予め約束している投資基準に則って投資行動を行っているか、です。アクティブファンドの場合、投資の成果に投資家・受益者の行動が少なくない影響を及ぼします。そうしたことを考えると「サービス」というより「ホスピタリティ」になると感じます。

ホスピタリティ

ちょっと表現がアレですが、「サービス」は提供する側、される側、ある意味「主従」。ですから「コスト」「コスト」「コスト」と連呼されるのも分かる気がします。

一方で「ホスピタリティ」の根っこに「共創」があるのであれば、そこにあるのは対等の関係です。お互い持ちつ持たれつ、です。パートナーにお願いする対価を「コスト」って呼ぶのは、何かね、って思います。「フィー」と呼ぶべきだろう、ってあらためて思いました。

こんなことも思うのです。

パフォーマンスで集まったお金は、パフォーマンスで離れる。

ある期間に際立った成績を残したファンドにお金が集まる様を見てきました、何度も。そして、そのファンドからお金が離れていく様も。

パフォーマンスは市場全体に左右される面が多々あります。ですから、非常に不安定です。自分たちではどうにもできないことの方が多いことでしょう。

ホスピタリティで集まったお金は、ホスピタリティで離れる。

ホスピタリティも同じ面はあると思います。

しかし、ホスピタリティは、磨き続けることができる、日々課題を発見し、改善に努めることも可能ではないか、って思います。

ホスピタリティを阻害しているもの。それはファンドの多さだと思います。銀行や証券の系列の投信会社のアクティブファンドを見ていると、ほぼ同じ運用方針なのに、マザーファンドが一緒なのに、複数のファンドが設定されている事例を沢山、目にします。これでは流石に「ホスピタリティ」を意識することは無理だと思います。ファンドの併合、アクティブファンドでも真面目に取り組むべきだと思います。それが「ホスピタリティ」を意識していることを示すことになるはずです。

上述の「ホスピタリティ」を感じる投資会社の幾つかについては、それが磨かれているのかをチェックする意味で、毎月の月次レポートを定点観測しています。


アクティブファンド選びは、パフォーマンスよりもホスピタリティ?

それは流石に言い過ぎだと思います。でも、「投資家、受益者の為に自分たちが何を為したのか」それを丁寧に伝えようとする、正しく伝わるよう工夫を凝らす、そんなホスピタリティの無い投信会社は徐々に淘汰される未来がやって来る・・・かもしれません。

投資信託事情、最新号にも寄稿しています

パフォーマンスよりもホスピタリティ?

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